しかし、精神は自ら生み出すものではなく、関わり合いから生まれるものであるように、私は強い人間関係の創造が、強い精神を作るのだと考える。 （67字）

　

　いつの時代においても社会は他人との関わりを中心として成り立っていて、社会に生きる上で人間関係は必要不可欠なものだ。私たちの精神も人と関わりながら形成されていく。例えば、性格の決定には先天的な要因が50%、環境的な要因が50%影響すると言われている。偶然、オオカミに育てられた子供が話題になったことがあったが、人間とは全く違う精神状態だったそうだ。つまり、人間は他人との関係によって形成され、他人との関係によって変わっていくのである。これを踏まえると、今のように人間関係が構築できず問題が発生している社会は直していくべきだ。
　その原因は第一に、違う考えの人と関わる機会が減ってしまったことだ。核家族化や少子化により、家族や地域内でのコミュニティが衰退した。これはインターネット上でのコミュニケーションを促し、結果的に同じ思想や同じ趣味を持っている人としか話さない環境が作られている。私の周りの友達も、インスタグラムやツイッターなどを利用し気の合う集団を作って会話を楽しんでいる。ソーシャルメディアは国籍から何まで違う人との会話をするものだと思っていたが、これでは単なるチャットツールとしてしか機能していない。そればかりか、自分のアカウントには友達以外入れないようにして、できるだけ視野を狭くしようとしているように見える。真の人間関係とは、他人との違いを認識し自分を変えていくことではないだろうか。私は、ネットで「それな」を連発するのはやめ、face to faceで十人十色の集団の中に身を置くべきだと考える。
　第二の原因は、文明が高度になり機械化が進んだことだ。企業は人件費を削ろうと、随所に機械を取り入れているが、これは便利である反面、人間味がなくなるというデメリットも併せ持っている。昔は何かを買いたいとき、嫌でもある程度の会話をしなければならなかった。常連として顔が覚えられれば、世間話をすることもあったという。買い物だけでも、小さな人間関係が成立していたということだ。しかし、だんだんと会話は形式的なものになって遂にはネットショッピングが登場した。家にいても商品が手に入る魅力は捨てがたく、多くの人が利用するようになった。さらに、コンビニやスーパーでは無人化が進められていて、AIがレジを担当する日も遠くないと言われている。実際、いくつかの企業はすでに実験を終えて導入段階に入っている。このように、機械の発達は人間同士の物理的な距離をどんどん遠ざけてしまっているのだ。
　確かに、上辺だけの人間関係を手に入れるのは簡単だし、維持するのも楽だ。しかし、精神は自ら生み出すものではなく、関わり合いから生まれるものであるように、私は強い人間関係の創造が、強い精神を作るのだと考える。