このやり方で、だれでも簡単に900字暗唱ができる。

暗唱の手引

2010年4月28日改訂



言葉の森の体験学習中の人は、体験学習が終わってから、暗唱の仕方を説明します。




 この「暗唱の手引」に沿って、暗唱の自習の仕方を担当の先生より説明をしていきます。以下、その説明の日程です。(便宜上、「暗唱の手引」の説明を始める最初の週を第1週としますが、これは課題の1週目ということではありません)

●第1週(先生が「暗唱の手引」の説明を始める最初の週)
・体験学習が終わって入会したあと、第1週に「暗唱の手引」の説明が始まることを先生がお知らせします。
(ただし、生徒の勉強の状況によって、しばらくしてから説明を始める場合もあります)
・「課題フォルダ」の最後の方に、「暗唱用長文」が3ページ印刷されています。
・保護者と小学5年生以上の生徒のみなさんは、次の週までにできるだけ「暗唱の手引」の中身に目を通しておいてください。
・第1週は、「暗唱の手引」の中身に目を通しておく週になります。

●第2週
・第2週に担当の先生が暗唱の仕方について説明をします。
・次の第3週までに、3ヶ月分ある暗唱用長文のうち、その月の暗唱用長文の「1・2・3」の文章を暗唱しておいてください。
・暗唱の仕方は、1日目に「1」を30回音読、2日目に「2」を30回音読、3日目に「3」を30回音読、4567日目は「1・2・3」を通して10回音読するというやり方です。
(受験コースの生徒のみなさんは、時間がとれないことが多いので、暗唱の学習は行わなくて結構です)
(幼長までの生徒のみなさんは、文章を読むことが難しい場合が多いので、暗唱の自習は行わなくて結構です)
(そのほか暗唱の時間がとれない方は、課題の準備をしておくだけで結構です)

●第3週
・第3週に暗唱用長文の「1・2・3」の暗唱チェックをします。
・次の第4週までに暗唱用長文の「4・5・6」を暗唱しておいてください。

●第4週
・第4週に暗唱用長文の「4・5・6」の暗唱チェックをします。
・次の第5週までに暗唱用長文の「7・8・9」を暗唱しておいてください。

●第5週
・第5週に暗唱用長文の「7・8・9」の暗唱チェックをします。
・次の第6週までに暗唱用長文の「1〜9」を暗唱しておいてください。
・暗唱の仕方は、毎日「1〜9」を4回音読するというやり方です。

●第6週
・第6週に暗唱用長文の「1〜9」の暗唱チェックをします(0以降の文章は暗唱しません)
・900字の暗唱は、2分程度で全文を言えるようにするのが目安です。
・900字の暗唱チェックは、週によって先生の時間がとれない場合があるので、そのときは先生が穴埋め問題を出します。

※暗唱の仕方に関するご質問は、「父母の広場」への投稿、又は事務局へのお電話でお願いします。
○父母の広場 http://www.mori7.net/nohara/hubo/
○言葉の森事務局 電話0120-22-3987(平日9:00-20:00)



●Online作文教室 言葉の森

234-0054横浜市港南区港南台4−3−1

 
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暗唱あんしょう意義いぎ


子「どうして、暗唱あんしょうするの」
母「あーん、しょれはね」
^_^「……」

自分じぶん音読おんどくしたこえみみに入ると、

のうが、「これはのどと耳の両方りょうほうから来ているから大事だいじ言葉ことばだ」と思う。

だから自分の言っていないことは、右から左にけることも多い。
母「勉強べんきょうしてるの?」

同じ言葉をくりかえしていると、言葉がイメージとなって脳の金庫きんこ保管ほかんされる。

しかも、イメージは、いくらつめこんでも大丈夫だいじょうぶ
「パクパク」

母「そして、のう丈夫じょうぶになるのよ」
子「そうなのう」

●暗唱のコツ

 暗唱のコツは、ただ回数をくりかえして音読することだけです。
 低学年の人は、時間がかかってもかまいません。気長に読んでいきましょう。
 慣れてきたら、できるだけ早口で滑らかに音読した方が早く暗唱できるようになります。
 暗唱をする時間を、朝ご飯前の10分間などと毎日ほぼ確実にできる時間帯に決めておきましょう。
 暗唱は覚えることが目的ではありません。文章を自分の体の一部となるようにすることが目的です。歌を歌う練習をするつもりで暗唱していきましょう。

●毎日の自習計画

 短い時間の勉強を毎日するためには、1日の生活時間の中にその勉強時間をあらかじめ組み込んでおくことが必要です。
 曜日別に、自分の自習の時間帯を書き入れておきましょう。
日祝











記入例
6:00―――
     自習
6:10―――
      

●暗唱用の長文は

 課題フォルダの最後の方に、それぞれの月ごとの暗唱用長文が載っています。
 
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■ 暗唱すると


●1、頭がよくなる

 思考力の骨組みとなる語彙や考え方が自分のものになるからです。

●2、作文がうまくなる

 語彙や文のリズム感などの表現力が自分のものになるからです。

●3、勉強ができるようになる

 複雑な物を覚えることが苦にならなくなるからです。

■ 暗唱の成果はどんなところに


●江戸時代の寺子屋教育の基本は暗唱

 寺子屋教育の基本は、百字の文章を百回読むことでした。この勉強法によって日本は当時世界一の識字率を達成していました。
(江戸時代の日本の識字率70〜80%、同時代のヨーロッパの先進国の識字率20〜30%)

●ノーベル賞の湯川秀樹も小1から暗唱

 湯川秀樹と3人の兄弟は、それぞれ5、6歳から四書五経の素読をさせられました。そして、全員が学者になりました。
 そのときの勉強法は、論語を漢字のまま意味もわからないまま音読し暗唱するという方法でした。
(芳樹(兄、冶金学者、東大教授)、茂樹(兄、歴史学者、京大教授)、環樹(弟、中国文学者、京大名誉教授))
 しかし、湯川秀樹は後年、素読は役に立ったが、読めないし意味も分からない文章を読むのは苦痛だったと述べています。

●暗唱を生かした著名人

 暗唱を自分の実際の勉強に生かした著名人には次のような人がいます。

□貝原益軒(1630-1714)……81歳のときに著した「和俗童子訓」で四書五経を毎日百字百回暗唱するという勉強法を提唱しました。益軒の影響は日本全国々に及び、江戸時代の日本の教育の大きな方向を決定しました。暗唱は子供だけでなく、大人にとっても価値があると述べています。

□塙保己一(1746-1821)……盲目でありながら当時日本全国に散らばっていた600冊以上の学術書を編纂するという偉業を成し遂げました。その伝記は、ヘレン・ケラーにも大きな影響を与えました。18歳のとき般若心経を毎日100回1000日間暗唱するという誓いを立て実行しました。また、晩年まで折に触れて暗唱をしていました。

□シュリーマン(1822-1890)……独学で十ヶ国語以上をマスターしトロイアの都を発掘しました。そのときの勉強法が、外国語を辞書にも文法書にも頼らず大声で音読し暗唱するという方法でした。生まれつき弱かった記憶力が、この勉強法で改善したと述べています。

□本多静六(1866-1952)……林学博士。暗唱の勉強法で東京農林学校(今の東大農学部)を首席で卒業しミュンヘン大学経済学博士号を取得しました。大学1年生のとき数学で赤点を取りましたが、一念発起し数学も丸ごと暗唱するという方法で学年トップになりました。子供時代、家の仕事を手伝いながら文章を暗唱するという勉強法をしていました。大学には作文の点数がよくて合格できたと述べています。

□野口悠紀雄(1940-)……経済学者。自身の中学高校時代の経験から英語の勉強法として音読暗唱を提唱しています。高校時代、英語は教科書をただ音読するだけで好成績を維持し東大工学部に合格しました。しかし、そのように単純な方法なのに実践する人が少ないと述べています。

 
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■ 暗唱の例
●長文の見本



●1週目の読み方

 文の出だしにという番号がふってあります。
 1週間7日間、長文の暗唱をする場合、が1日目の100字、が2日めの100字、が3日目の100字です。
 そして、4日目、5日目、6日目、7日目は、の300字を通して暗唱します。

●2週目、3週目、4週目の読み方

 同じようにして、2週目は、を暗唱します。3週目は、を暗唱します。
 そして、4週目は、の900字を通して暗唱します。から先は暗唱しません。

●まず1週目の1日目

 の100字を30回音読します。

 
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●30回用の暗唱用紙の使い方

 暗唱用紙を使うと、30回の音読がやりやすくなります。
 暗唱用紙にかいてある絵に、意味はありません。


 1日目の30回の音読には、1日目のところを切り取って使います。
 谷折りのところで縦に二つに折り、そのあと山折りのところから折りたたんでいきます。
 100字の暗唱用は、長い方の紙を縦に谷折に二つに折る。そのあと上から山折りに折る。
 1センチぐらいに折っていく。
 15回ぐらいで全部折りたためる。
 100字を1回読むたびに1回ずつ開いていく。
 全部開いたら15回読んだことになる。これで約5分。
 続けて読みながら、今度は折りたたんでいく。
 全部折りたたんだら、30回読んだことになる。これで約10分。これを大枝と呼ぶ。
 3日間3本の大枝をY字型に組み合わせて暗唱の木を作る。
 
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●1週目の2日目、3日目

 2日目にはの長文を同じように30回音読します。3日目にはの長文を同じように30回音読します。
 

●1週目の4日目

 4日目には、の300字を通して10回暗唱します。


●10回用の暗唱用紙の使い方

 300字を読むときには、10回用の暗唱用紙を使います。
 4日目からは、300字暗唱用の小さい方の紙を折る。
 1センチぐらいに折っていく。
 5回ぐらいで全部折りたためる。
 300字を1回読むたびに1回ずつ開いていく。
 全部開いたら5回読んだことになる。これで約5分。
 続けて読みながら、今度は折りたたんでいく。
 全部折りたたんだら、300字を10回読んだことになる。これで約10分。これを小枝と呼ぶ。
 4日間4本の小枝を、大枝の先にY字型にさす。
 1週間で暗唱の木が1本できる。
 
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●イメージ記憶 300字がすらすら言えるようになったらイメージ記憶の練習

 300字がすらすら言えるようになったら、文の出だしをイメージ化して覚えます。
 そうすると、900字の長い文章を暗唱するときも、文の出だしをすぐに思い出すことができます。

●自分の体に番号をつける

 まず、自分の体に番号をつけます。
 この番号もすらすら言えるように何度もくりかえして覚えておきましょう。

 
●文の出だしの言葉をイメージ化する

 文の出だしの言葉を、ごろ合わせでできるだけ具体的なイメージにします。
 そのイメージを、番号をつけた体に結び付けます。

 【文の出だしとイメージを結びつける例】
「ドッカーン。」「ドッスーン。」と大きな音がして、市民会館が壊されていくのが、教室からよく見えます。
1の頭(あたま)のてっぺんがドカーンと爆発(ばくはつ)した。
休み時間に、六組の先生と生徒が廊下へ出て、一生懸命見ていました。
休んでいる小人がピューンと飛んできて2のおでこにつきささった。
ぼくたちの先生も、ぼくたちと一緒に廊下へ出てみました。
バク(ぼく)が走ってきて3の左目にドスーンとぶつかってきた。

●体の番号を増やすには

 たくさんの出だしを覚えると、体の番号が足りなくなってきます。
 そこで、家から学校に行くまでの道順を思い出し、その中の目立つ場所と自分の体を結びつけます。
 つまり、家にいるときの自分で1〜24番、バス停を通りすぎるときの自分で次の1〜24番、という具合です。
 例を参考にして、自分で作ってみましょう。こうすると、覚えることがたくさん増えても、イメージ化して覚えられます。
 まず、家にいるときの自分。
 バス停を通り過ぎるときの自分。
 パン屋さんを通りすぎるときの自分。
 信号のところにいるときの自分。
 学校にいるときの自分。


●説明文などで覚えにくいときにイメージ記憶を使う

 事実文のときは文章自体にストーリーがあるので、イメージ記憶を使わなくてもそのまま暗唱できます。
 説明文や意見文のときは、そのままでは次の文の出だしが覚えにくなるのでイメージ記憶を使います。
 ただし、説明文や意見文のときも、読む回数を増やせばイメージ記憶を使わなくても暗唱できます。

 
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●2週目、3週目の暗唱

 1週目にの300字を暗唱できるようにしたあと、2週目には、同じようにを暗唱します。
 そのとき、はもう暗唱しません。
 3週目には、同じようにを暗唱します。そのとき、はもう暗唱しません。
 いずれも、300字がすらすら暗唱できるようになったら、イメージ化で出だしの言葉を覚えておきましょう。

●4週目の暗唱

 4週目には、の全部で900字を通して毎日4回暗唱します。
 そのときに、暗唱用紙の正方形を使います。
大きい正方形小さい正方形

●4回用の暗唱用紙の使い方

 900字を読むときには、正方形の4回用の暗唱用紙を使います。
 900字の暗唱をしたら花を作る。まず、正方形を三角に折る。市販の折り紙を使ってもよい。
 もう1回三角に折る。
 三角をふくらませる。
 裏の三角もふくらませてひし形にする。
 ひし形を狭く折りたたむ。900字を1回読んだら片方ずつ折りたたむとよい。2回分。
 裏も折りたたむ。1回読むごとに片方ずつ折りたたむとよい。4回分。
 上を丸く、はさみで切る。
 花の途中に横の折り目を作る。
 開くと花ができる。
 1ヶ月30日で、花の咲いた暗唱の木が3本できる。
 
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暗唱フォンの作り方

 教室で一斉に暗唱するときや、狭い家で兄弟一緒に暗唱するとき、大きい声は出せないが、自分の声はしっかり聴きたいということがよくあります。
 暗唱の仕方の中には、聴いて覚える方法もあります。高速聴読がその方法ですが、人によっては聴くだけでは覚えにくいようです。耳栓をして周囲の雑音が入らないようにしながら、内耳で聴く方法もあります。しかし、これも人によっては覚えにくいようです。
 一方、先人の例を見てみると、シュリーマン、本多静六、貝原益軒、湯川秀樹など、みんな声を出して暗唱する方法でした。人間は、いったん自分の声として出した言葉を、聴くときにも言葉として認識します。難しく言うと、表現力が感受性を規定しているのです。暗唱フォンは、自分の声をしっかり聴くための道具です。

●暗唱フォンシングル型(片耳用)
A4の紙を1枚用意します。
1枚を二つに折ります。
二つに折った線を基準に三つに折ります。
裏返してまた三つに折ります。
片側の端を箱を作るように折り立ててホッチキスで止めます。
両側の端を同じように止めて長い箱を作ります。
箱の真ん中あたりを折って120度ぐらいの角度にしてホッチキスで止めてできあがり。
●暗唱フォンダブル型(両耳用)
3枚の紙を使います。まず1枚目を横に二つに折ります。
真ん中の折り目に合わせて下半分を折ります。(※2)
横にして、縦に二つに折ります。
真ん中の折り目に合わせて左右を折ります。。
裏返して、片側の開いた箱を作ります。
始めに折った真ん中の折り目を利用して120度ぐらいにホッチキスで固定します。
同じものを二つ作ります。
3枚目の紙は、(※2)から更に上半分も折ります。
更に左右に折ります。
裏返して、コの字型の溝のような形にします。
真ん中で90度ぐらいにおりホッチキスで固定します。
2つの長い箱と1つ短い溝を組み合わせます。
暗唱フォンダブル型の完成。
長い箱を平面化するには、閉じてある方を左右に広げ、開いている方から内側に折り曲げます。
平たく折りたたみます。
短い溝の方も平面に折りたたみます。折りたたんだ3つの部品をセットします。
暗唱フォンダブル型の完成。
折りたたむ。
 
P9
●思考力を育てる暗唱
 記憶や反復や音読や暗唱が、理解や思考と相反するという考えを持つ人がいます。例えば、丸暗記という言葉には、自分で考えない、表面的な知識だけ、というニュアンスがあります。暗唱も、この丸暗記と同じようなものだと考えている人もいます。
 しかし、記憶が、思考に対して弊害になるのは、その記憶が徹底していないときです。つまり生兵法の記憶、一夜漬けの記憶のときに記憶が弊害になるのです。消化され自分のものになった記憶は、思考を深める役割があります。
 例えば、九九というものを考えてみるとわかるように、ほとんどの人は、九九を消化しているので記憶による弊害というものを感じません。しかし、九九を覚えかけているときは、九九を使うことによって実感よりも劣る面が出ていたこともあったのです。

お菓子を分ける (九九もうろ覚えのときは、体験のブレーキとなることがあります)

 同様に、言葉も、覚えかけのときの言葉は、実感よりも劣る面があります。未消化の言葉によって、体験がかえって浅くなる時期があるのです。しかし、言葉が消化されたあとは、体験は言葉によって深くなります。
 暗唱は、言葉による物の見方感じ方考え方を蓄積することです。
 しかしもちろん、暗唱以外にも、言葉を蓄積する方法はあります。例えば、たくさんの話を聞くこと、たくさんの本を読むことです。多くの話を聞いたり多くの本を読んだりすることによって同じ文章に触れる機会を増やすことができます。つまり、同じ文章や同じ文脈に何度も触れることによって、理解するための言葉が表現するための言葉になっていくのです。
 この表現語彙と理解語彙には、大きな違いがあります。例えば、英語を読む力を10とすると、ほとんどの人の英語を書く力は1程度のはずです。誰でも名作を読んで感動することができますが、同じような名作を書ける人はほとんどいません。理解語彙のレベルと表現語彙のレベルは大きく異なるのです。
 消化された表現語彙を蓄積する方法として、日本人は暗唱というやり方があることを知っていました。九九、百人一首、いろはガルタ、素読などは、日本人が開発した教育の方法でした。
 しかし、この百人一首などに見られるような記憶反復の伝統は、戦後急速に失われ、それまでの記憶や反復の学習に取って代わったものは理解と思考の教育でした。ところが、理解と思考の教育は、一斉指導と結びついていたために教える側の負担が大きく基礎学力の低下を生み出しました。その学力低下を補うものとして、公文式や百ます計算のような記憶反復の方法が登場したのです。しかし、新しい記憶反復の方法は歴史が浅かったために、その方法が万能であるかのような行き過ぎも生み出しました。
 この記憶反復の方法と理解思考の方法を統合するのが、読書、作文、暗唱を結びつけた学習です。
 暗唱の本当の目的は、記憶ではありません。勉強を進めるための目安として覚えることを目標にしていますが、覚えることそのものは決して重要なことではありません。記憶力を高めることや記憶量を増やすことは、暗唱の副産物にすぎません。
 この記憶の副産物に関して、世間では、暗記や暗唱を役立つ知識や文化的な伝統に結びつけようとする傾向があります。例えば、「○○の首都は□□」というような知識を増やすような暗記や、平家物語や枕草子の一部を覚えるような暗唱です。
 暗唱を表現語彙として役立てようとするのであれば、自分がこれから書く作文に結びつくような現代文の事実文、説明文、意見文を中心に暗唱していく必要があります。
 暗唱の真の目的は、反復練習によって物事を把握する力をつけることです。塙保己一が般若心経約300字を毎日100回ずつ1000日間暗唱し、しかも晩年にいたるまで折に触れて暗唱を続けたということを見てもわかるように、宗教的な面を抜きにすれば、これは決して単なる記憶の練習だったのではありません。将来この暗唱の仕組みが脳科学的に解明されるようになると思いますが、当面は暗唱の目的は、記憶よりも理解や思考の方にあると考えておくことが大事です。事実、大人の人が暗唱を始めると、記憶力がよくなるということよりも、発想が豊かになるという感覚を持つことが多いと思います。
 ただし、どの学習にもバランスは必要です。言語と経験の間にもバランスというものがあります。ルソーは、子供時代に本を読みすぎて自分が言語先行型の人間になったことへの反省から、自然教育の「エミール」を著しました。体験が伴わない時期に言語を吸収しすぎると、やはりバランスが崩れる場合があります。もちろん体験ばかり広がって言語が伴わない生活はあまり人間的とは言えませんが、言語が経験よりも大きくなることもやはり人間的な成長とは言えません。
 言葉の森の暗唱の自習は1日10分程度ですから、このようなアンバランスを生み出す心配はありませんが、日常生活の心がけとして、言語的な学習と並行して家の手伝いや自然との触れ合いなど経験の時間を増やしていくことは大事です。

さわやかな朝 (言葉は体験の内容を豊かにしますが、体験が不足していると言葉が先行してしまうこともあります)
 
P10
●暗唱に関するQ&A

 学校での音読の宿題と重なるので、子供が嫌がってしまいます。
 学校の宿題は夕方の家庭学習の時間にやり、言葉の森の自習は早朝にやるようにしてください。時間が離れていれば負担に感じません。
 低学年なので、100字でも読むのにすごく時間がかかります。
 時間はかかってもかまいません。気長に決めた回数だけ音読してください。
 決められた回数まで音読しても覚えられません。
 覚えることが目的ではありません。決められた回数だけ音読できればそれでよしとしてください。
 「している」を「してる」などと間違って自分なりに読んでいます。
 注意のしすぎにならない程度に、ときどき正しい読み方を教えてあげてください。
 声を出さずに読んでいます。
 声を出した方が頭に残りやすいと教えてあげてください。自分にだけ聞こえる小さい声でかまいません。
 ふざけて早口で読んでいます。
 ふざけるのも早口も一向にかまいません。楽しく読んでください。
 子供にとって意味がわからない難しい言葉があります。
 何度も読んでいるうちに子供自身から質問が出てきますから、そのときはお父さんやお母さんが手短に教えてあげてください。自分で辞書を引いて調べさせるという考え方もありますが、暗唱の定着を目的としているときはできるだけほかの作業はさせない方が続けやすくなります。
 つっかえながら読むので、とても近くで聞いていられません。
 そういうときこそ、読み終えたときに、「じょうずに読めるようになってきたね」と褒めてあげてください。
 数回読むと簡単に覚えてしまうので、それ以上続けて読む気になりません。
 覚えることが目的ではありません。スポーツの準備運動で行うランニングと同じものでくりかえすことで体力がついてきます。
 長いので、とても覚えられるようになるという気がしません。
 歌を覚えるのと同じです。かなり長い歌詞でも歌なら自然に覚えてしまいます。
 暗記よりも考える力が大事だと聞いたことがあります。
 弊害があるのは、中途半端な暗記や低レベルの暗記です。本格的な暗唱は考える力を高めます。
 暗唱だけして、課題の長文の音読をしていません。
 できれば、毎週の課題の長文を中心に長文を1編音読し、そのあと暗唱の長文で暗唱をしてください。しかし、両方できない場合は、とりあえず暗唱だけをしっかりできるようにしてください。
 録音したものを聴く形で、暗唱の代わりになりますか。
 ある程度はなります。しかし、録音には機器や準備が必要ですが、音読には不要です。また、自分で声に出したものの方が定着しやすくなります。
 1日のうちに朝、昼、晩と何回も暗唱をして、先に進みたいのですが。
 いい心がけです。どんどんやってください。ただし、何かを新しく始めたとき子供は飛ばしすぎる傾向がありますから、親の方でコントロールしてあげてください。
 英語や社会や古文で暗唱の宿題がありますが、同じようにできますか。
 同じやり方で簡単にできます。
 寝る前に覚えた方が記憶に残ると聞きましたが。
 寝る前に覚えた方が定着します。しかし、大事なのは毎日の継続です。生活の中で毎日確保できる時間帯でやってください。その意味で朝食前の時間帯をすすめています。
 文章が長くなると、最初に覚えたものを忘れてしまいます。
 イメージ記憶を使えば忘れにくくなります。
 1回覚えた900字の文章は、ずっと覚えていた方がいいのですか。
 自分の好きな文章であればそうしてください。しかし、普通は、次の900字の文章を覚えるときは、前の文章はもう忘れてかまいません。
 イメージ記憶がなかなかできません。
 コツは、できるだけビジュアルに、できるだけオーバーにイメージ化することです。漫画としてかけるようなものをイメージ化してください。
 「ところで」というような同じ文の出だしが何度も出てきて、同じイメージになってしまいます。
 「ところで」のあとに続く言葉をつなげてストーリーを作ります。「ところで、私は」だったら、「トコロテンを原料にしてタワシを作って」などとイメージ化します。「ところで、あなたは」だったら、「トコロテンをかきわけてアナグマが出てきて」などとイメージ化します。
 暗唱を親の私もやってみたいのですが。
 大人では、更に発想が豊かになるという効果があります。しかし、子供と一緒に始めると親が先に挫折したときに説得力がなくなりますから、続けられる自信がつくまではひとりでやってください。
 風邪で数日休んでしまい、その週の暗唱ができないのですが。
 その週はできなかったことにして、先に進んでください。1日に2回やる形で取り戻してもかまいません。
 暗唱検定というのは何ですか。
 小中高生を対象に、自宅で保護者が同伴する形で、担当の先生が900字の暗唱を聞き暗唱検定とすることを検討しています。
 
P11
●手作り付箋の作り方 ★通信クラスでは、この練習はまだやりません。

 A4の紙1枚から200−300の付箋ができます。仮止め用のスティックのりは、文房具店で100円前後で売っています。

 A4ぐらいの紙を用意して四つに切る。
横に二つに折る。上部を外側にそらしておくとあとではがしやすい。
 折ったところに仮止め用のスティックのりを1−2センチの幅でつける。
 のりをつけて折りたたんだ状態で、のりのついていない側から切り込みを入れる(数枚まとめて切ると能率的)
 のりのついている側の折り目を1−2ミリの幅で切り落とす。

●付箋読書の方法 ★通信クラスでは、この練習はまだやりません。

 印象に残ったところに付箋をはりながら本を読んでいきます。再読をしたり読書の記録をつけたりするときに役に立ちます。

 本を1冊選ぶ。
 1回に読む目安は、学年の10倍ページ以上(小1は10ページ以上、小2は20ページ以上……小5以上は50ページ以上)。
 読みながら、面白そうだと思ったところに付箋をつける。
 目安のページを超えて読んでもよい。
 読み終えたら付箋をはずしておく。

前日までに読んだ箇所について初めに四行詩で感想を書き、当日は読むだけにするとよい。

●四行詩感想の書き方 ★通信クラスでは、この練習はまだやりません。

 付箋読書で読んだ本の感想を四行詩で書き、読書ノートに記録します。
 書く内容は、本の引用や感想など自由です。

●問題集読書の方法 ★通信クラスでは、この練習はまだやりません。

 小学5年生以上対象です。
 昨年度の全国の入試問題集の問題文を読書がわりに1年間読んでいきます。年度の古いものでもかまいません。
□小学5、6年生……中学入学試験問題集 国語編(みくに出版)
□中学1、2、3年生……全国高校入試問題正解(旺文社)
□高校1、2、3年生……全国大学入試問題正解国語 国公立大編(旺文社)
 問題集の背表紙をはずしてばらばらにします。40ページずつまとめてホッチキスでとじなおして小冊子にします。
 1週間で、この40ページの小冊子の中にある問題文だけを読書がわりに読んでいきます(問題は解きません。空欄の箇所は飛ばして読みます)。1日6ページの割合で毎日10分程度で読めます。
 おもしろいところ、よくわかったところに傍線を引きながら読みます。
 1冊の小冊子は1年間の間に4回は読むようにします。


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