長文集  1月3週  ★(感)孤独について  yube2-01-3
    毎日1ページ音読しましょう。漢字はふりがなをつけずに読めるようにしておきましょう。  2012/06/15 08:09:23
孤独について

 【1】君は孤独を感じたことがあるか。
 もし、それを感じたことがあったら、それ
は君が成長したしるしだ。悲しむことはない

 【2】いつも、まわりのおおぜいの友人と
いっしょになって、先生の失敗をはやしたて
たり、流行歌を合唱したりして、それで毎日
がたのしいというのは、自分の個性を自分で
みつけていないのだ。
 【3】あるいは、個性をそだてることがお
っくうなので、おおぜいのなかにとけこんで
ごまかしているのだ。渡り鳥が群れをつくっ
てとんでいるようなものだ。おおぜいのいく
ところについていけばいいという気持ちだ。
 【4】ところが、自分はおおぜいにはつい
ていけないという気持ちがおこってくる時が
ある。
 自分にだけ能力があるという、えらそうな
気持ちからでなく、そうなる時がある。
 そして、おおぜいからすこしはずれたとこ
ろにでていって、はじめて救われたようにな
る。
 【5】これを、孤独病という病気のように
思うことはない。みんなにとけこめない自分
を悲しく思うことはない。
 人間はめいめい個性をもっている。それが
中学生のころになる と、急に成長するので
、ほかの人とあわないところがでてくる。
 【6】それぞれちがった個性が一度に開花
してくるのだから、ほんとうは中学の時代は
、まとまりのわるいものだ。ところが、いま
は受験勉強というもので、みんなに同じよう
な生活が強いられている。
 【7】みんながおなじ模擬テストをうけ、
おなじ宿題をやらさ れ、おなじように時間
がたりないところにおいこまれている。みん
ながおなじようなことをかんがえ、おなじよ
うにさわぐのは、受験勉強にたいする共通し
た反応だとかんがえていい。【8】受験勉強
のために、個性の開花はおさえられている。
 そのなかで、自分の個性の成長を感じ、自
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分はすこしちがうと思いはじめるのが、孤独
なのだ。
 自分のような孤独な人間が生きていけるだ
ろうかなどと思うの は、まちがっている。
【9】個性的であるという点で、人間はみん
な孤独なのだ。∵
 人間は渡り鳥のような個性のないものでな
い。めいめい孤独なのだと自覚し、孤独だか
らこそ連帯が大事だということになって、は
じめてほんとうの連帯が生まれるのだと思う
。【0】

『人生ってなんだろ』(松田道雄)より