1. 【1】人生において目標が設定されると、脳はそれを達成するための情報処理のしくみをつくっていく。大脳は、内外からの二つの目標が設定されなくては働かない。その第一は、その人の
生涯にわたっての生きがい感である。【2】この生きがい感を何にするかによって、その人の人となりが形成される。大脳は、生きがい感としての長期の内部目標を最上位の目標としてすえ、それに基づき外部の
状況と時間変化に対応する。【3】そこでは、脳の外部世界の
状況に対応するための外部目標を必要とする。これが、第二の目標である。この外部目標は、外部の
状況に応じて
瞬時瞬時に設定される。こうして人は、生きがい感としての内部目標を達成するために外部目標を設定して、今を生きる。
2. 【4】大きな生きがい感を内部目標として設定した人は、その夢の実現になかなか至らないので、それだけ大きな困難や苦労を背負って生きる。この苦難は、時として一
生涯にわたるかもしれない。どのような
状況にあっても、夢の実現に向けて
挑戦し続けることができるためには、それが自己設定したものでなくてはならない。【5】本当にこの目標が好きなのかが問われるのである。しかし、好きと思った目標に取り組んでも、その実現への道は険しい。この苦難のただ中にあっても、この夢の実現に取り組んでいることに意味を見いだし、
輝いて生きることができるかどうかが問われるのである。
3. 【6】エベレストの頂上をめざす夢をもったとしても、そのための準備として多くのステップが必要である。夢を大きく設定し、それを自分の
生涯の中で実現したいと願うのなら、まず当面の目標を設定することで、自分を段階的に引き上げていくことが重要であろう。【7】日常のすべての努力が夢の実現へのステップとして意味づけでき、その方向に向けて努力し続けるならば、時として後退することがあったとしても、結果として夢は達成されるだろう。【8】それでも、気象条件などの外的
状況の不運や自分の欠けているところが大きく引き出されることもあって、頂上を究めることができないかもしれない。【9】しかし、このような
悔しくつらい
状況にあっても、この困難に立ち向かい
輝いて生きることで周囲の人にその喜びが伝わり、その意志は必ず伝達されて
後継者に
引き継がれよう。
4. 【0】人の生きがい感をどのように設定するかは、その人の歩んでき∵た人生と、そこから将来の人生をどのように設計するかに
依存する。日常の
平凡さを最も大切な生きがい感として設定し、日々の
状況の中で最善に生きることで至福感を得る人もいるだろう。自分で自分の人生のかじ取りをして、それを
貫いて生きることでその人が
輝いて生きる時、本人のみならず周囲をも知らず知らずに引き上げることができるのである。
5.(松本 元の文章による)