【1】「浅野たちのチームは今、燃えている 。」 山口先生の声が教室に響き渡った。今日の 朝の会で、私たちDチームはみんなの前でほ められた。私たちの学校では、四年生になる と女子はミニバスケットのクラブ活動があり 、毎日放課後、体育館で練習をしているのだ 。 【2】Dチームは、上から四番目のチーム で、公式試合(じあ い)には出られない。 練習の時も、ゴール下はなかなか使えず、パ ス練習が多い。Cチームを負かして、自分た ちがCチームになれば試合に出られるのだが その壁は厚かった。 【3】チームの五人のうち、三人は 「どんなにがんばったって、試合になんか出 られないし。」 「先生もコーチも、A、Bチームばかり力を 入れているみたいだ し。しかたがないけど 。」 という感じで、なんとなくやる気が出ない様 子だった。 【4】キャプテンである私と、副キャプテ ンのみちるちゃんは、何とかがんばってCチ ームに昇格したいと思っているけれど、チー ムワークが今ひとつなので、うまくいかない のだ。私たち二人しか来ない日もあって、E チームに混じって練習試合(じあい)をした くらいだ。【5】私も少しあきらめかけてい た。 ところが、先月のことだ。みちるちゃんが 、 「ねえ、このままじゃ、いつかEチームにも 抜かされてしまうか も。がんばって、朝練 しない?」 と言い出した。みんな一瞬、えーっという迷 惑そうな顔をした。 【6】しかし、みちるちゃんはひるまず、 強い意志のこもった目でみんなを見つめ、 「私たちだって、試合に出たいよね?」 と問いかけた。私が思わず、大きくうなずく と、他の三人もつられたように首をたてにふ った。∵ |
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 33 34 35 36 37 38 39 40 41 42 43 |
次の日から、三十分の朝練が始まった。【 7】三十分早く来るのも実は大変だ。特に朝 が弱い私とふくちゃんは、朝ごはんもそこそ こに、髪の毛がはねたまま走って登校するよ うなあわただしさだった。 「朝練前にランニングしちゃうようなものだ ね。」 誰もいない早朝の体育館は、すべてが私た ちのものだ。【8】シュート練習が思う存分 できるし、ドリブル練習も何本もできる。声 が響くのでいやでもテンションが上がってい く。一日目にして、私は、これはいけるかも しれないと思った。なんだか昨日までのDチ ームではないみたいだ。 【9】翌日からは、山口先生がのぞきに来 た。あいさつだけすると、体育館の入口で黙 って見ている。ふくちゃんのロングパスを取 りそこねた私に、先生は転がったボールを拾 うと、強めのチェストパスで渡してくれた。 【0】 (言葉の森長文(ちょうぶん)作成委員会 φ) |