長文集  10月3週  ★みなさんは江戸時代の(感)  tu-10-3
    毎日1ページ音読しましょう。漢字はふりがなをつけずに読めるようにしておきましょう。  2012/06/15 08:09:23
 【1】みなさんは江戸時代の大名(だいみ
ょう)が、「加賀百万石(ごく)の大名(だ
いみょう)」とか、「尾張六十万石(ごく)
の大名(だいみょう)」といったよびかたで
、よばれているのをきいたことがあるでしょ
う。石高(こくだか)はその国のゆたかさ、
大きさをあらわしたいいかたです。【2】加
賀の国は百万石(ご く)ものお米がとれる
大国です。それほどのゆたかな国を領地に持
つ大名(だいみょう)、という意味です。
 ちなみに一石(いっこく)とは、約百八十
リットルを意味しま す。それはひとりが一
年間に食べる、お米の量にあたります。
 【3】武士や足軽の給料も、「五人扶持(
ぶち)」「十人扶持(ぶち)」というように
、お米で計算されました。五人扶持(ぶち)
とは、五人のけらいがやしなえるだけのお米
です。ひとり一日五合として計算されました

 【4】昭和になって戦争中、日本には食糧
がなくなり、お米は配給制になりました。生
産者も消費者も、かってに売ったり買ったり
することは禁じられ、生産されたお米はすべ
て政府がいちど買いあげ、消費者は決められ
た量だけを、そこから買うようになっていま
した。
 【5】その、お米を買うための通帳は、長
いあいだ、身分証明書のかわりでもありまし
た。
 お米とはそれほどに、国民の生きるための
基本だったのです。人々のくらしや社会のあ
りかたが、お米を基本とすることで成り立っ
てきた国。【6】そんな時代が、ついさいき
んまで、ずっとつづいてきた国。そのような
国も世界には、ほかにありません。
 もうひとつ、たいせつなことがあります。
お米はわたしたちの気づかぬところで、いつ
もわたしたちといっしょです。
 【7】水道のじゃぐちをひねるとき、あな
たはその水がどこからくるか考えてみたこと
がありますか。川から、ダムから、と答えた
人は、ダムにたまるそのおおもとの川の水を
、考えてみてくださ い。
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 【8】日本は山がけわしく、急斜面の国で
す。「日本の川は、滝のようだ。」と、いわ
れるくらいです。雨がふっても水はいちどき
に海へすてられ、あとはたちまちかわいてし
まう、あばれ川なのです。それなのに、一か
月も二か月も晴れた日がつづいていても、水
がながれているのはなぜでしょう。
 【9】雨をしっかりと受けとめて、大地に
つなぎとめている、森林や水∵田があるから
です。
 ふった雨が森林や水田の土にしみこみ、ゆ
っくりゆっくり地下を移動し、何年も何十年
も、ときには何百年もかけて、やがて地表に
わき出てきます。【0】そのわき水のあつま
りが、ふだんながれている川の水なのです。
「森林は緑のダムだ。」
と、よくいわれます。おなじように水田も、
ダムなのです。
 田植えどき、水をはった段々畑を見てくだ
さい。
「なるほど小さなダムたちが、山の斜面には
りついているなあ。」
と、あなたもきっと、感心するでしょう。
 水田にたたえられたその水は、地下にしみ
こみ地下水になり、やがて下流にながれ出て
川に水を提供してくれます。

 (富山和子著「お米は生きている」より)