1.
宮崎県にある
幸島は小さな
無人島です。この
島には百
匹余りの
猿が
生息しています。ある日のこと、イネという名の
若いメス
猿が川の水でイモを
洗って
食べました。すると、ほかの
猿たちも
次々とイモを
洗って
食べるようになりました。これまでは、
砂などのよごれのついたイモをそのまま
食べていた
猿たちは、「イネのまねをして
食べるとおいしいね。」と
思ったことでしょう。しばらくして、イネは、川の水ではなく
海の水でイモを
洗うことを
思いつきます。
海の水で
洗うと、
塩味がついてもっとおいしくなるのです。それを見ていたほかの
猿たちも、イモを
海水で
洗うのはいいものだと、イネと
同じように
海水でイモを
洗うようになりました。
2.
幸島の
猿たちがみなイモを
洗って
食べるようになると、
不思議なことに、
大分県高崎山の
猿たちもイモを
洗い始めました。
高崎山の
猿ばかりではありません。
遠く離れた
他の
土地や
島にすむ
猿たちもイモを
洗って
食べるようになったのです。もちろん、これらの
猿たちは、
幸島の
猿たちがイモを
洗うところを
実際に見たわけではありません。しかし、いろいろな
場所にすむ
猿たちが
申し合わせたかのようにイモを
洗い始めたのです。これは、イモを
洗う猿が
一定の
数に
達すると、その
行動が
距離をこえて、ほかの
集団にも
伝染したためではないかと
言われています。
3. これと
似た
現象は、
人間社会にもあります。
何か
新しい発明をした人がいると、ちょうど
同じころ
世界のほかの
場所でも
同じ発明をしている人がいたということがよくあります。
4.
言葉の森
長文作成委員会(Λ)