チカラシバ の山 7 月 2 週
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○自由な題名
○うれしかったこと
★わたしの母(父)、いちばんすきなあそび
○七夕(たなばた)
○煙突の上のほうが、
 煙突の上のほうが、ぜんぶ燃えあがっていました。芯にしてあった棒が燃えているのです。つよい風にあおられた炎が、いまにも屋根にうつりそうに長い舌をのばしていました。かあさんは、長い棒をひっつかむと、ゴーゴーと燃えあがる火をむちゅうでたたきつづけ、炎をあげている木ぎれが、かあさんのまわりにどんどんおちていきました。
 ローラはどうしていいかわかりませんでした。自分も棒をひっつかみましたが、かあさんにそばへよってはいけないととめられました。火は、ものすごいいきおいで、ゴーゴー音をたてて燃えています。いまにも家が燃えつくすかもしれないのに、ローラにはどうすることもできないのです。
 ローラは家にかけこんでいきました。燃えている木や石炭が、煙突からおちてきて、炉辺にころがりでています。家のなかはけむりでいっぱいでした。まっかに焼けた大きな木ぎれが、床にころがりでてきました。メアリイのスカートのすぐそばです。メアリイは動くこともできません。すっかりおびえきっているのです。
 ローラは、考えるひまもないほど、こわさでいっぱいでした。いきなり重いゆり椅子の背をひっつかむと、力のかぎりひっぱりました。椅子は、メアリイとキャリーをのせたまま、床をすべるようにあとへさがりました。ローラが、燃えている木ぎれをひっつかんで暖炉にほうりこむのと同時に、かあさんが家へはいってきました。
「えらい、えらい、ローラ。火のついたものが床におちたとき、ほっといてはいけないといったのをよくおぼえていて」
かあさんはそういうと、バケツをとって、手早く、でも静かに、暖炉の火に水をかけました。水蒸気がもうもうとあがります。
「手にやけどをした?」かあさんはローラの手をしらべましたが、ローラは燃えている木ぎれをおおいそぎで投げこんだので、やけどはしていませんでした。
 ローラは、もう大きいから泣いたりはしないので、ほんとに泣いているわけではありませんでした。ただ、両ほうの目からひとつぶ∵ずつ涙がこぼれ、のどがきゅっとつまっているだけで、それは泣いているのとはちがいます。ローラはかあさんにしがみついて、ぴったり顔をくっつけてかくしてしまいました。かあさんが、火事でけがをしなかったのが、ローラはうれしくてたまらないのです。
「泣かないのよ、ローラ」かあさんはローラの頭をなでながらいいます。「こわかったかい?」
「ええ」ローラはいいます。「メアリイとキャリーが焼けちまうんじゃないかと思ってこわかったの。家が焼けてしまって、住む所がなくなるんじゃないかと思って。あたしーあたし、いまのほうがこわい」
 メアリイもやっと口がきけるようになっていました。そして、かあさんに、ローラが椅子をひっぱって、火が燃えうつらないようにしたのだと話しました。ローラはまだ小さく、メアリイとキャリーがすわったままでは、ただでさえ大きくて重い椅子がどんなに重かったろうにと、かあさんはびっくりしました。いったいどうやってローラがそれを動かせたのか、信じられないとかあさんはいいます。
「ローラ、おまえはとても勇気があったんだね」かあさんはいいました。でも、ローラは、ほんとうは、とてもこわかったのです。

(ローラ・インガルス・ワイルダー「大草原の小さな家」)