シオン2 の山 8 月 2 週
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★自由な題名
○何かを作ったこと
★よその家にとまったこと、プールであそんだこと
○みずでっぽうで遊んだこと
○ほんとに、たからものが(感)
【1】「ほんとに、たからものがあるのか!」
 竹ちゃんが、ぼくにむかってねんをおすようにいいました。
 そういわれると、ぼくもあとにはひけません。
「うそじゃない。おじいちゃんが、いったんだ、ほらあなの中に、千りょうばこにはいった大ばん小ばんが、ごっそりうずめてあるって。」
 【2】ぼくのうそはますます大きくなり、とりかえしのつかない大ぼらになっていきました。
「よし、いってみよう。だけど、おまえがいちばんさきにはいるんだぞ。いいな。」
 竹ちゃんが、だめおしをするように、ぼくの顔を見つめていいました。
【3】「ああ、いいとも。」ぼくは、むねをはってこたえました。
 でも、ほんとうのところ、ぼくの心は、(こまったぞ。どうしよう……。)と、おろおろしていました。
 やがて、ローソクやマッチなどをもったぼくたち五人は、ドンドンあなへむかいました。
 【4】あなの入り口は、やっと人がとおれるだけのせまさです。
「さあ、おまえからはいるんだ!」
 竹ちゃんがぼくの心を見すかすようにせきたてました。ぼくは、とたんに、ぶるるる……と、からだがふるえました。
【5】「おい、さっきいったの、あれみんなうそっぱちなんだ!」
 ぼくは、のどのあたりまでそんなことばがでかかったのですが、またゴクン、とのみこんでしまいました。
 みんなから「大うそつき、大ぼらふき」と、いわれるのがしゃくだったからです。
 【6】ぼくは、ローソクに火をつけてまっさきにあなにはいりました。
 正ちゃん竹ちゃん、六ちゃんとあとにつづき、いちばんしんがりは竹ちゃんの弟で、二年生の清ちゃんでした。
 【7】はいったとたんに、しめっぽくかびくさいいやなにおいが、ぷーんとはなをつき、ローソクの光におどろいたコウモリが、パタパタ……と、とびたちました。
(ばか、ばか、ばか! おまえって、なんてばかなんだ。なぜ、つまらないうそなんかついたんだ!)
 【8】ぼくの心が、しきりにぼくをせめたてました。
「おい、たからのありかはどのへんだ!」
 うしろから、竹ちゃんがたずねました。
「もっとさきだ。」
 ぼくは、かぼそい声でこたえました。∵
 【9】しばらくすすむうちに、てんじょうから、大きな石がぐーっとおちかかったりして、ゆくてをふさぎました。
 やっと、はらばいでいけるようなところもあります。
 声をだすと、ウォーン、ウォーンと、ぶきみにあなの中でひびきます。
 【0】はじめは、たがいにわらったり、はなしたりしていたなかまは、しぜんにだまりこんでしまいました。
「おい、どこだ、千りょうばこのあるところは!」
 うしろから、みんながおこったような声で、さけびました。
 どこまでつづいているかわからないほらあな。石が上からおちかかっていきうめになったら……と、おもったしゅんかん、ぼくはもう、一ぽもすすめなくなりました。
 父や母のしんぱいそうな顔が、目のまえにちらちらして、なきだしたくさえなったのです。
(はやくあやまれ、みんなにあやまって、あなの中からでろ!)
 ぼくの心がさけびました。
 そのときです、いちばんしんがりにいた清ちゃんが、とつぜん大声でなきだしました。
 こわいから、かえるというのです。とたんに、ぼくはすくわれたような気もちになって、
「だめだなあ、こんなときに小さい子をつれてくるからだ……。」
と、うしろの竹ちゃんをなじるようにいいました。
「おい、みんなかえろうぜ。どうせ、たからものなんか、ありっこないんだ。」
 竹ちゃんは、ぼくの心の中をみすかしたように、いいかえしました。
「そ、そ、そんな、おじいちゃんが、ちゃんといったんだぞ。」
 ぼくはあわてぎみに、いっしょうけんめいべんかいをしました。
 やがて、ぼくたち五人は、ぶじにほらあなの外へ、はいだしました。
 あなの中からでたとたんに、ぼくはすくわれたように、ほっと大きないきをつきました。
 それでも、なかまたちの顔を、まっすぐ見ることができず、まだなきじゃくっている清ちゃんのそばへいって、
「ごめんよ。」
と、小さな声でいいました。

「ほらふきうそつきものがたり」(椋鳩十(むくはとじゅう)編 フォア文庫より)