シオン の山 8 月 4 週
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○自由な題名

★清書(せいしょ)

○豊かな紙の国
 文字は、初め石などに刻まれていました。しかし、それでは時間もかかるし、重すぎて持ち運ぶこともできません。人間が、カイコのまゆから絹の布を作ったり、植物から繊維をとり出して布を作ったりすることができるようになると、その布を作る技術を利用して、紙を発明することができるようになりました。紙は、安い上に、軽くて、しかも薄いので、何枚も重ねて使うことができました。この紙の発明で、文字が人間の社会に広がるようになったのです。
 日本にも、一六〇〇年以上前に、中国から紙を作る方法が伝わってきました。日本には紙にするのにとてもよい植物があり、日本人は工夫が得意だったので、あっというまに、厚い紙、薄い紙、硬い紙、軟らかい紙、白い紙、色のついた紙、そして、金や銀をちらした紙、よい香りがする紙など、いろいろな紙が作り出されました。
 その時代に書かれた本には、「いろいろな紙をもらうと、この紙にあわせて、どんなふうに工夫して字や絵をかこうかと考えてとても楽しい」とか、「いやなことがあっても、真っ白で上等な紙のたばをもらうと、気持ちもはれて、ここに何を書こうかとうれしくなってくる」などという話が載っています。今でも、きれいな折り紙や包み紙、真っ白なノートなどをもらったときに、同じような気持ちが感じられるのではないでしょうか。
 日本では、古い紙をもう一度すきかえして新しい紙にする技術も発明されました。そのリサイクルの紙は真っ白でなくしっかりもしていませんでしたが、普通の人も買うことができる安い本になりました。
 江戸時代になると、紙の本はたくさんの人が持つことができるようになりました。そればかりか、子どものための、紙細工のおもちゃまでたくさん作られるようになりました。これを、おもちゃ絵と∵いいます。そこには豆絵本のような、本のかわりになるものや、はさみで切ってくみたてて遊ぶ紙おもちゃなどさまざまな種類のおもちゃがありました。きせかえ人形や、おしばいごっこの立ち絵、紙ずもうやめんこ、そして組み立て絵というものができたのもこのころです。ほかにもすごろくやかるたなど、今の時代にも伝わるおもちゃがこの時代に発達しました。。
 江戸時代の子どもたちも、今の子どもたちが、ゲームのカードをためたりマンガを買いそろえたりするのと同じことをやっていたのです。
 破れやすく、火には燃えてしまう紙と知ってはいても、それでも紙でできたものには、集めて愛さずにはいられない魅力があるようです。

「紙君って、えらいんだね。今度から紙様って呼ぼうか。」
「いやあ、もっと気楽に読んでくれた方がいいよ。」
「じゃあ。ヘイ、カミーン。」

 言葉の森長文(ちょうぶん)作成委員会(λ)