a 長文 1.1週 se
 「ここは通れません。」 
菅原すがわらくんが道をふさぎました。下校する時、いつも一組の菅原すがわらくんはまちぶせしてわたしにいじわるをします。バスを降りお て、うちまでの道がずっといっしょなので、毎日帰りに会ってしまいます。 
 オナモミのをたくさんポケットに入れていてそれをぶつけてきたり、たてぶえのふくろをふりまわしたり、本当に毎日いやなことをします。ランドセルと背中せなかの間にトカゲを入れられたり、わきに下げている給食きゅうしょく用のコップをとられたりもしました。帽子ぼうしを上にひっぱって、ゴムをぱちんといわせるのなんかしょっちゅうです。わたしは、とても悲しくかな  なるけれど、がまんして走って通り過ぎとお す ます。そしてうちに着いつ て、お母さんの顔を見るとなみだがぽろぽろ出るのでした。 
 でも、お母さんは、 
菅原すがわらくんはさやかとお友だちになりたいからそういうことをするのよ。今度こんど、いっしょに遊ぼあそ うと言ってみたら?」 
などとにっこり笑うわら のです。いっしょに遊ぶあそ だなんて絶対にぜったい いや! わたしは心の中でそう思いました。そして、にくらしい菅原すがわらくんの顔を思い浮かべるおも う   とくやしい気持ちきも でいっぱいになりました。 
 十二月のはじめ、風の冷たいつめ  日でした。わたし靖子やすこちゃんや典子のりこちゃんたちと五、六人で、公園でゴムとびをしていました。夢中むちゅう遊んあそ でいると、そこへ菅原すがわらくんたちがやってきました。わたしは楽しかった気持ちきも が一気にしぼむ感じかん がしました。思ったとおり、菅原すがわらくんたちはれつ並びなら もしないで、じゃまするようにゴムにむかって走って来ます。そして、わざと、ピンとはったゴムにひっかかるまねをしました。その時、ゴムを持っも ていたわたしは思わず向こうむ  がわ典子のりこちゃんに、 
「まきつけちゃおう。」 
呼びかけよ   ました。そして、菅原すがわらくんたちを伸ばしの  たゴムでぐるぐる巻きま にしたのです。菅原すがわらくんたちはギエッとへんな声を出しました。
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身動みうごきができなくなった菅原すがわらくんを見て、わたしはなんだかおかしくなって笑いわら 出してしまいました。みんなもゲラゲラ笑いわら ました。ぐるぐる巻きま にされた菅原すがわらくんたちも、 
「ごめんなさあい。」 
笑っわら ています。そのあとはなぜか仲良くなかよ なって大勢おおぜいでゴムとびをしました。 
 その日をさかいに、菅原すがわらくんは帰り道のいじわるをぴたりとやめました。会っても、「おう」と言うだけで何もしてきません。それどころか、 
「おまえ、今日遊べるあそ  ?」 
誘っさそ てくるようになったのです。いつかお母さんが言ったことは本当だったのだなあとわたしは思いました。

言葉ことばの森長文ちょうぶん作成さくせい委員いいん会 φ)
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a 長文 1.2週 se
 ワインはグレープジュースですが、姿すがたをかえたグレープジュースであることを、みなさんはよく知っていますね。グレープジュースはあまいのにワインはアルコールのあじがします。時間がたつと変化へんかするこのような現象げんしょうを、発酵はっこうとよんでいます。
 しかし、どうして発酵はっこうがおこるのだろう? パストゥールの問題もんだいはここにありました。
 当時の最ももっと 偉大いだい学者がくしゃたちも、グレープジュースはどんな生物せいぶつのたすけもかりずに自然しぜんにアルコールにかわると主張しゅちょうしていました。ところがパストゥールは、グレープジュースそのものが自然しぜん発酵はっこうすることはけっしてないと主張しゅちょうしました。べつの役者やくしゃ舞台ぶたい登場とうじょうしているはずである、とかれはいうのです。この役者やくしゃはたいへんに小さいため、顕微鏡けんびきょうでしか見ることができないもので、かれは酵母こうぼとよびました。
 パストゥールは、密封みっぷうしてあたためたグレープジュースは発酵はっこうしないことを証明しょうめいしてみせました。酵母こうぼが作用しなければ、ジュースはワインにはなれないのです。酵母こうぼはジュースの中にふくまれるとうを食べながらものすごいいきおいで繁殖はんしょくします。とうを、アルコールと炭酸たんさんガスに分解ぶんかいします。つまり、アルコールというのは、小さな生物せいぶつによるとう消化しょうか作用の結果けっかなのです。
 病気びょうき問題もんだいとはちがうじゃないか、とみなさんはいわれるかもしれません。ところが、ワインにも病気びょうきがあるのです。すっぱくなったり、くさってあじがかわったりすることです。発酵はっこうがひとりでにおこると信じしん ているかぎり、ワインに病気びょうきがあることや、まして、その病気びょうき戦うたたか ことができるなどと、だれも考えてみないでしょう。
 ところがパストゥールは、これらの病気びょうきは、いろいろな酵母こうぼ酵母こうぼ自身じしんをやしなうためにワインを変化へんかさせることが原因げんいんであることをしめしました。
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 パストゥールは、こうして発酵はっこうにはそれぞれのとくべつな酵母こうぼがあって、ワインをにかえたり、牛乳ぎゅうにゅうをチーズに、麦芽ばくがをビールにかえるはたらきをするのだということを証明しょうめいしたのです。
 
 「細菌さいきん戦うたたか パストゥール」(ブラーノ=ラトゥール)偕成社かいせいしゃ
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a 長文 1.3週 se
 果物くだものをおさらにのせたまま長いあいだ(ほうっておいたり、死んし 動物どうぶつをそのままにしておくと、くさったにおいがしてくることは、知っていますね。パストゥールは、このにおいの原因げんいんが、微生物びせいぶつあるいは細菌さいきん(ギリシア語でmicros「小さい」という意味いみ)とよばれる、小さな生き物い もののしわざであることをつきとめています。
 この生物せいぶつは、独特どくとく性質せいしつをもっており、酸素さんそがあると死んし でしまうか「眠れるねむ  森の美女びじょ」のように眠っねむ たままでいます。ところが、いったん酸素さんそがなくなるときゅうに元気づいて、どんどんふえはじめます。
 パストゥールは、新しい生物せいぶつ発見はっけんしたのです。それは、酸素さんそ必要ひつようとしない生物せいぶつでした。
 有機ゆうき体(生物せいぶつ)は、みな何百万もの微生物びせいぶつをすまわせています。有機ゆうき体が生きているあいだは、その細胞さいぼうは空気を必要ひつようとしているので、これにたえられない微生物びせいぶつは、眠っねむ 状態じょうたいになっています。生物せいぶつ死ぬし と、空気が細胞さいぼうにはこばれてこなくなります。
 こうして酸素さんそという脅威きょういからときはなされた微生物びせいぶつは、まるで王子のキスで目ざめた「眠れるねむ  森の美女びじょ」のように、目をさましはじめます。成長せいちょうしていくにつれて、酵母こうぼがグレープジュースをワインにかえてアルコールのにおいをさせるように、この微生物びせいぶつはまわりの組織そしきを少しずつこわして、悪臭あくしゅうをはなちます。
 
 「細菌さいきん戦うたたか パストゥール」(ブラーノ=ラトゥール)偕成社かいせいしゃ
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a 長文 1.4週 se
 伝書でんしょバトは、信頼しんらいのおける郵便ゆうびん配達員はいたついんのようです。伝書でんしょバトに届けとど てもらう手紙は、足につけた小さなつつの中に入れたり、背中せなかにくくりつけたりします。伝書でんしょバトは、託さたく れた手紙を、遠く離れはな 相手あいてのもとへ届けるとど  ことができます。二百キロメートルぐらいの距離きょり飛ぶと のが普通ふつうですが、時には千キロメートルも離れはな 場所ばしょまで飛ぶと こともあります。千キロメートルというと、だいたい東京から北海道、又はまた 東京から九しゅうぐらいまでの距離きょりになります。これほど離れはな 相手あいて先に、間違わまちが ずにたどりつける能力のうりょくにはおどろきます。
 しかし、こんなに優秀ゆうしゅう伝書でんしょバトにも弱点があります。それは、いつも同じ届け先とど さきにしか手紙を運べはこ ないことと、あまり重いおも ものは運べはこ ないことです。伝書でんしょバトがめざすのは、手紙のあて先に書かれた住所じゅうしょではなく、自分が生まれたハト小屋ごやです。つまり、伝書でんしょバトの手紙の配達はいたつは、帰巣きそう本能ほんのう利用りようしたものなのです。
 地図も持たも ずに何百キロも離れはな た地点に正確せいかくにたどりつくのは、人間にとっては、たいへん難しいむずか  ことです。伝書でんしょバトは、なぜ自分ののある場所ばしょ迷わまよ ずに帰ることができるのでしょう。かつては、地上に見える目印めじるしと、太陽たいよう場所ばしょ、それに地球ちきゅう磁気じきをたよりに飛びと 、夜になると星を目印めじるし進むすす のだろうと言われてきました。最近さいきん研究けんきゅうによると、伝書でんしょバトの方向ほうこう感覚かんかくは、すぐれた嗅覚きゅうかくのおかげでもあると言われています。
 遠くからでも、迷わまよ ずに自分のに帰ることができるハトの性質せいしつを、大昔おおむかしから人間は知っていました。古代こだいエジプトでは、漁船ぎょせん伝書でんしょバトを使っつか て、りょう成果せいかを海からりくに知らせていたそうです。一度いちど放たはな れた伝書でんしょバトは、休むことなく何百キロも飛びと 続けるつづ  ため、電話やメールがない時代じだいは、最ももっと 速いはや 通信つうしん手段しゅだんでした。
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近代きんだいにいたるまで、伝書でんしょバトは、軍事ぐんじ用や報道ほうどう用の通信つうしん手段しゅだんとして数多く使わつか れてきました。また、離れはな 小島こじまなどの輸送ゆそう難しいむずか  地域ちいきに、くすり血清けっせい運んはこ で、医療いりょう手助けてだす をしていた伝書でんしょバトもいました。
 現在げんざいでは、通信つうしん手段しゅだんとして伝書でんしょバトが利用りようされることはほとんどなくなり、スポーツとしてのハトのレースが開催かいさいされている程度ていどです。本来、帰巣きそう本能ほんのうにすぐれているハトですが、近年になって、レースに出たハトが戻っもど てこないことがだんだん増えふ てきました。優秀ゆうしゅうなはずのハトが、なぜか途中とちゅう迷子まいごになってしまうのです。この原因げんいんは、はっきりとはわかっていませんが、携帯けいたい電話などの電磁波でんじは影響えいきょうしているというせつがあります。また、ハトの品種ひんしゅ改良かいりょうを行なったさい、スピードばかりを重視じゅうしして、方向ほうこう感覚かんかくがにぶってしまったのではないかとも言われています。
 それにしても、伝書でんしょバトの郵便ゆうびん配達はいたつには、ガソリンなどの燃料ねんりょうは一切使わつか ないし、切手も不要ふようです。ごほうびにまめをいくつか与えれあた  満足まんぞくしてくれる伝書でんしょバトは、環境かんきょうにやさしい、すばらしく優秀ゆうしゅう郵便ゆうびん配達員はいたついんではないでしょうか。
 ハトと同じように身近みぢかな鳥に、スズメやカラスがいます。どうして伝書でんしょスズメや伝書でんしょカラスがいないかというと、スズメに手紙をつけると重くおも て前にすずめないからです。また、カラスに手紙をつけると、途中とちゅうゴミ箱  ばこ寄りよ 、手紙のことを忘れわす てしまうからっす。

 言葉ことばの森長文ちょうぶん作成さくせい委員いいん会(κ)
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a 長文 2.1週 se
「もうお肉取っと てもいい?」 
 十月に入るころから、ぼくのうちでは日曜日の夕飯ゆうはんはほとんどなべ料理りょうりです。毎週となると、あきるのではないかと思われそうですが、なべ料理りょうりと言ってもいろいろあるのであきることはありません。ぼくのお父さんは九州きゅうしゅう博多はかた出身しゅっしんなので、 
「やっぱり水炊きみずた が一番うまいな。」 
と、いつもむね張っは ています。やわらかいとり肉と、ものすごくおいしいスープを味わうあじ  とぼくもそうだなあと思います。 
 でも、今夜はお姉ちゃんがリクエストした「かいせんキムチなべ」です。かいせんというのは、海でとれる魚や貝のことですが、ぼくのうちでは「かいせん」の時もぶたバラ肉をいっしょに入れます。お母さんに聞いた話では、キムチなべにもいろいろなからさがあって、大人でもヒーヒー言うくらいからい本場のチゲなべから、中辛ちゅうからマイルドなキムチなべまでランクがあるそうです。うちは、ぼくがまだあまりからいのは食べられないので中辛ちゅうからマイルドですが、五年生になったら、辛口からくち挑戦ちょうせんしたいと思っています。
 なべをやると、部屋へや中があたたかい蒸気じょうき包まつつ れて、エアコンもいりません。暑がりあつ  のお姉ちゃんは、半そでになってしまうくらいです。なべに材料ざいりょう順番じゅんばんに入れたり、煮えに たものを教えたりする人を「なべ」というそうですが、うちのなべはお父さんです。お父さんはみんなに、 
「長ネギはまだだ。いいと言ってからだ。」 
白菜はくさいがとろとろになったぞ。」 
豆腐とうふをくずさないように取れよと  。」 
「そのはまぐりは、取れと ているぞ。」 
「よし、そろそろ雑炊ぞうすいだな。」 
などと指図さしずします。その様子ようすはちょっといばっていて、まるで会社の部長ぶちょうとか社長みたいです。でも、お父さんの言うとおりにやる
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絶対ぜったい失敗しっぱいしないのでプロだな、と思います。 
 なべ料理りょうりの時は、いつもの夕飯ゆうはんよりみんなおしゃべりな気がします。ぼくがそう言うと、お母さんは、 
「一つのなべをみんなでつつくから、連帯れんたいかんが生まれるのよ。」 
と言いました。その時ちょうどおねえちゃんが、
「見て、この白菜はくさい連帯れんたいかんが生まれてるよ。」 
と、キムチのスープで赤くなった白菜はくさいをつまみあげました。それは、はしっこがつながっていて、ぼくの家族かぞくと同じく四切れが万国旗こっきのように連なっつら  ていました。お母さんはあせって、 
連帯れんたいかん大事だいじ!」 
とごまかしました。湯気ゆげ向こうむ  でお父さんも笑っわら ていました。

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a 長文 2.2週 se
 パストゥールは炭疽たんそきんのいる血液けつえき一滴いってきだけとって、これを尿にょうの中で培養ばいようしました。数日後、この培養ばいようえきからまた一滴いってきだけとって、二番めの培養ばいようえきの中におとしました。
 そして数日後、またおなじことをくりかえしました。
 いちばん最初さいしょ一滴いってき血液けつえきは毎回うすめられているのですから、この作業さぎょうをなんどもくりかえしていけば、最初さいしょ一滴いってきの中にいた微生物びせいぶつはとうぜん消えき てしまうはずです。
 パストゥールは、このようにして二十回もうすめてきた培養ばいようえきから、ほんの一滴いってきだけとって動物どうぶつ注射ちゅうしゃしました。すると、動物どうぶつはたちまち炭疽たんそびょうにかかることがわかりました。最初さいしょ培養ばいようえきも、最後さいご培養ばいようえきも、病気びょうきをおこさせる力はおなじなのです。うすめるたびに炭疽たんそきん繁殖はんしょくしたにちがいありません。そうでなければ、最後さいご培養ばいようえきは何百ばいにも弱まっているはずですから。
 こうして、この小さな棒状ぼうじょうのものが、炭疽たんそびょう原因げんいんだということがわかりました。
 もし環境かんきょうをかえたら、炭疽たんそきんはどのような反応はんのうをしめすのでしょう。
 パストゥールは、ニワトリが炭疽たんそびょうにかかっているひつじといっしょにいても、決してけっ  病気びょうきにならないこと、また、ニワトリの体温たいおんが高いことを知っていました。そこで、数羽のニワトリをこおりにつけてひやしてから、炭疽たんそきんをあたえてみました。どうなるか想像そうぞうしてみてください。
 しばらくすると、ニワトリはみんな病気びょうきにかかったのです。
 パストゥールはすぐに反対はんたい実験じっけんをしてみました。
 ウサギは炭疽たんそびょうにかかりやすい動物どうぶつです。びきかのウサギをあたたかいお湯 ゆにつけて体温たいおんをあげてみました。するとどうでしょう、ウサギは病気びょうきにかからなかったのです!
 「細菌さいきん戦うたたか パストゥール」(ブラーノ=ラトゥール)偕成社かいせいしゃ
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a 長文 2.3週 se
 そのころ、パストゥールは、ニワトリのコレラを研究けんきゅうしていました。かれは犯人はんにんが8の字のかたちをした細菌さいきんであることをつきとめていました。毎日準備じゅんびしたスープの中で、この細菌さいきん培養ばいようすることができたからです。
 一八七九年の夏の休暇きゅうかをパストゥールは故郷こきょうのアルボアですごしました。パリに帰ってきたとき、培養ばいようえきのことをすっかり忘れわす ていたことに気がつきました。何週間も放っほう たままにしていたのです。かれは助手じょしゅにそれをすてるように命じめい ましたが、ふと思いなおしてともかくニワトリに注射ちゅうしゃしてみるようにいいました。細菌さいきんはひょっとしたら、まだ毒性どくせいをもっているかもしれません。
 ところがどうでしょう。ニワトリは、コレラにかかりませんでした。実験じっけんをくりかえして、こんどは新しいとても強力な培養ばいようえき注射ちゅうしゃしてみました。するとおどろいたことに、ほかのニワトリは病気びょうきになったのに、古い培養ばいようえき注射ちゅうしゃしておいたニワトリは、病気びょうきにかかりませんでした。
 長いあいだにやしなわれた直感ちょっかんと、知識ちしきと、それに偶然ぐうぜん味方みかたして、パストゥールはその生涯しょうがいでもっとも重大じゅうだい発見はっけんをすることになったのです。
 パストゥールは、ジェンナーの天然痘てんねんとうのワクチン接種せっしゅから百年ののちに、新しいかたちの予防よぼう接種せっしゅほう発見はっけんしました。古くなったコレラきん培養ばいようえき注射ちゅうしゃされたニワトリは、この病原菌びょうげんきんのはいっている新しい培養ばいようえき抵抗ていこうすることができたのです。この発見はっけんによって、医学いがく全体ぜんたいが新しく生まれかわることになりました。
 まず獣医じゅういたちがパストゥールの仕事しごと絶賛ぜっさんしました。
 ニワトリコレラを克服こくふくしたかれは、ふたたび炭疽たんそびょう興味きょうみをしめしました。ニワトリコレラで幸運こううんがかれにあたえてくれたことを、こんどは自分の力でやってみるのです。しっかりとした方法ほうほうで、培養ばいようえき毒性どくせいをやわらげようとしました。
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 炭疽たんそきんのはいっている培養ばいようえきを、摂氏せっし四十三で八日間加熱かねつしたあとならば、この培養ばいようえきひつじ、ウサギ、モルモットに注射ちゅうしゃしても、動物どうぶつ発病はつびょうしません。これらの動物どうぶつの体は、弱められた細菌さいきんによって予防よぼうされたのです。この弱められた細菌さいきんは、いわば、もとの仲間なかまをうらぎって体の味方みかたをする、二じゅうスパイの役割やくわりをえんじました。ですから、あとになって「猛毒もうどく」な炭疽たんそきん注射ちゅうしゃしても、平気へいきでいることができるのです。
 こうしてパストゥールは、動物どうぶつ炭疽たんそびょうのワクチンを接種せっしゅする方法ほうほうを見つけだしました。
 
 「細菌さいきん戦うたたか パストゥール」(ブラーノ=ラトゥール)偕成社かいせいしゃ
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a 長文 2.4週 se
 やく六千五百万年前に恐竜きょうりゅう絶滅ぜつめつすると、哺乳類ほにゅうるい急速きゅうそく繁栄はんえいしはじめました。最初さいしょ哺乳類ほにゅうるいは、今のネズミにていました。哺乳類ほにゅうるいは、体温たいおん一定いってい保つたも しくみを体の中に持っも ていたので、いろいろな環境かんきょう暮らすく  ことができ、多くの種類しゅるいに分かれていきました。
 アフリカでは、サルの仲間なかまである霊長れいちょうるいが、さまざまな進化しんかをしていきました。その中でも、森の中で暮らしく  ていた霊長れいちょうるいが、わたしたち人類じんるい祖先そせんだと言われています。彼らかれ は、果物くだものなどを食べて、一日のほとんどを木の上で過ごしす  ていました。木の上は食料しょくりょうがたくさんあり、猛獣もうじゅうから守るまも のにも都合つごうがよく、暮らしく  やすい場所ばしょだったと考えられます。
 森の木の上に住んす でいた霊長れいちょうるいが、どのようにして人類じんるい祖先そせん進化しんかしたのでしょう。これについては、つぎのようなせつがあります。
 ちょうどこのころ、火山が活発かっぱつ活動かつどうし、大きな地震じしん起こりお  、アフリカ大陸たいりくを南北に貫くつらぬ 「アフリカ大地溝ちこうたい」が形成けいせいされました。富士山ふじさんよりも標高ひょうこうの高い、長い山脈さんみゃくができたことによって、その東側ひがしがわはだんだん乾燥かんそうし、もともとジャングルだった場所ばしょが草原に変わっか  ていきました。
 草原で生きていくために、霊長れいちょうるいは木から下りなくてはなりませんでした。豊かゆた な森と比べるくら  と、草原は食料しょくりょうが少ない上、猛獣もうじゅうにも見つかりやすく、おそわれる危険きけんがありました。獲物えものをつかまえたり、てきをいち早く見つけて逃げるに  ためには、より遠くを見渡すみわた 必要ひつようがあったのでしょう。草原で生活を始めはじ 霊長れいちょうるいは、二本足で立って歩き始めはじ ました。これが人類じんるい祖先そせんです。
 直立二足歩行を始めはじ たことで、人類じんるい祖先そせんは、ほかのサルとは明らかに違うちが 道を歩み始めはじ ました。彼らかれ は、自由じゆうになった前足を
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手として使うつか ことができるようになりました。今から三百万年前の猿人えんじん、アウストラロピテクスは、石器せっき使っつか ていました。これが道具どうぐ始まりはじ  です。また、やく五十万年前の原人は、火を使っつか て生活していたことがわかっています。その後に出現しゅつげんしたきゅう人のネアンデルタール人は、死者ししゃ埋葬まいそうする習慣しゅうかんがありました。
 やく四万年前に生活していた新人のクロマニヨン人は、現在げんざい人類じんるいとほとんど変わらか  ない姿すがたをしていました。彼らかれ はすでに言葉ことばを話し、協力きょうりょくして狩りか りょうをして暮らしく  ていたのです。クロマニヨン人は、ナイフ、刀などの石器せっきや、美しくうつく  彫刻ちょうこくされた骨角こっかくを作り、やりや弓矢を発明はつめいして集団しゅうだん狩りか を行なっていました。わなをしかけることで、マンモスやシカなどの巨大きょだい獲物えものもつかまえることができました。彼らかれ 暮らしく  ていた洞くつどう  には、今も、狩りか 成功せいこう祈っいの 描いえが たと思われる動物どうぶつの絵が残っのこ ています。
 このように、アフリカ大地溝ちこうたい東側ひがしがわ厳しいきび  環境かんきょうが、人類じんるい祖先そせんを生み出しましたが、西側にしがわではどうだったのでしょうか。食料しょくりょう豊富ほうふなジャングルの中で暮らしく  てきた霊長れいちょうるいは、現在げんざいまであまり変わらか  ない姿すがた保ったも てきました。これが、ゴリラ、チンパンジー、ボノボなどの、人類じんるい最ももっと 似かよっに   生物せいぶつとされている類人猿るいじんえんです。
 人間は木から下りることによって、サルと分かれました。しかし、今でもむかし時代じだい懐かしくなつ   なることがあります。公園の木を見るとふと登りのぼ たくなったり、木の上でキャッキャッと叫んさけ でみたくなったりするのはそのためです。

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a 長文 3.1週 se
「ハッピバースデートゥーユー。」 
誕生たんじょう日が来るたび、わたしはお母さんから自分の生まれた時のお話を聞きます。毎年同じ話を聞いても、なぜかまた聞きたくなるのです。お母さんは、 
「あなたが生まれたときはねえ。」 
となつかしそうな顔をします。そして、 
「なかなか逆子さかごがなおらなくて、逆子さかご体操たいそうをいっしょうけんめいしたけれど、直前までなおらなかったの。でも、生まれそうになっておなかが痛くいた なって病院びょういんに行くと、なぜかくるっとなおっていたのよ。」 
笑いわら ます。わたしは、赤ちゃんがおなかの羊水ようすいの中でくるっとシンクロナイズドスイミングみたいにまわっているのを想像そうぞうします。 
 ときどき、お父さんも話に入ってきて、 
「あの時は初めてはじ  体験たいけんだったから、お父さんもあたふたしたよ。お母さんは痛いいた 痛いいた と言うし、呼び出しよ だ ベルを押しお てもお医者いしゃさんがなかなか来てくれないし。 生まれてきちゃったらどうしようと生きた心地がしなかったよ。」 
などと早口でまくし立てます。その様子ようすを見ると本当にあせっていた様子ようす想像そうぞうできます。 
 おばあちゃんにも聞きました。 
「それがねえ、いとこのけいちゃんやしんちゃんと比べくら ても、信じしん られないくらい大きな産声うぶごえだったのよ。おばあちゃんたちは廊下ろうかで今か今かと待っま ていたのだけれど、厚いあつ 分べん室のとびらをつきぬけるような元気なオギャーだったわよ。」 
大笑いおおわら していました。そして 
「先生や看護かんごさんが、もう目をあいてますよと言ったのも忘れわす られないわねえ。」 
付け加えつ くわ ました。すると、お母さんたら 
「そうそう。それからね、生まれたとたん、ぴゅーっとオシッコしたんだったわ。」 
などと言うのです。わたしはこの話だけははずかしいので、いやだ
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なあと思います。 
 去年きょねんまではあまりわからなかったけれど、今はこんな風にわたしの生まれたときの話をみんなが覚えおぼ ていてくれて、聞かせてくれるというのは幸せしあわ なことだなあと思います。そして生まれたとき、みんなに見守らみまも れていたのだなあとあたたかい気持ちきも になります。ときどき、お父さんやお母さんに反抗はんこうしたり、わがままなことを言ったりしてしまうわたしですが、この話を思い出すと、やっぱりお父さんとお母さんの子でよかったなあと思います。

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a 長文 3.2週 se
 パストゥールは狂犬病きょうけんびょう研究けんきゅうからはじめました。年に千人くらいの人しか死なし ないのですが、狂犬病きょうけんびょうは、おそろしい病気びょうきです。
 なぜこの病気びょうき選んえら だかというと、狂犬病きょうけんびょうはだれもが疑わうたが ない伝染病でんせんびょうであったことと、この病気びょうきが人間の病気びょうきである前に犬、オオカミ、キツネ、ねこ、ウサギなどの動物どうぶつ病気びょうきだったからです。もちろん人間の体をつかって実験じっけんすることなどできませんが、狂犬病きょうけんびょうだと動物どうぶつ使っつか 実験じっけんができるのです。
 しかしこの選択せんたくによって、大きな問題もんだいにぶつかることになりました。狂犬病きょうけんびょう原因げんいんとなっている微生物びせいぶつは、顕微鏡けんびきょうですら見ることができないほど小さなものだったのです。それはろ過 かせいのウイルスとよばれるもので、つまり、もっとも目のこまかいろ紙も通ってしまうウイルスなのです。
 パストゥールは病原菌びょうげんきんを見ることができないまま研究けんきゅうをつづけることになりました。もっと悪いわる ことには、このウイルスは、大きな細菌さいきんのようにじゃがいもやスープや尿にょうの中で培養ばいようすることができません。動物どうぶつの体だけが繁殖はんしょくできる場所ばしょでした。あきらめたほうがりこうかもしれません。でも、「幸運こううん大胆だいたんな人にほほえむ」ということばをみなさんはもう知っていますね。
 パストゥールは犬小屋こやをつくって、つぎつぎと犬に狂犬病きょうけんびょうをうつしていきました。狂犬病きょうけんびょうにかかった犬ののうをすこしとっては、つぎの犬ののう注射ちゅうしゃするのです。
 十日後、この犬はあわを吹いふ て、はげしくほえはじめ、そしてもがき苦しんくる  で、死んし でいきました。そのあとは、今までの方法ほうほう採用さいようしました。微生物びせいぶつ培養ばいようして、ひとつの培養基ばいようきから、培養基ばいようき微生物びせいぶつをうつしていくあのやり方です。こうして、狂犬病きょうけんびょう培養基ばいようきをいつでも手に入れることができるようになったのです。
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 つぎに、ウイルスを弱める方法ほうほうを見つけなければなりません。がいのないものにするのですが、病気びょうきから動物どうぶつの体を守るまも ことができるものでなければなりません。かれは、むずかしいけれども効果こうかてき方法ほうほうをとりいれました。犬のウイルスをサルにうつすと、狂犬病きょうけんびょうがすこし軽くかる なるのです。このサルから病原びょうげんウイルスをとって、またべつの犬にうつします。するとこの犬は毒性どくせいの強い狂犬病きょうけんびょうのウイルスに対して たい  免疫めんえきになります。反対はんたいに犬の狂犬病きょうけんびょうをウサギやモルモットにうつすと、もっと毒性どくせいの強い狂犬病きょうけんびょうになりました。
 パストゥールはまもなく、自分の実験じっけん室で、とても弱いものからたいへん危険きけんなものまで、いろいろな強さの狂犬病きょうけんびょうウイルスを持つも ことになりました。一八八四年八月、公式こうしき委員いいん会でパストゥールは、毒性どくせいを弱めた狂犬病きょうけんびょうウイルスで免疫めんえきになった二十三ひきの犬は、猛毒もうどくなウイルスを注射ちゅうしゃしても狂犬病きょうけんびょうにかからず、免疫めんえきにされなかった犬は、ほとんど狂犬病きょうけんびょうにかかったことを説明せつめいしました。
 見えないウイルスを自由じゆうにあやつることが可能かのうになったこの研究けんきゅうは、画期的かっきてきなものでした。
 
 「細菌さいきん戦うたたか パストゥール」(ブラーノ=ラトゥール)偕成社かいせいしゃ
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 事件じけんがおこったのは、今からやく百年前の一八八五年七月六日のことでした。二日前に狂犬病きょうけんびょうの犬にかまれたかわいそうな犠牲ぎせいしゃが、かれらの実験じっけん室につれてこられました。ジョゼフ=メイステルという少年です。
 パストゥールははじめ少年の治療ちりょうをことわりました。かれの方法ほうほうは、まだ治療ちりょう使えるつか  ような段階だんかいではなかったからです。しかし、友人のビュルパン医師いしとグランシェール医師いしが、かれを説得せっとくしました。なにもしなくても少年はまちがいなく死んし でしまいます。それは治療ちりょうしてもしなくても、これ以上いじょう悪くわる なることはないということでした。
 パストゥールは決心けっしんしました。四十年という長い研究けんきゅうのあと、パストゥールはついに人間にたどりつきました。
 狂犬病きょうけんびょうはかならず死ぬし 病気びょうきでした。
 しかし、パストゥールにとっては都合つごうのよいこともありました。それは、狂犬病きょうけんびょうの犬にかまれてから、実際じっさい狂犬病きょうけんびょう症状しょうじょうがあらわれるまでに一か月くらい時間がかかることです。この一か月のあいだに、パストゥールはジョゼフ少年に、毒性どくせいの弱いウイルスを接種せっしゅして予防よぼうし、次につぎ 接種せっしゅするもう少し強いウイルスに対し たい 免疫めんえきにすることができます。
 七月六日の夜に、グランシェール医師いしは、できるだけ弱めた脊髄せきずいえきをつかってワクチンを接種せっしゅしました。それから毎日すこしずつ強いものを接種せっしゅしていきました。十日め、もっとも毒性どくせいの強い狂犬病きょうけんびょうウイルスを接種せっしゅしました。
 このときの不安ふあんがどんなに大きいものだったか、みなさん、想像そうぞうすることができますか。
 この病原びょうげんウイルスは、とても毒性どくせいが強いので、それだけでも少年のいのちをうばってしまうはずです。しかし、さきに少年の体内にはいった病原びょうげんウイルスのあとを追っお てはいりこんだ、この強い
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狂犬病きょうけんびょうウイルスは、目的もくてきをかえてしまいました! 殺さころ ないで、ぎゃくに少年を守っまも たのです。症状しょうじょうがあらわれるはずであった八月ごろには、ジョゼフ少年の体は病気びょうきに対して たい  抵抗ていこうできる状態じょうたい、つまり免疫めんえきになっていました。
 
 「細菌さいきん戦うたたか パストゥール」(ブラーノ=ラトゥール)偕成社かいせいしゃ
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 時計が動くうご には電池が必要ひつようなように、わたしたちが生きて活動かつどうするためには、エネルギーが必要ひつようです。そのエネルギーを、わたしたちはご飯 はんを食べることで体に取り込んと こ でいます。お米やパンの中に多く含まふく れているデンプンは、とうしつ呼ばよ れるものの仲間なかまで、人間の体の大事だいじ栄養えいようもとです。砂糖さとうも、このとうしつ仲間なかまです。デンプンも砂糖さとうも、いちばん小さいたん糖類とうるいというのものに分解ぶんかいされて体に吸収きゅうしゅうされ、わたしたちのエネルギーになりますが、のう神経しんけいは、たん糖類とうるい一種いっしゅであるブドウ糖   とうだけしかエネルギーとして利用りようできません。つまり、のう神経しんけい働かはたら せるために、とうしつはなくてはならないものなのです。のう神経しんけいは、砂糖さとうのおかげで、さっと動くうご ことができるというわけです。
 最近さいきんでは「太る」とか、「糖尿とうにょうびょうになる」とか、「虫歯むしばになる」などと言われて、ちょっと悪者わるもの扱いあつか 砂糖さとうですが、じつはわたしたちにとってはなくてはならない調味ちょうみりょうです。むかしのヨーロッパでは、栄養えいよう豊富ほうふくすりとして使わつか れていたこともありました。むかし砂糖さとうは、現在げんざい石油せきゆのように輸入ゆにゅうしなければならない高価こうか食品しょくひんだったのです。また、日本でも、江戸えど時代じだいごろから砂糖さとう輸入ゆにゅう始めはじ ましたが、最初さいしょのころ、砂糖さとうはやはりくすりとして高い値段ねだん輸入ゆにゅうされていました。
 どうして砂糖さとう輸入ゆにゅうしなければならなかったかというと、砂糖さとう最初さいしょ、サトウキビから作られていたからです。サトウキビというのはイネ科の植物しょくぶつで、熱帯ねったい亜熱帯あねったいなどの暑いあつ 地方でしか栽培さいばいできないので、ヨーロッパなどでは作ることができませんでした。日本では、現在げんざい沖縄おきなわ南西諸島なんせいしょとうで作られています。
 サトウキビは、高さが人間のばいぐらい、くきの太さが手首ぐらいの、竹とススキを足して二で割っわ たような姿すがたをしています。
 サトウキビは暑いあつ 地方でしかとれなかったので、ヨーロッパで力
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のあったスペインやポルトガル、イギリスやフランスなどは、そういう暑いあつ 地方を自分たちの植民しょくみん地にしました。そして、その地方の人々や、アフリカから奴隷どれいとして連れつ てきた人たちを働かはたら せて、砂糖さとうを作らせたのです。
 しかし、そういう植民しょくみん地を持たも ない国は、サトウキビ以外いがいのものから砂糖さとうを作る研究けんきゅう進めすす ました。そして、今のドイツであるプロイセンの研究けんきゅうしゃが、サトウダイコンにも砂糖さとう含まふく れていることを発見はっけんしました。フランスのナポレオンがサトウダイコンの栽培さいばいに力を入れると、砂糖さとうはヨーロッパ中に広まりました。
 サトウダイコンは、テンサイやビートとも呼ばよ れ、カブに植物しょくぶつで、このから砂糖さとうをとることができます。サトウキビと違っちが て、涼しいすず  気候きこうでよく育つそだ ので、日本では北海道で栽培さいばいされています。ロシア民話みんわに出てくるカブは、たいていはこのサトウダイコンのことです。
 現在げんざい砂糖さとうやくわりは、やはりサトウキビから作られています。残りのこ の三わりが、サトウダイコンから作られています。また、サトウカエデのみきあなけ、そこから出てくるえき集めあつ 煮詰めにつ たものがメープルシロップで、カナダのものが有名ゆうめいです。
 「宿題しゅくだいしなさい。」と言われて、「ちょっと待っま て。おやつを食べてから。」というのは、のう栄養えいよう与えあた てよく働くはたら ようにするという意味いみで正しいことです。「はら減っへ てはいくさはできぬ」と言いますが、それはのうにとっても同じです。
 砂糖さとうは今、サトウキビやサトウダイコンやサトウカエデから取れと ますが、将来しょうらい品種ひんしゅ改良かいりょう進んすす で、ニンジンやゴボウやショウガからも取れると  ようになるかもしれません。 
「どうですか。ショウガさん。」
「さあ、どうでしょうが。」
 言葉ことばの森長文ちょうぶん作成さくせい委員いいん会(τ)
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