長文集  3月4週  ○薬だった砂糖  se-03-4
    毎日1ページ音読しましょう。漢字はふりがなをつけずに読めるようにしておきましょう。  2014/12/14 12:51:05
 時計が動くには電池が必要なように、私た
ちが生きて活動するためには、エネルギーが
必要です。そのエネルギーを、私たちはご飯
を食べることで体に取り込んでいます。お米
やパンの中に多く含まれているデンプンは、
糖質と呼ばれるものの仲間で、人間の体の大
事な栄養の素です。砂糖も、この糖質の仲間
です。デンプンも砂糖も、いちばん小さい単
糖類というのものに分解されて体に吸収さ 
れ、私たちのエネルギーになりますが、脳や
神経は、単糖類の一種であるブドウ糖だけし
かエネルギーとして利用できません。つま 
り、脳や神経を働かせるために、糖質はなく
てはならないものなのです。脳や神経は、砂
糖のおかげで、さっと動くことができるとい
うわけです。
 最近では「太る」とか、「糖尿病になる」
とか、「虫歯になる」などと言われて、ちょ
っと悪者扱いの砂糖ですが、じつは私たちに
とってはなくてはならない調味料です。昔の
ヨーロッパでは、栄養豊富な薬として使われ
ていたこともありました。昔、砂糖は、現在
の石油のように輸入しなければならない高価
な食品だったのです。また、日本でも、江戸
時代ごろから砂糖を輸入し始めましたが、最
初のころ、砂糖はやはり薬として高い値段で
輸入されていました。
 どうして砂糖を輸入しなければならなかっ
たかというと、砂糖は最初、サトウキビから
作られていたからです。サトウキビというの
はイネ科の植物で、熱帯や亜熱帯などの暑い
地方でしか栽培できないので、ヨーロッパな
どでは作ることができませんでした。日本で
は、現在は沖縄と南西諸島で作られています

 サトウキビは、高さが人間の背の倍ぐらい
、茎の太さが手首ぐらいの、竹とススキを足
して二で割ったような姿をしています。
 サトウキビは暑い地方でしかとれなかった
ので、ヨーロッパで力∵のあったスペインや
ポルトガル、イギリスやフランスなどは、そ
ういう暑い地方を自分たちの植民地にしまし
た。そして、その地方の人々や、アフリカか
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ら奴隷として連れてきた人たちを働かせて、
砂糖を作らせたのです。
 しかし、そういう植民地を持たない国は、
サトウキビ以外のものから砂糖を作る研究を
進めました。そして、今のドイツであるプロ
イセンの研究者が、サトウダイコンにも砂糖
が含まれていることを発見しました。フラン
スのナポレオンがサトウダイコンの栽培に力
を入れると、砂糖はヨーロッパ中に広まりま
した。
 サトウダイコンは、テンサイやビートとも
呼ばれ、カブに似た植物で、この根から砂糖
をとることができます。サトウキビと違っ 
て、涼しい気候でよく育つので、日本では北
海道で栽培されています。ロシア民話に出て
くるカブは、たいていはこのサトウダイコン
のことです。
 現在、砂糖の約七割は、やはりサトウキビ
から作られています。残りの三割が、サトウ
ダイコンから作られています。また、サトウ
カエデの幹に穴を開(あ)け、そこから出て
くる液を集めて煮詰めたものがメープルシロ
ップで、カナダのものが有名です。
 「宿題しなさい。」と言われて、「ちょっ
と待って。おやつを食べてから。」というの
は、脳に栄養を与えてよく働くようにすると
いう意味で正しいことです。「腹が減っては
戦(いくさ)はでき ぬ」と言いますが、そ
れは脳にとっても同じです。
 砂糖は今、サトウキビやサトウダイコンや
サトウカエデから取れますが、将来、品種改
良が進んで、ニンジンやゴボウやショウガか
らも取れるようになるかもしれません。 
「どうですか。ショウガさん。」
「さあ、どうでしょうが。」
 言葉の森長文(ちょうぶん)作成委員会(
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