1.【1】「ハッピバースデートゥーユー。」
2.お
誕生日が来るたび、
私はお母さんから自分の生まれた時のお話を聞きます。毎年同じ話を聞いても、なぜかまた聞きたくなるのです。お母さんは、
3.「あなたが生まれたときはねえ。」
4.となつかしそうな顔をします。【2】そして、
5.「なかなか
逆子がなおらなくて、
逆子体操をいっしょうけんめいしたけれど、直前までなおらなかったの。でも、生まれそうになっておなかが
痛くなって
病院に行くと、なぜかくるっとなおっていたのよ。」
6.と
笑います。【3】
私は、赤ちゃんがおなかの
羊水の中でくるっとシンクロナイズドスイミングみたいにまわっているのを
想像します。
7. ときどき、お父さんも話に入ってきて、
8.「あの時は
初めての
体験だったから、お父さんもあたふたしたよ。【4】お母さんは
痛い、
痛いと言うし、
呼び出しベルを
押してもお
医者さんがなかなか来てくれないし。 生まれてきちゃったらどうしようと生きた心地がしなかったよ。」
9.などと早口でまくし立てます。【5】その
様子を見ると本当にあせっていた
様子が
想像できます。
10. おばあちゃんにも聞きました。
11.「それがねえ、いとこのけいちゃんやしんちゃんと
比べても、
信じられないくらい大きな
産声だったのよ。【6】おばあちゃんたちは
廊下で今か今かと
待っていたのだけれど、
厚い分べん室の
扉をつきぬけるような元気なオギャーだったわよ。」
12.と
大笑いしていました。【7】そして
13.「先生や
看護師さんが、もう目をあいてますよと言ったのも
忘れられないわねえ。」
14.と
付け加えました。すると、お母さんたら
15.「そうそう。それからね、生まれたとたん、ぴゅーっとオシッコしたんだったわ。」
16.などと言うのです。【8】
私はこの話だけははずかしいので、いやだ∵なあと思います。
17.
去年まではあまりわからなかったけれど、今はこんな風に
私の生まれたときの話をみんなが
覚えていてくれて、聞かせてくれるというのは
幸せなことだなあと思います。【9】そして生まれたとき、みんなに
見守られていたのだなあとあたたかい
気持ちになります。ときどき、お父さんやお母さんに
反抗したり、わがままなことを言ったりしてしまう
私ですが、この話を思い出すと、やっぱりお父さんとお母さんの子でよかったなあと思います。【0】
18.(
言葉の森
長文作成委員会 φ)