長文集  2月3週  ★そのころ、パストゥールは(感)  se-02-3
    毎日1ページ音読しましょう。漢字はふりがなをつけずに読めるようにしておきましょう。  2012/06/15 08:09:23
 【1】そのころ、パストゥールは、ニワト
リのコレラを研究していました。かれは犯人
が8の字のかたちをした細菌であることをつ
きとめていました。毎日準備したスープの中
で、この細菌を培養することができたからで
す。
 【2】一八七九年の夏の休暇をパストゥー
ルは故郷のアルボアですごしました。パリに
帰ってきたとき、培養液のことをすっかり忘
れていたことに気がつきました。何週間も放
っ(ほう )たままにしていたのです。【3
】かれは助手にそれをすてるように命じまし
たが、ふと思いなおしてともかくニワトリに
注射してみるようにいいました。細菌はひょ
っとしたら、まだ毒性をもっているかもしれ
ません。
 ところがどうでしょう。ニワトリは、コレ
ラにかかりませんでした。【4】実験をくり
かえして、こんどは新しいとても強力な培養
液を注射してみました。するとおどろいたこ
とに、ほかのニワトリは病気になったのに、
古い培養液を注射しておいたニワトリは、病
気にかかりませんでした。
 【5】長いあいだにやしなわれた直感と、
知識と、それに偶然も味方して、パストゥー
ルはその生涯でもっとも重大な発見をするこ
とになったのです。
 パストゥールは、ジェンナーの天然痘のワ
クチン接種から百年ののちに、新しいかたち
の予防接種法を発見しました。【6】古くな
ったコレラ菌の培養液を注射されたニワトリ
は、この病原菌のはいっている新しい培養液
に抵抗することができたのです。この発見に
よって、医学全体が新しく生まれかわること
になりました。
 まず獣医たちがパストゥールの仕事を絶賛
しました。
 【7】ニワトリコレラを克服したかれは、
ふたたび炭疽病に興味をしめしました。ニワ
トリコレラで幸運がかれにあたえてくれたこ
とを、こんどは自分の力でやってみるのです
。しっかりとした方法で、培養液の毒性をや
わらげようとしました。∵
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 【8】炭疽菌のはいっている培養液を、摂
氏四十三度で八日間加熱したあとならば、こ
の培養液を羊、ウサギ、モルモットに注射し
ても、動物は発病しません。これらの動物の
体は、弱められた細菌によって予防されたの
です。【9】この弱められた細菌は、いわ 
ば、もとの仲間をうらぎって体の味方をする
、二重スパイの役割をえんじました。ですか
ら、あとになって「猛毒」な炭疽菌を注射し
ても、平気でいることができるのです。【0

 こうしてパストゥールは、動物に炭疽病の
ワクチンを接種する方法を見つけだしました

 
 「細菌と戦うパストゥール」(ブラーノ=
ラトゥール)偕成社