長文集  2月1週  家族でおなべ あったかい  se-02-1
    毎日1ページ音読しましょう。漢字はふりがなをつけずに読めるようにしておきましょう。  2014/12/14 12:09:32
【1】「もうお肉取ってもいい?」 
 十月に入るころから、ぼくのうちでは日曜
日の夕飯はほとんどなべ料理です。毎週とな
ると、あきるのではないかと思われそうです
が、なべ料理と言ってもいろいろあるのであ
きることはありませ ん。【2】ぼくのお父
さんは九州の博多の出身なので、 
「やっぱり水炊きが一番うまいな。」 
と、いつも胸を張っています。やわらかい鶏
(とり)肉と、ものすごくおいしいスープを
味わうとぼくもそうだなあと思います。 
 でも、今夜はお姉ちゃんがリクエストした
「かいせんキムチな べ」です。【3】かい
せんというのは、海でとれる魚や貝のことで
すが、ぼくのうちでは「かいせん」の時も豚
バラ肉をいっしょに入れます。お母さんに聞
いた話では、キムチなべにもいろいろな辛(
から)さがあって、大人でもヒーヒー言うく
らい辛(から)い本場のチゲなべから、中辛
(ちゅうから)マイルドなキムチなべまでラ
ンクがあるそうです。【4】うちは、ぼくが
まだあまり辛(から)いのは食べられないの
で中辛(ちゅうから)マイルドですが、五年
生になったら、辛口に挑戦したいと思ってい
ます。
 【5】なべをやると、部屋中があたたかい
蒸気に包まれて、エアコンもいりません。暑
がりのお姉ちゃんは、半そでになってしまう
くらいです。なべに材料を順番に入れたり、
煮えたものを教えたりする人を「なべ師」と
いうそうですが、うちのなべ師はお父さんで
す。【6】お父さんはみんなに、 
「長ネギはまだだ。いいと言ってからだ。」
 
「白菜がとろとろになったぞ。」 
「豆腐をくずさないように取れよ。」 
「そのはまぐりは、身が取れているぞ。」 
「よし、そろそろ雑炊だな。」 
などと指図します。【7】その様子はちょっ
といばっていて、まるで会社の部長とか社長
みたいです。でも、お父さんの言うとおりに
やる∵と絶対失敗しないのでプロだな、と思
います。 
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 なべ料理の時は、いつもの夕飯よりみんな
おしゃべりな気がします。【8】ぼくがそう
言うと、お母さんは、 
「一つのなべをみんなでつつくから、連帯感
が生まれるのよ。」 
と言いました。その時ちょうどおねえちゃん
が、
「見て、この白菜も連帯感が生まれてるよ。
」 
と、キムチのスープで赤くなった白菜をつま
みあげました。【9】それは、はしっこがつ
ながっていて、ぼくの家族と同じく四切れが
万国旗のように連なっていました。お母さん
はあせって、 
「連帯感が大事!」 
とごまかしました。湯気の向こうでお父さん
も笑っていました。【0】

(言葉の森長文(ちょうぶん)作成委員会 
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