1.
伝書バトは、
信頼のおける
郵便配達員のようです。
伝書バトに
届けてもらう手紙は、足につけた小さな
筒の中に入れたり、
背中にくくりつけたりします。
伝書バトは、
託された手紙を、遠く
離れた
相手のもとへ
届けることができます。二百キロメートルぐらいの
距離を
飛ぶのが
普通ですが、時には千キロメートルも
離れた
場所まで
飛ぶこともあります。千キロメートルというと、だいたい東京から北海道、
又は東京から九
州ぐらいまでの
距離になります。これほど
離れた
相手先に、
間違わずにたどりつける
能力にはおどろきます。
2. しかし、こんなに
優秀な
伝書バトにも弱点があります。それは、いつも同じ
届け先にしか手紙を
運べないことと、あまり
重いものは
運べないことです。
伝書バトがめざすのは、手紙のあて先に書かれた
住所ではなく、自分が生まれたハト
小屋です。つまり、
伝書バトの手紙の
配達は、
帰巣本能を
利用したものなのです。
3. 地図も
持たずに何百キロも
離れた地点に
正確にたどりつくのは、人間にとっては、たいへん
難しいことです。
伝書バトは、なぜ自分の
巣のある
場所に
迷わずに帰ることができるのでしょう。かつては、地上に見える
目印と、
太陽の
場所、それに
地球の
磁気をたよりに
飛び、夜になると星を
目印に
進むのだろうと言われてきました。
最近の
研究によると、
伝書バトの
方向感覚は、すぐれた
嗅覚のおかげでもあると言われています。
4. 遠くからでも、
迷わずに自分の
巣に帰ることができるハトの
性質を、
大昔から人間は知っていました。
古代エジプトでは、
漁船が
伝書バトを
使って、
漁の
成果を海から
陸に知らせていたそうです。
一度放たれた
伝書バトは、休むことなく何百キロも
飛び続けるため、電話やメールがない
時代は、
最も速い通信手段でした。∵
近代にいたるまで、
伝書バトは、
軍事用や
報道用の
通信手段として数多く
使われてきました。また、
離れ小島などの
輸送が
難しい地域に、
薬や
血清を
運んで、
医療の
手助けをしていた
伝書バトもいました。
5.
現在では、
通信手段として
伝書バトが
利用されることはほとんどなくなり、スポーツとしてのハトのレースが
開催されている
程度です。本来、
帰巣本能にすぐれているハトですが、近年になって、レースに出たハトが
戻ってこないことがだんだん
増えてきました。
優秀なはずのハトが、なぜか
途中で
迷子になってしまうのです。この
原因は、はっきりとはわかっていませんが、
携帯電話などの
電磁波が
影響しているという
説があります。また、ハトの
品種改良を行なった
際、スピードばかりを
重視して、
方向感覚がにぶってしまったのではないかとも言われています。
6. それにしても、
伝書バトの
郵便配達には、ガソリンなどの
燃料は一切
使わないし、切手も
不要です。ごほうびに
豆をいくつか
与えれば
満足してくれる
伝書バトは、
環境にやさしい、すばらしく
優秀な
郵便配達員ではないでしょうか。
7. ハトと同じように
身近な鳥に、スズメやカラスがいます。どうして
伝書スズメや
伝書カラスがいないかというと、スズメに手紙をつけると
重くて前にすずめないからです。また、カラスに手紙をつけると、
途中で
ゴミ箱に
寄り、手紙のことを
忘れてしまうからっす。
8.
言葉の森
長文作成委員会(κ)