長文集  1月4週  ○伝書バト  se-01-4
    毎日1ページ音読しましょう。漢字はふりがなをつけずに読めるようにしておきましょう。  2014/12/14 12:50:51
 伝書バトは、信頼のおける郵便配達員のよ
うです。伝書バトに届けてもらう手紙は、足
につけた小さな筒の中に入れたり、背中にく
くりつけたりします。伝書バトは、託された
手紙を、遠く離れた相手のもとへ届けること
ができます。二百キロメートルぐらいの距離
を飛ぶのが普通ですが、時には千キロメート
ルも離れた場所まで飛ぶこともあります。千
キロメートルというと、だいたい東京から北
海道、又は東京から九州ぐらいまでの距離に
なります。これほど離れた相手先に、間違わ
ずにたどりつける能力にはおどろきます。
 しかし、こんなに優秀な伝書バトにも弱点
があります。それは、いつも同じ届け先にし
か手紙を運べないことと、あまり重いものは
運べないことです。伝書バトがめざすのは、
手紙のあて先に書かれた住所ではなく、自分
が生まれたハト小屋(ごや)です。つまり、
伝書バトの手紙の配達は、帰巣本能を利用し
たものなのです。
 地図も持たずに何百キロも離れた地点に正
確にたどりつくのは、人間にとっては、たい
へん難しいことです。伝書バトは、なぜ自分
の巣のある場所に迷わずに帰ることができる
のでしょう。かつて は、地上に見える目印
と、太陽の場所、それに地球の磁気をたより
に飛び、夜になると星を目印に進むのだろう
と言われてきました。最近の研究によると、
伝書バトの方向感覚は、すぐれた嗅覚のおか
げでもあると言われています。
 遠くからでも、迷わずに自分の巣に帰るこ
とができるハトの性質を、大昔から人間は知
っていました。古代エジプトでは、漁船が伝
書バトを使って、漁の成果を海から陸に知ら
せていたそうです。一度放たれた伝書バトは
、休むことなく何百キロも飛び続けるため、
電話やメールがない時代は、最も速い通信手
段でした。∵近代にいたるまで、伝書バトは
、軍事用や報道用の通信手段として数多く使
われてきました。また、離れ小島(こじま)
などの輸送が難しい地域に、薬や血清を運ん
で、医療の手助けをしていた伝書バトもいま
した。
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 現在では、通信手段として伝書バトが利用
されることはほとんどなくなり、スポーツと
してのハトのレースが開催されている程度で
す。本来、帰巣本能にすぐれているハトです
が、近年になって、レースに出たハトが戻っ
てこないことがだんだん増えてきました。優
秀なはずのハトが、なぜか途中で迷子になっ
てしまうのです。この原因は、はっきりとは
わかっていませんが、携帯電話などの電磁波
が影響しているという説があります。また、
ハトの品種改良を行なった際、スピードばか
りを重視して、方向感覚がにぶってしまった
のではないかとも言われています。
 それにしても、伝書バトの郵便配達には、
ガソリンなどの燃料は一切使わないし、切手
も不要です。ごほうびに豆をいくつか与えれ
ば満足してくれる伝書バトは、環境にやさし
い、すばらしく優秀な郵便配達員ではないで
しょうか。
 ハトと同じように身近な鳥に、スズメやカ
ラスがいます。どうして伝書スズメや伝書カ
ラスがいないかというと、スズメに手紙をつ
けると重くて前にすずめないからです。また
、カラスに手紙をつけると、途中でゴミ箱に
寄り、手紙のことを忘れてしまうからっす。

 言葉の森長文(ちょうぶん)作成委員会(
κ)