1. 【1】ワインはグレープジュースですが、
姿をかえたグレープジュースであることを、みなさんはよく知っていますね。グレープジュースはあまいのにワインはアルコールの
味がします。時間がたつと
変化するこのような
現象を、
発酵とよんでいます。
2. 【2】しかし、どうして
発酵がおこるのだろう? パストゥールの
問題はここにありました。
3. 当時の
最も偉大な
学者たちも、グレープジュースはどんな
生物のたすけもかりずに
自然にアルコールにかわると
主張していました。【3】ところがパストゥールは、グレープジュースそのものが
自然に
発酵することはけっしてないと
主張しました。べつの
役者が
舞台に
登場しているはずである、とかれはいうのです。【4】この
役者はたいへんに小さいため、
顕微鏡でしか見ることができないもので、かれは
酵母とよびました。
4. パストゥールは、
密封してあたためたグレープジュースは
発酵しないことを
証明してみせました。【5】
酵母が作用しなければ、ジュースはワインにはなれないのです。
酵母はジュースの中にふくまれる
糖を食べながらものすごいいきおいで
繁殖します。
糖を、アルコールと
炭酸ガスに
分解します。【6】つまり、アルコールというのは、小さな
生物による
糖の
消化作用の
結果なのです。
5.
病気の
問題とはちがうじゃないか、とみなさんはいわれるかもしれません。ところが、ワインにも
病気があるのです。【7】すっぱくなったり、くさって
味がかわったりすることです。
発酵がひとりでにおこると
信じているかぎり、ワインに
病気があることや、まして、その
病気と
戦うことができるなどと、だれも考えてみないでしょう。
6. 【8】ところがパストゥールは、これらの
病気は、いろいろな
酵母が
酵母自身をやしなうためにワインを
変化させることが
原因であることをしめしました。∵
7. 【9】パストゥールは、こうして
発酵にはそれぞれのとくべつな
酵母があって、ワインを
酢にかえたり、
牛乳をチーズに、
麦芽をビールにかえるはたらきをするのだということを
証明したのです。【0】
8.
9. 「
細菌と
戦うパストゥール」(ブラーノ=ラトゥール)
偕成社