【1】「ここは通れません。」 と菅原君が道をふさぎました。下校する時、 いつも一組の菅原君はまちぶせして私にいじ わるをします。バスを降りて、うちまでの道 がずっといっしょなので、毎日帰りに会って しまいます。 【2】オナモミの実をたくさんポケットに 入れていてそれをぶつけてきたり、たて笛( ぶえ)のふくろをふりまわしたり、本当に毎 日いやなことをします。ランドセルと背中の 間にトカゲを入れられたり、わきに下げてい る給食用のコップをとられたりもしました。 【3】帽子を上にひっぱって、ゴムをぱちん といわせるのなんかしょっちゅうです。私は 、とても悲しくなるけれど、がまんして走っ て通り過ぎます。そしてうちに着いて、お母 さんの顔を見ると涙がぽろぽろ出るのでした 。 【4】でも、お母さんは、 「菅原君はさやかとお友だちになりたいから そういうことをするのよ。今度、いっしょに 遊ぼうと言ってみたら?」 などとにっこり笑うのです。いっしょに遊ぶ だなんて絶対にいや! 私は心の中でそう思 いました。【5】そして、にくらしい菅原君 の顔を思い浮かべるとくやしい気持ちでいっ ぱいになりました。 十二月のはじめ、風の冷たい日でした。私 は靖子ちゃんや典子ちゃんたちと五、六人で 、公園でゴムとびをしていました。夢中で遊 んでいると、そこへ菅原君たちがやってきま した。【6】私は楽しかった気持ちが一気に しぼむ感じがしました。思ったとおり、菅原 君たちは列に並びもしないで、じゃまするよ うにゴムにむかって走って来ます。そして、 わざと、ピンとはったゴムにひっかかるまね をしました。【7】その時、ゴムを持ってい た私は思わず向こう側の典子ちゃんに、 「まきつけちゃおう。」 と呼びかけました。そして、菅原君たちを伸 ばしたゴムでぐるぐる巻きにしたのです。菅 原君たちはギエッと変な声を出しました。∵ 【8】身動(みうご)きができなくなった菅 |
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原君を見て、私はなんだかおかしくなって笑 い出してしまいました。みんなもゲラゲラ笑 いました。ぐるぐる巻きにされた菅原君たち も、 「ごめんなさあい。」 と笑っています。そのあとはなぜか仲良くな って大勢(おおぜい)でゴムとびをしました 。 【9】その日をさかいに、菅原君は帰り道 のいじわるをぴたりとやめました。会っても 、「おう」と言うだけで何もしてきません。 それどころか、 「おまえ、今日遊べる?」 と誘ってくるようになったのです。いつかお 母さんが言ったことは本当だったのだなあと 私は思いました。【0】 (言葉の森長文(ちょうぶん)作成委員会 φ) |