長文集  5月4週  ○地球上の二酸化炭素は  ra2-05-4
    毎日1ページ音読しましょう。漢字はふりがなをつけずに読めるようにしておきましょう。  2011/02/18 15:55:32
 【1】地球上の二酸化炭素は、大気と陸地
、海洋とのあいだを出入りしています。
 陸地の植物は、光合成による無機物からの
有機物生産(総一次生産といいます)の結果
、一年に炭素換算で一二〇〇億トンの二酸化
炭素を大気からとりこんでいますが、同時に
呼吸のために一一九六億トンを排出していま
す。【2】森林破壊などの土地利用変化で一
六億トンを排出していますが、植林などをふ
くむ陸地での吸収で二六億トンの炭素を大気
から固定しています。つまり陸地では、降水
中の炭素量二億トンもふくめて一六億トンを
大気からとりこんでいることになります。海
洋は、さしひき一六億トンを大気から吸収し
ています。
 【3】一方、石油、石炭など化石燃料の燃
焼によって、六四億トンの二酸化炭素が排出
されますが、吸収はありません。その結果、
自然のバランスをこえて、さしひき三二億ト
ンの炭素が排出されて大気中の二酸化炭素を
増やしつづけ、これが地球温暖化をひきおこ
しているとみられます。
 【4】バイオマスは、木を切って燃やして
二酸化炭素を排出しても、植林をすれば、い
ずれはまた、大気中の二酸化炭素を光合成で
固定します。このようにバイオマスは、大気
の炭素量に影響をあたえないことから、カー
ボン・ニュートラルであるとみなされていま
す。【5】バイオマスは、温室効果ガスの排
出がないカーボン・ニュートラルなエネルギ
ー源として、地球温暖化対策の重要な柱のひ
とつになっています。
 世界の多くの国々は、バイオマスのエネル
ギー利用で二酸化炭素の排出を減らす政策を
すすめています。【6】二〇〇二年の「持続
可能な開発に関する世界首脳会議」では、今
後の実施計画のなか で、バイオマスをふく
む再生可能エネルギーの利用促進が合意され
ました。
 日本でも、同年に政府がバイオマス・ニッ
ポン総合戦略を作成して、各地にバイオマス
タウンをつくるなど、バイオマス利用をすす
めています。
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 【7】バイオマスは太陽エネルギー、小水
力、風力、地熱などとならんで日本では新エ
ネルギーとよばれ、化石エネルギーや原子力
に対して新しいエネルギー源とされています
が、もともとこれらのエネ∵ルギーは昔から
使われてきたものを新しい技術でより効率よ
く、多様な形で利用しようとするものです。
 【8】消費してもつぎつぎとまた生みだす
ことができる資源を、再生可能資源とよんで
います。再生可能エネルギー源は、バイオマ
スのほかに太陽光や風力、水力などいろいろ
な自然エネルギーがありますが、工業原料に
もなるのはバイオマスだけなので、エネルギ
ーと原料と二重に期待されているわけです。
 【9】海外でも、バイオマスは化石エネル
ギーの消費を減らす重要な柱とみなされてい
ます。国際エネルギー機関(IEA)は、二
〇二〇年の世界エネルギー需要予測をしてい
ます。図のように、バイオマスと廃棄物の割
合は、世界のエネルギー需要の約一〇%にな
っています。【0】図では、太陽エネルギー
、風力などがその他の再生可能なエネルギー
になっており、バイオマスも化石系のものを
ふくむ廃棄物といっしょにしめされています
。そして、再生可能エネルギー全体のなかで
は、バイオマスが約七五%を占めることにな
ると予測されています。
 バイオマスを生かすには、その特性をフル
に利用することが大切です。物質としてくり
かえし使えばそれだけ、生産に投入したエネ
ルギーはより有効利用できますし、うまく組
み合わせると全体としての経済性も高まりま
す。
 バイオマスの強みを生かして、日本の資源
を徹底的に活用し、化石資源を節約して、地
球環境をよくしたいものです。

(木谷収『バイオマスは地球環境を救えるか
』による)