ヌルデ の山 11 月 3 週
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○自由な題名
○寒い日や雨の日


★科学的態度(感)
 【1】科学的態度などというと、たいへんむずかしいことのように思いがちである。しかし、日常の生活におけるちょっとした心がけ次第でこの態度を身につけることができるものである。では、どのようなことを科学的態度というのであろうか。
 【2】まず、ものをよく見るということである。よく見ることができれば、何かふに落ちないことがあったとき「はてな。」「変だな。」と思うことができる。これが、科学的態度への出発点なのである。
 【3】ところで、われわれは、いつでもものをよく見ているようであるが、実は案外よく見ていないのである。たとえば、タイはどんな色をしているかとたずねると、たいていの人は赤いと言う。はたしてそうであろうか。【4】絵にかいたえびす様の持つタイは、確かに赤い。しかし、ほんとうのタイは、それとは異なった色をしている。むらさき色に近い色で、生きているときは、さらに緑がかっている。【5】もし、それを見る機会がないとしても、さかな屋の店頭にあるタイなら見ることができるだろう。タイは赤いという習慣的な考えで赤いと思っているだけである。
 自然界に実際にあるもの、実際に起こっている現象は、決して単純に判断できるものではない。【6】習慣や常識にとらわれていたのでは正しくものを見ることはできない。だから、自分の目を見開いて、しっかりと自分の目でたしかめる態度が必要である。
 【7】それでは、ものをよく見て、「はてな。」と感じさえすれば、それでいいのであろうか。問題は、「はてな。」と感じたとき、それだけで終わらせるかどうかという点にある。そのとき、「どうしてだろう。」と思い、それについて考えてみるようにしなければいけない。【8】その場合、自分の持っている知識で説明がつかないときにはその疑問とする点について、すぐ実験したり、調べたりしてみることである。
 ところが、実験などというと敬遠されがちである。が、実験を生活に取り入れることは、興味深いことなのである。【9】たとえば、土をほり起こしているうちに、スコップがみょうに重くなったりする。そこで、草をひとつかみちぎって、こびりついている土をこす∵り取ってみる。すると、軽くなる。
 そこで、土がこびりつかないようにしたら仕事が楽だろうということに気づく。【0】家に帰ってさびを取り、油を引いておく。翌日からスコップは軽くなるにちがいない。そんな簡単な実験でいいのである。
 日常の生活では、これと似たようなことに出合う場合が多いものである。そんなとき、疑問をいだいたら、そのままにほうっておかないで、実験したり調べたりすることがたいせつである。
 科学的態度とは、疑問を実験や調査によって解決しようとする態度である。これは、科学を研究する者にとって必要な心がけであるばかりでなく、人間たちだれしもが身につけておく必要のある生活態度であるといえよう。