長文集  12月2週  ★九二年度末の時点で(感)  nngu-12-2
    毎日1ページ音読しましょう。漢字はふりがなをつけずに読めるようにしておきましょう。  2014/09/11 12:10:52
 【1】九二年度末の時点で、この国には一
万九四二個もの規制があったといわれる。規
制は、政官業癒着の構造を磐石のものとする
主因でもある。近時、「規制緩和」の大合唱
が巷間にこだまするようになったが、すべて
の規制が「悪」というわけでは必ずしもな 
い。
 【2】規制の中には、安全、環境保全、弱
者保護、経済的不正の防止、景観保全、自然
保護などをねらいとする「必要」な規制が数
多くある。【3】しかし、あってもなくても
いいような規制、健全な自由競争を阻害する
規制、不必要にきびしすぎる規制、利権の温
床となる規制など、緩和ないし撤廃すること
が望ましい規制が、少くとも過半を占めてい
るとみてよい。
 【4】そうした規制の多くは、中央官庁の
許認可権限につらな り、許認可権限がある
からこそ、中央官庁は民間企業へのにらみを
利かすことができる。【5】とどこおりなく
許認可を獲得するためには、好むと好まざる
とにかかわらず民間企業は、監督官庁からの
「天下り」を受け入れざるをえないといわれ
る。また、ここ一番というときには、族議員
のたすけを借りるのがいちばん手っとり早か
った。
 【6】要するに、許認可行政の肥大化こそ
が、政官業三者の癒着を強固なものとする接
着剤の役割を果たしたのである。【7】「 
官」と「業」とのあいだに橋をかけるのが「
政」の役割であり、その役割を果たしてきた
うえで、ひとかどの報酬を「政」が「業」に
要求するのは、少なくともついこのあいだま
では常識と目されていた。
 【8】あらためて指摘するまでもなく、許
認可権限を核とする政官業癒着の構造こそが
、市場を不透明かつ不公正なものにする元凶
のひとつに数えられる。とはいえ、先に指摘
したように、あらゆる許認可が「悪」という
わけではない。【9】問題なのは、許認可を
めぐっての族議員の暗躍が、行政を不透明化
し、民間企業に途方もない時間的コストと経
済的コスト(そのツケは消費者に回される)
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を支払わせ、許認可のサジ加減の次第が行政
を不公正にするという点である。【0】もし
仮に許認可権限がまったくフェアに執行され
るならば、規制の緩和・撤廃の大合唱が起き
たりはしないはずである。∵

(佐和隆光()『平成不況の政治経済室』)