1.【1】「ドタッ、バタッ」
2. という音が聞こえ、
私は一体何が出てくるのだろうと、
嬉しいよりも
怖くなってしまった。
3. これまでで一番印象に残っているプレゼントは、七
歳の
誕生日のときのことだ。なにしろ、品物でも食べ物でもなく、生き物を
贈られたのだから。
4. 【2】両親が買ってきたのは、アメリカンショートヘアーの
子猫だった。
私を
驚かせようと直前まで
隠していたようだが、ハウスの中で元気よく動き回る音が、
廊下の向こうから
響いてきていた。
5. 【3】まだ小さかった
私にとって、それは未知の
存在に対する
恐怖となり、父が運んでくるころにはその不安は
頂点に達していた。喜ぶとばかり思っていた父は、
私が今にも泣きそうな顔になっているのを見て、
困ってしまったと言っていた。
6. 【4】ハウスから出てきた
子猫は、想像よりはるかに小さかった。まるで新しい住みかを確かめるかのように、まん丸の
瞳で周囲をきょろきょろと見回している。よちよちとテーブルを歩き回っては、こてんと転んだりする。【5】そのかわいらしい
姿を見て、
私は「この子の
面倒は
私が見てあげなきゃ」と決意した。
7. 「ロビン」という名前も、
私が
悩みに
悩んでつけたものだ。しかし、そんなロビンとの
暮らしは
波乱の連続で、
私は生き物を飼うことの大変さを知った。【6】食事やトイレのしつけはもちろんのこと、
壁紙をボロボロにされたり、お
風呂に入れるたびに
大騒ぎになったり、
脱走したまま二日間も帰ってこず、心配で
倒れそうになったこともある。
8. さらに、
抱っこしてやろうと手を
伸ばせば、するりと
逃げ出してしまうのだ。【7】いつでも手にとれるぬいぐるみとは
違うのだと
痛感させられる。それでいて、自分が
お腹が空いたときには体をこすりつけて
露骨に
甘えてくるのだから、なんとも
憎らしい。∵
9. 学校でも飼育係をした経験があるが、その仕事は気が向いたときにエサをやったり、先生の指示があったときに
水槽を
洗ったりする程度だった。
10. 【8】ロビンはもうすっかり、大切な家族の一員である。だが今にして思えば、あの七
歳の
誕生日に両親からプレゼントされたのは、もっと大きな
価値のあるものだったのかもしれない。
11. 【9】つまり、生き物を世話することでたくさんの思い出や教訓を得る、という機会だ。こうした自分の人生に生きてくるものこそ、人間にとって本当にありがたいプレゼントなのではないかと思った。【0】
12.(言葉の森長文作成委員会 ι)