長文集  7月1週  驚いたプレゼント  ni-07-1
    毎日1ページ音読しましょう。漢字はふりがなをつけずに読めるようにしておきましょう。  2021/10/15 17:26:11
【1】「ドタッ、バタッ」
 という音が聞こえ、私は一体何が出てくる
のだろうと、嬉しいよりも怖くなってしまっ
た。
 これまでで一番印象に残っているプレゼン
トは、七歳の誕生日のときのことだ。なにし
ろ、品物でも食べ物でもなく、生き物を贈ら
れたのだから。
 【2】両親が買ってきたのは、アメリカン
ショートヘアーの子猫だった。私を驚かせよ
うと直前まで隠していたようだが、ハウスの
中で元気よく動き回る音が、廊下の向こうか
ら響いてきていた。
 【3】まだ小さかった私にとって、それは
未知の存在に対する恐怖となり、父が運んで
くるころにはその不安は頂点に達していた。
喜ぶとばかり思っていた父は、私が今にも泣
きそうな顔になっているのを見て、困ってし
まったと言っていた。
 【4】ハウスから出てきた子猫は、想像よ
りはるかに小さかっ た。まるで新しい住み
かを確かめるかのように、まん丸の瞳で周囲
をきょろきょろと見回している。よちよちと
テーブルを歩き回っては、こてんと転んだり
する。【5】そのかわいらしい姿を見て、私
は「この子の面倒は私が見てあげなきゃ」と
決意した。
 「ロビン」という名前も、私が悩みに悩ん
でつけたものだ。しかし、そんなロビンとの
暮らしは波乱の連続で、私は生き物を飼うこ
との大変さを知った。【6】食事やトイレの
しつけはもちろんのこと、壁紙をボロボロに
されたり、お風呂に入れるたびに大騒ぎにな
ったり、脱走したまま二日間も帰ってこず、
心配で倒れそうになったこともある。
 さらに、抱っこしてやろうと手を伸ばせば
、するりと逃げ出してしまうのだ。【7】い
つでも手にとれるぬいぐるみとは違うのだと
痛感させられる。それでいて、自分がお腹が
空いたときには体をこすりつけて露骨に甘え
てくるのだから、なんとも憎らしい。∵
 学校でも飼育係をした経験があるが、その
仕事は気が向いたときにエサをやったり、先
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生の指示があったときに水槽を洗ったりする
程度だった。
 【8】ロビンはもうすっかり、大切な家族
の一員である。だが今にして思えば、あの七
歳の誕生日に両親からプレゼントされたの 
は、もっと大きな価値のあるものだったのか
もしれない。
 【9】つまり、生き物を世話することでた
くさんの思い出や教訓を得る、という機会だ
。こうした自分の人生に生きてくるものこ 
そ、人間にとって本当にありがたいプレゼン
トなのではないかと思った。【0】

(言葉の森長文作成委員会 ι)