長文集  4月1週  ○たとえば粗大ゴミの  na-04-1
    毎日1ページ音読しましょう。漢字はふりがなをつけずに読めるようにしておきましょう。  2017/03/14 09:55:28
 【1】青い空をジェット機が飛んでいくの
を見て、「樋口さん、どうしているかなあ」
と考える。
 樋口さんが引っ越していったのは、つい先
月のことだ。何度も同じクラスになった親友
だから、一緒に卒業したかったけれど、それ
はできなかった。【2】お父さんの仕事の都
合で、ハワイに行ってしまったのだ。
 同じ日本の中ならともかく、海を越えた遠
くにまで行ってしまうというのは、正直実感
が持てなかった。驚きすぎて「ハワイってど
このハワイ?」などと言ってしまったほどだ

 【3】樋口さんも不安でいっぱいだったよ
うだ。
「言葉が通じないんだから、きっと新しい友
達なんてできないよ……。」
 引っ越す前、ふだんは明るい彼女がそんな
弱音を吐いていたことが、今でも忘れられな
い。
 【4】なんとか樋口さんを元気づけたくて
、私は自分がハワイに旅行したときのことを
話してあげた。本当は、それはずっと小さい
ころの話で、記憶はかなりあいまいだった。
けれども、私はよいイメージばかりを思い浮
かべて、明るく自信満々に次から次へと話を
した。
 【5】言葉は通じなくても、ハワイの人は
「アロハ」の言葉ですぐに打ち解けてしまう
。体も心も大きい人が多くて、すごく安心で
きる。それに食事がおいしい。ハワイの料理
は、見た目も豪快で華やかだし、飽きること
がない。【6】何よりハワイは、日本の夏と
違って、じめじめ蒸し蒸ししない。からっと
していてとても気持ちがよい。そんなところ
で、しかも、毎日きれいな海で泳げるなんて
最高だ。
「それにね、ハワイでも日本語を勉強してい
る人がいっぱいいるんだよ。」∵
 【7】とどめとばかりに私がそう言うと、
ついに樋口さんの顔色が明るくなった。私は
そのとき、重く沈んだ樋口さんの気持ちを一
本釣りで引き上げたかのような晴れ晴れした
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気持ちになった。
 【8】ハワイにいる日本の子供たちが、故
郷の言葉を忘れないように熱心に日本語を学
んでいるという話は、昔、先生から聞いたこ
とがあった。そういう人がたくさんいるなら
、きっとすぐに仲よくなれるし、助け合うこ
とだってできるはずだ。【9】だから、私が
いなくても心配することなどないんだ……。
 私の奮闘の甲斐あって、樋口さんは元気に
ハワイへ旅立っていった。そろそろ最初の手
紙が届くころだと思う。新しい友達ができた
だろうか。それはどんな人だろうか。【0】
楽しみでもあり、ちょっぴり寂しいような思
いもある。
 一緒にいることだけが友達ではない。離れ
離れになったとして も、何かをしてあげら
れることが大切なのだ。私は、そんなことが
分かった気がした。

(言葉の森長文作成委員会 ι)