ケヤキ の山 2 月 1 週
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★じゆうなだいめい
○節分、マラソン
○ねるとき、まめまき

火事?
 【1】ぼくは、毎日六時からアニマックスでドラゴンボールを見ています。おもしろくてやめられません。その日も、ぼくはお兄ちゃんと、いつもどおりドラゴンボールを見ていました。悟空(ごくう)とピッコロ大魔王が対戦しています。手に汗握る戦いです。ぼくたちは夢中でした。
 【2】そこへ、何かがこげたような匂いが漂ってきました。ぼくは、今日の晩御飯はきっと魚だなと思いました。でも、魚にしては臭過ぎるような気がします。
「なんか変な匂いがするぞ。」
と言いながらふと台所(だいどころ)を見ると、ガスコンロからぼわっと火が出ているではありませんか。【3】ぼくたちは、
「お母(かあ)さあん。お母(かあ)さあん。大変、火事だよう。」
と、大声で二階にいるお母さんを呼びました。お母さんは、
「やだあ、魚焼いてるの忘れてた!」
と叫びながらドンドンドンと階段を転がるように降りてきました。【4】ガスコンロから燃え上がる火を見て動かなくなったお母さんは、急に、
「新聞。いらない新聞持ってきて。たくさん。早く!」
と、ぼくたちに言います。ぼくとお兄ちゃんはぶつかりあいながら新聞を取りに走りました。【5】お母さんは、
「ありがと。」
と言うと、勢いよく水を出し新聞をぬらしました。
 メラメラと火が燃えているのは、グリルという魚を焼くところと奥にあるたくさん穴の並んだところです。お母さんはまず、奥の穴の上に濡れた新聞紙を並べました。【6】次に、グリルを引き出すと、火が大きく噴き出してきました。ぼくたちはびっくりして声も出ません。お母さんはグリルの上に濡れた新聞紙を乗せると、すぐにグリルを閉めました。少し火が小さくなったような気がします。∵【7】お母さんはまた、グリルを出して濡れた新聞紙を乗せました。ぼくたちはお母さんの後ろでじっと見ています。それを何度か繰り返すとだんだん火が消えてきました。ぼくはほっとして、
「よかった。火事になるかと思ったよ。」
と言いました。
【8】「危なかったね。」
と言うお兄ちゃんの顔は、まるでおばけ屋敷から出てきたときのようでした。ぼくは、お兄ちゃんも怖かったんだなと思いました。
 お母さんは、
「やったやった。危なかったけどなんとかなるもんだね。こういうのを火事場の馬鹿力って言うんだね。」
と得意そうです。【9】怖かったけど、スリル満点でした。騒ぎが終わったときにはドラゴンボールも終わっていました。ぼくたちが、
「あーあ、ドラゴンボール見逃しちゃったよ。」
と言うと、お母さんは、
「まあ、いいじゃん。火事にならなかったんだから。」
と笑いました。【0】

(言葉の森長文(ちょうぶん)作成委員会 ω