【1】「おや。」 ファーブルは、びっくりして 立ちどまりました。小(こ)と りのすが、あったのです。【2 】すのなかには、青空のような いろをした、うつくしいたまご が六つ、おぎょうぎよくならん でいました。 「すばらしいなあ。」 ファーブルは、むねがわくわ くしました。 【3】すのなかから一つとり あげると、そっとポケットへい れました。うれしくてうれしく てたまりません。そのまま、池 のほうへいちもくさんにかけだ しました。 【4】けれど、それからしば らくたつとファーブルは、ふー ふーいきをきって、また、すの ところへはしってかえりました 。【5】そし て、さっきのた まごを、だいじそうにポケット からとりだしたのです。 「ごめんね。」 ファーブルは、たまごをそっ と、もとのところへならべてや りました。 |
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 |
【6】「ごめんね。おまえは、 ノビタキって名まえのとりなん だってね。そして、はたけのわ るいむしをたいじして、おひゃ くしょうさんをたすける、いい とりなんだってね。【7】ぼ く、いま池のそばで、きょうか いのぼくしさんにそれをおそわ ったの。ちっともしらなかった んだもの。ごめんね。」 【8】ファーブルはそういう と、ぴょこん と、とりのすに あたまをさげるのでした。 ピーチク、ピーチク……。 【9】たまごのように、まっ 青な大空では、ひばりがしきり にないていました。【0】 (二反長半(にたんおさなかば )編 白木茂著 「美しい話・ いじんの心」より) |