1. 【1】そのときでした。
2.「こらっ、おまえなんかに、
水をのまれてたまるもんか。きたならしい。むこうへいってしまえ。」
3. 【2】きんじょの
男がたけのぼうで、こじきをおいはらいました。
4. ガンジーは、もう、がまんができませんでした。
5.【3】「おじいさん、まって。ぼくが、くんであげるよ。」
6. ガンジーは、いそいで
水をくみあげると、こじきをやさしくつれもどしてきました。
7.【4】「ぼっちゃん、ありがとうございます。」
8.
年よりのこじきは、ぽろぽろなみだをこぼしながらも、さもおいしそうに
水をのみました。【5】やせた
犬も、ぺちゃぺちゃ
水をのむと、さもうれしそうにガンジーの
顔を
見あげるのでした。
9. ガンジーは、みんながじぶんを
見ているのに
気がつくと、まっかになって、
家へかけこみました。
10. 【6】ゆうごはんのあとで、ガンジーは、おとうさんにきょうのはなしをくわしくしました。ガンジーのおとうさんは、インドで
高いくらいについているやくにんでした。【7】そのおとうさんは、にこにこすると、
11.「おお、おまえは、よいことをしてくれた。かわいそうな
人をたすけるのは、
人間のつとめなんだ。よいことをするのに、しりごみしていてはいけない。【8】よくやったね。きょうのおこないは、ゆうきがあって、りっぱなものだ。おまえは、よわむしでもなければ、いくじなしでもないのだ。
大きくなっても、ただしいことをするそのゆうきをなくしてはいけない。」
12. 【9】いつも、じぶんをいくじなしだとばかり
思っていたガンジーは、はじめてそうでないことがわかりました。そして、むねが、すーっとあかるくなるのでした。【0】
13.(
二反長半編 白木茂著 「
美しい話・いじんの
心」より)