長文 9.1週
1. 【1】今日きょうは、お母さん かあ  かみ切っき てもらう日です。ぼくたち兄弟きょうだいは、お母さん かあ  かみ切っき てもらうことを、ママ床屋とこや呼んよ でいます。いつもママ床屋とこやなので、ぼくは一床屋とこやさんへったことがありません。
2.【2】「準備じゅんびできたよ。ひとりずつおいで。」
3. お風呂場ふろばからお母さん かあ  こえ響きひび ます。ママ床屋とこやは、お風呂場ふろばでおみせ開くひら のです。なつ暑いあつ のではだかでちょうどいいけれど、ふゆのママ床屋とこやはぶるぶる震えふる てしまいます。
4. 【3】ぼくは急いいそ ふく脱ぎぬ 、お風呂場ふろば飛んと でいきました。お母さん かあ  は右手にバリカンを持ちも 、ぼくを見るとにっこりしました。
5.「さあ、切ろき うか。下を向かむ ないで、ちゃんとまえを見ててね。」
6. 【4】そう言いい ながら、バリカンのスイッチを入れました。ウイーンウイーンと、バリカンの音が耳の近くちか 聞こえき  ます。ときどき髪の毛かみ け引っ張らひ ぱ れるので、ぼくは、
7.「いてっ。」
8.と、まるでカメのようにくびをすくめます。【5】お母さん かあ  は、
9.「だめだめ。まっすぐにしていないと、へんなところを切っき ちゃうよ。」
10.と言いい ます。バリカンに刈らか れた髪の毛かみ けが、パサリパサリとぼくのかた背中せなかにくっつきます。そのうち、ちくちくと刺しさ てきます。【6】からだ中かゆくてたまりません。
11.「ああ、もう限界げんかいだあ。」
12.と、ぼくが我慢がまんできなくなるころ、後ろうし かみのカットが終わるお  のです。
13.「できた、できた。じゃあ、今度こんど前髪まえがみ。さ、こっち向いむ て。」
14. ぼくは、くるりと振り向きふ む ました。【7】目をつぶり、動かうご ないようにいき止めと ます。∵
15.「はい、終わりお  頑張っがんば たね。」
16. ぼくは目を開けあ ました。お母さん かあ  は、少しすこ 離れはな てぼくを眺めなが ています。ぼくが動いうご たからへんなところを切っき てしまったのではないかと心配しんぱいになります。
17.【8】「うん。いいんじゃない。床屋とこやさんじゃないのに、なかなかうまいよね。」
18.と、お母さん かあ  言いい ました。ぼくはほっとしました。
19. シャワーで洗い流すあら なが と、ちくちくしたのが取れと てすっきりしました。【9】くもったかがみをごしごしと手で拭いふ て、ぼくのかお映しうつ てみました。いつもと違うちが ぼくのかおです。自分じぶんでもなかなか格好いいかっこう  なと思いおも ました。【0】

20.(言葉ことばの森長文ちょうぶん作成さくせい委員いいんかい ω)