1. 【1】しばさぶろうは、よろこんでくまもとの
学校へはいりました。べんきょうをはじめました。
2. けれども、おとうさんのいったとおり、がいこくのことばはたいへんむずかしいのでした。【2】がいこくの
先生が、がいこくのことばでおしえてくれるのです。さっぱりわかりません。いまのように、
字引もありません。
3. 【3】しばさぶろうは、やっぱり、いやになりました。
4.「
学校をやめて、うちへかえって、ひゃくしょうをしよう。」
5. 【4】
先生のところへいって、「
学校をやめさせてください。」といおうとしました。けれども、しばさぶろうがいうまえに、
先生からさきにききました。
6.【5】「しばさぶろうくん。
元気がありませんね。どうしたのです。」
7.「はい。その……。」
8.と、しばさぶろうは、なみだがでそうになりました。
9. 【6】じっと、こらえているうちに、ふと、
先生のつくえの
上のしゃしんが
目につきました。ぶらんこにのっている、がいこくの
子どものしゃしんです。
先生の
子どもにちがいありません。
10. 【7】はっとして、しばさぶろうはいいました。
11.「
先生は、とおいがいこくから、ひとりで、
日本へきてさびしくありませんか。」
12. 【8】すると、
先生はにっこりとしていいました。
13.「そうですね。ときどき、
子どものことを、ゆめに
見ます。でも、
日本では、すぐなおる
病気にかかっても、みんな
死にます。わたしひとりのことなどかんがえておられません。はやく
日本のみなさんに、ながいきをしていただきたいのです。」
14. 【9】ああ、なんとりっぱな、
先生のことばでしょう。
15. しばさぶろうは、いっぺんにこころがかわりました。もううれしくてなりません。∵
16.【0】「そうだ。べんきょうがむずかしいなんていっていてはいけないんだ。はやくよいおいしゃさんになって、
日本のみなさんにながいきをしてもらわなければならない。」
17. つよく、そう
思いました。
18.(
二反長半編 白木茂著 「
美しい話・いじんの
心」より)