イバラ の山 7 月 3 週 (5)
○あくる年の春に、なたねは(感)   池新  
 【1】あくる年の春に、なたねはきいろいきれいな花をさかせました。花がちって、みがなりました。
 【2】そのみをあつめて、きんじろうはあぶらやさんへもっていきました。
「あぶらやさん。このなたねのみを、あぶらととりかえっこしてくれませんか。」
と、たのみました。【3】すると、あぶらやさんは、
「おお、きんじろうさんのつくったなたねのみだね。よしよし。」
と、しんせつに、あぶらととりかえてくれました。

【4】「こんどは、もうじぶんのあぶらだもの。おじさんだってしからないだろう。」
 きんじろうは、よるのくるのが、まちどおしくてなりません。あんどんにあぶらをいれて、あかりをつけて本を読みました。
 【5】ところが、おじさんは、やっぱりこわい顔して、
「きんじろうや。おまえはいったい、なにになるつもりじゃ。ひゃくしょうになるのに、べんきょうはいらないんだよ。あしたはあさはやくから、のらへいくのだ。はやくねなさい。」
【6】「はい。」
と、きんじろうは、またあかりをけさなければなりません。やっぱりきんじろうは、べんきょうができませんでした。

【7】「ああ、ひゃくしょうは、どうして、べんきょうをしてはいけないのだろう。そんなことはない。」
と思いました。
 【8】けれども、おじさんにめいわくをかけてはいけません。
「そうだ。山へいく道や、たんぼへいく道で、本を読もう。」
 【9】くわをかつぎながら、また、しばをかつぎながら、きんじろうは本を読みました。【0】

(二反長半(にたんおさなかば)編 白木茂著 「美しい話・いじんの心」より)