長文集  2月4週  ○サルにつけたなまえ  e-02-4
    毎日1ページ音読しましょう。漢字はふりがなをつけずに読めるようにしておきましょう。  2015/03/02 09:43:08
 宮崎県の幸島というところにいる野性のサ
ルのむれは、人間がまいてやるサツマイモを
海の波であらって、塩水(しおみず)の味つ
けをして食べることで有名です。 
 そのころ、日本ではまだあまりサルの研究
をする人がいませんでした。しかし、サルが
大好きだった京都大学の今西錦司さんたち 
は、幸島のサルを観察したくてやってきたの
でした。ところが幸島のサルは、猟で狩られ
たことがあったために、人間をとてもこわが
っていました。そこで京都大学の人たちは、
サルを安心させよう と、サツマイモをまい
てやりました。そのサツマイモを、サルはあ
らって食べるようになったのです。それまで
外国では、サルの研究をするとき、えさをま
いてやるということはしていませんでした。
 
 そのほかにも、外国の人がやっていないこ
とを、この日本の若い研究者たちはしました
。むれのサルに、一匹一匹(いっぴきいっぴ
き)名前をつけて観察したのです。たとえば
、こわいボスザルには「カミナリ」、わかく
て頭のいいオスザルには「ヒヨシマル」とい
ったぐあいです。 
 日本での研究になれてくると、京都大学の
人たちは、アフリカに行ってゴリラやチンパ
ンジーの研究もするようになりました。 
 そして、研究したことを国際会議で発表し
ましたが、それを聞いて世界のサル学者たち
はたいへんおどろきました。日本で、こんな
にりっぱなサルの研究がされていたとは思っ
ていなかったのです。日本のサルの研究がい
ちばん進んでいる、と世界のサル学者たちは
感心しました。そんな世界のサル学者たちが
最も驚いたのが、日本人がサルたちに名前を
つけていたことなのでした。 
 世界の学者たちは、サルに番号しかつけて
いませんでした。それに、サルの顔や性格が
一匹一匹(いっぴきいっぴき)ちがうことに
も気がついていなかったのです。∵
 西洋の人は、人間と動物はまったくちがう
ものだと、はっきりわけて考えていました。
けれど、日本人は昔から、人間と動物とはあ
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まり変わらないものだという考え方だったの
です。サルもタヌキもキツネも、日本人にと
っては同じ村の仲間のようなものでした。だ
から、今の時代になっても、若い研究者はご
く自然に、サルになまえをつけたのでした。
サルを番号でよぶことのほうが、むしろやり
にくかったのです。
 最初のころ、世界の学者たちは、日本人が
サルに近いからそういうことができるのだと
考えていました。しかし、今では、世界中の
サルの研究者たちは、この日本の方法を使っ
て、サルたちに名前をつけて研究するように
なっています。そのほうが、サルたちの社会
や生活について、よく理解できることがわか
ったからです。

 言葉の森長文(ちょうぶん)作成委員会(
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