長文集  2月3週  ★すごくきれいね!(感)(できるだけ自由な題名で)  e-02-3
    毎日1ページ音読しましょう。漢字はふりがなをつけずに読めるようにしておきましょう。  2014/12/14 16:53:07
 【1】すごくきれいね! トトが、かあさ
んをふりむいていいました。
 森の秋。森はきんいろとべにいろの色紙細
工です。もっと、あっちへいこう、――トト
は、かあさんにせがみました。あぶないわ。
いまは、にんげんが山の中をあるきまわると
きなのよ。【2】かあさんがとめました。だ
ってこんなにきれいなんだもの。トトはピョ
コピョコ、シカのよこっとびでかけだしまし
た。そして谷まへの道にでたとたん、
――おッ!
 たちすくんだのはトト。【3】たちどまっ
てさっと鉄砲をかまえたのはにんげんです。
わかいりょうしです。かあさんが、ひととび
でトトのよこにならびました。そして頭で、
トトをぐいと、おしていいます。トト、おに
げ! トトはにげない。【4】トトは、とう
さんのことをおもいだします。これがとうさ
んをいなくしちまったにんげんか! トトは
夏にあったポロをおもいだします。ゾクッと
からだじゅうをむしゃぶるいがはしり、トト
は頭をぐっとさげ、するどい目つきで、りょ
うしをにらみつけました。【5】トト! か
あさんが、またおします。けれどトトは、け
んめいです。ポロとおなじかまえで、さっと
とびかかろうとしたとたん、
――あっはっは!
 にんげんがわらいました。
――うてねえな、おまえは……。
 【6】そのわかいりょうしは、鉄砲のつつ
さきをあげていいました。
――そのちびさんが、かあさんをまもろうっ
てんだからな。
 トトはにんげんのいってることばは、わか
らない。ただ、かあさんがもうおさないので
、きけんがさったことは、わかりました。
【7】――おれにゃ、うてねえよ。
 りょうしは白い歯をみせて、かあさんに話
しかけるようにいいました。
――こんなきれいな目のこジカは、ころせね
え。
 かあさんはトトに、ぴったりよりそいまし
た。∵【8】トトはきゅうにぐったりして、
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そこへすわりこみたくなりました。そのと 
き、にんげんが、どなるようにいいました。
――おい、早いとこにげてくれよ! また気
がかわるかもしれないんだぜ。
 かあさんが、ぐいとトトをおしました。【
9】こんどはトトもひととびです。あかるい
栗色の二つのてんが森の中にきえたとき、り
ょうしは鉄砲をかまえて空にむけてうちまし
た。
 グァアン! ……赤と黄のかれはが、パラ
パラと、りょうしにふりかかりました。【0


「ぽけっとにいっぱい」『森のシカ、トト』
より(今江 祥智)フォア文庫