長文集  2月2週  ○ところがあくる朝(感)  e-02-2
    毎日1ページ音読しましょう。漢字はふりがなをつけずに読めるようにしておきましょう。  2014/12/14 16:49:46
 【1】ところがあくる朝、かあさんゾウが
目をさまして、おどろきました。バオバブが
いなくて、そのかわり、ぜんぜんしらないゾ
ウが、よこにねむっているのです。かあさん
ゾウは、あわててとうさんゾウをおこしまし
た。
 【2】目をこすりこすり、そのゾウをみて
とうさんゾウもおおあわて。それにしても、
なんというあつかましいゾウでしょう!
 いや、それよりも、バオバブは、いったい
どこへいったのでしょう。
 【3】ふたりはますますあわてて、そのゾ
ウのおしりを、おもいきりけっとばしてやり
ました。もしかすると、その下じきになって
いるかもしれないではありませんか。かわい
そうなバオバブちゃ ん!
 【4】けれど、そのゾウはのんびりと目を
ひらき、
――いたいなあ、とうさん……
 というのです。
――とうさんだって!
 とうさんゾウは、あきれてしまいました。
こんな大きなゾウに、とうさんなんてよばれ
るおぼえはない。【5】すると、かあさんゾ
ウが、とんきょうな声をあげました。
――まああ、とうさん、それはバオバブぼう
やですよ!
――バオバブぼうやだって……。
 どうみても、ぼうやなんてからだつきでは
ないのです。とうさんゾウより大きいくらい
なのですから。
【6】――ほら、あの目の下のなきぼくろ…

 さすがはかあさんです。ちゃんと、むすこ
のとくちょうをおぼえていました。
――そうですよ、ぼく、バオバブですよ。 
とうさんたら、じぶんのむすこをみわすれる
なんて、ひどいなあ。
 【7】そんなことをいったって、この大き
なゾウを、どうしてきのうのかわいいバオバ
ブぼうやだとおもえるでしょう。とうさんゾ
ウは、じぶんの耳をひっぱってみました。
――まだあんなことをやってる。ゆめじゃあ
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
12
13
14
15
16
17
18
19
20
21
22
23
24
25
26
27
28
29
30
31
32
33
34
35
36
37
38
39
40
41
42
43
りませんよォ。
 【8】バオバブが、ふふくそうにいいまし
た。
――ぼくだといったら、ぼくなんです。ぼく
は、大きくなるのがはやいだけなんですよ。

 はやいといっても、はやすぎる、ひとばん
でわしより大きくなるなんてことがあるもの
か……と、とうさんゾウは、まだほんとうに
できないようすです。
 【9】しかし、そういうあいだにも、 バ
オバブは、どうやらすこしずつそだってゆく
ようなのです。とうさんゾウは、すこしずつ
背のたかくなってゆくむすこをみあげなけれ
ばなりませんでした。目のまえのできごとで
す。ほんとうにするほかはありません。

 【0】そのうちに、バオバブはとうさんの
二ばいほどの大きさにもなってしまいました
。ガスいりの風船でなしに、なかみもちゃん
とつまったほんもののゾウです。とうさんだ
といっても、きみわるがらずにはいられませ
んでした。このぶんでいったら、あしたは、
どうなることでしょう。
 とうさんゾウとかあさんゾウはかおをみあ
わせるばかりでした。
 
 バオバブは、そのちょうしでどんどん大き
くなりはじめました。
 とうさんゾウは、むすこのかおをみるのに
、えらくなんぎしなければなりませんでした
。もともとくびのないゾウのこと、みあげる
のはにがてなのです。
 でも、そんなことはまだよかったのです。
こまったことに、バオバブのからだが大きく
なるにつれて、バオバブがたべるものも、ず
んずんふえてゆくのです。みるみるうちに、
あたりのたべものは、きれいさっぱりなくな
ってしまいました。
 これでは、ゾウがものすごいいきおいでふ
えてゆくようなものでした。とうさんゾウは
、いそいでとしよりたちのところへしらせに
いきました。

 話をきいてほんきにしなかったとしよりた
ちも、バオバブをみると、たまげてしまいま
した。これが、ついこのあいだ、ほそいはな
を風にふかれて目をほそめていたゾウのあか
んぼうでしょうか。
 としよりたちは、イヌがウマをみあげるよ
うにバオバブをみあげなければならないので
、すっかりあわててしまいました。そして、
バオバブのたべっぷりをみて、もっとあわて
ました。これでは、いくらたべものがあって
も、たりなくなってしまう。たいへんなゾウ
をかかえこんだものです。
「ぽけっとにいっぱい」より(今江 祥智)
フォア文庫