長文 1.2週
1. 【1】つき青いあお ばん、アフリカの草原そうげんで、ライオンに三つ子み ごがうまれました。まるまるふとってククククとよくわらうのがコロン、ちっともわらわないのがムウ、ちょっとばかりげんきがないのがショボン……となづけられて、いくにちかすぎました。【2】ちかくにお花 はなばたけがあるせいか、はなのさいているときにうまれたせいか、みんなひどくはなずきでした。三びきは、よく、ちかくのもりの、はなばたけにねそべりにゆきました。
2. 【3】さてまたつき青いあお ばん、三びきがはなのあいだでふざけていると、かあさんライオンがやってきて、コロンをよびました。
3.――コロンちゃん、いっしょにいらっしゃい。
4. 【4】うん、とコロンはおきあがり、クローバーを、ちょいとあたまにつけて、かあさんライオンについてゆきました。
5. もりにはいると、かあさんライオンはいいました。
6.――きょうはね、ケモノのつかまえかたをおしえてあげるの。【5】よくみてらっしゃいよ。そういうと、じっとからだをひくめて、しのびあしで、ツツツツツウと、すすみます。おや、ウサギがいるぞ。
7.――ここでね、ウンといきをすいこんで、ひととびにゆくのよ。
8. 【6】かあさんは、ささやくようにコロンにおしえると、ウンと、いきをすいこみます。
9. はなのあなが、三かくにひろがり、ひげがヒョロリとたれてしまって、とってもへんなかおです。みたとたん、コロンはクククククと、わらいだしてしまいました。【7】ウサギはもちろん、ぴょんと、ひととびでサヨナラしてしまいました。
10.――だめじゃないの、コロンちゃん。
11.――だって、さっきのかあさんのかお、あんまりおかしかったんだもの。それに、あのウサギのあわてかたったら!
12. 【8】そしてまた、ククククなのです。かあさんライオンは、あきらめてかえりました。
13. つぎのよるは、ムウでした。
14.――ムウちゃん、いっしょにいらっしゃい。
15. ムウは、だまってついてゆきました。もりにはいると、かあさんライオンはいいました。∵
16.――【9】きょうはね、ケモノのつかまえかたをおしえてあげるの。よくみてらっしゃいよ。
17. そういうと、からだをしずめて、スススススと、しのびあしですすみます。おや、あそこにリスがいるわ!――ここでね、ウオーッってほえるの。【0】そしたら、リスはびっくりして、ちぢみあがっちゃうのよ。そこを、つかまえるの。
18. かあさんは、そうムウにささやくと、あごがはずれそうに大きくおお  くちをひらいて、ウオーッとほえました。
19. もちろん、リスはビリリリと、でんきがかかったみたいになってうごけません。
20.――さあ、おたべ。
21. かあさんライオンがムウにいいましたが、ムウはこたえません。じっと、リスをみつめています。そして、「さあ」と、もういちどかあさんがすすめると、ムムウと、かおをしかめるのです。かあさんはびっくりして、ムウをみました。
22. へんじなし、なのです。
23.――どうしたの?
24. それもそのはず、ムウもうごけなかったのです!
25.――あらあら、ムウちゃんまで!
26. ごめん、ごめん。
27. かあさんライオンは、あわててムウのしっぽを、ちょいとおしてやると、ムウはやっとうごけましたが、リスのほうもそのすきに、ひととびでにかけのぼりました。

28.「ぽけっとにいっぱい」『三びきのライオンの』より(今江いまえ 祥智よしとも)フォア文庫ぶんこ