エニシダ の山 1 月 2 週 (5)
○月の青いばん(感)   池新  
 【1】月の青いばん、アフリカの草原で、ライオンに三つ子がうまれました。まるまるふとってククククとよくわらうのがコロン、ちっともわらわないのがムウ、ちょっとばかりげんきがないのがショボン……となづけられて、いくにちかすぎました。【2】ちかくにお花ばたけがあるせいか、花のさいているときにうまれたせいか、みんなひどく花ずきでした。三びきは、よく、ちかくの森の、花ばたけにねそべりにゆきました。
 【3】さてまた月の青いばん、三びきが花のあいだでふざけていると、かあさんライオンがやってきて、コロンをよびました。
――コロンちゃん、いっしょにいらっしゃい。
 【4】うん、とコロンはおきあがり、クローバーを、ちょいとあたまにつけて、かあさんライオンについてゆきました。
 森にはいると、かあさんライオンはいいました。
――きょうはね、ケモノのつかまえかたをおしえてあげるの。【5】よくみてらっしゃいよ。そういうと、じっとからだをひくめて、しのび足で、ツツツツツウと、すすみます。おや、ウサギがいるぞ。
――ここでね、ウンといきをすいこんで、ひととびにゆくのよ。
 【6】かあさんは、ささやくようにコロンにおしえると、ウンと、いきをすいこみます。
 はなのあなが、三かくにひろがり、ひげがヒョロリとたれてしまって、とってもへんなかおです。みたとたん、コロンはクククククと、わらいだしてしまいました。【7】ウサギはもちろん、ぴょんと、ひととびでサヨナラしてしまいました。
――だめじゃないの、コロンちゃん。
――だって、さっきのかあさんのかお、あんまりおかしかったんだもの。それに、あのウサギのあわてかたったら!
 【8】そしてまた、ククククなのです。かあさんライオンは、あきらめてかえりました。
 つぎのよるは、ムウでした。
――ムウちゃん、いっしょにいらっしゃい。
 ムウは、だまってついてゆきました。森にはいると、かあさんライオンはいいました。∵
――【9】きょうはね、ケモノのつかまえかたをおしえてあげるの。よくみてらっしゃいよ。
 そういうと、からだをしずめて、スススススと、しのび足ですすみます。おや、あそこにリスがいるわ!――ここでね、ウオーッってほえるの。【0】そしたら、リスはびっくりして、ちぢみあがっちゃうのよ。そこを、つかまえるの。
 かあさんは、そうムウにささやくと、あごがはずれそうに大きく口をひらいて、ウオーッとほえました。
 もちろん、リスはビリリリと、でんきがかかったみたいになってうごけません。
――さあ、おたべ。
 かあさんライオンがムウにいいましたが、ムウはこたえません。じっと、リスをみつめています。そして、「さあ」と、もういちどかあさんがすすめると、ムムウと、かおをしかめるのです。かあさんはびっくりして、ムウをみました。
 へんじなし、なのです。
――どうしたの?
 それもそのはず、ムウもうごけなかったのです!
――あらあら、ムウちゃんまで!
 ごめん、ごめん。
 かあさんライオンは、あわててムウのしっぽを、ちょいとおしてやると、ムウはやっとうごけましたが、リスのほうもそのすきに、ひととびで木にかけのぼりました。

「ぽけっとにいっぱい」『三びきのライオンの子』より(今江 祥智)フォア文庫