長文集  6月1週  ★プロローグで日本企業の(感)  1a-06-1
    毎日1ページ音読しましょう。漢字はふりがなをつけずに読めるようにしておきましょう。  2012/06/15 08:09:22
 プロローグで日本企業の国際化について触
れた。欧州の場合はもともと多くの国が寄り
集まっているので、国際化という言葉自体あ
まり意味がない。アメリカはもともとが寄り
合い所帯だから、海外での生産もまた会社自
体の多国籍化には抵抗感はない。その中で日
本だけが新しい現象として企業の国際化が急
速に進んだわけであ る。
 このような傾向はあと三〇年もたつと日本
企業にとっては当たり前のこととなるだろう
が、その過渡期においてどのようにうまく対
応するかがそれぞれの企業内でのボトルネッ
クとして考えておかなくてはならない重要事
項である。
 現在すでに海外進出企業で問題になってい
るのが、企業の経営陣のトップにまで外国人
を分け隔てなく登用(とうよう)するかとい
う課題である。日本企業ではこの点でどうし
ても及び腰のためにせっかく有能な社員を育
てても、やがては他に職を求めるというのが
むしろ一般化している。有能な社員を育てる
にはずいぶん会社として投資しているはずだ
。それが簡単に出て行かれたのでは全く割に
合わない話である。
 これは日本企業として大間題であるはずだ
が現実ははかばかしくない。これは年次を積
み重ねても何とか解決すべきボトルネックそ
のものになるはずだ。しかし問題があるとい
うことは新しいビジネスチャンスがそこにあ
るということであって、すでにそのための動
きがある。
 日本企業から中堅社員を留学生として、一
流大学のビジネススクールへ派遣するのがそ
のひとつである。これはアメリカで勉強させ
ることもさることながら、人脈の予備軍をね
らっているのだ。一流大学からは将来アメリ
カの指導的地位に就く人物が出る可能性が高
い。ハーバードやプリンストンのキャンパス
に行くと日本人だらけになったのである。
 これらの大学は学生を厳しくしごくから、
生半可な努力ではついて行けない。だから学
生も優秀だ。彼らと親しくなっていればその
うちに役に立つだろうという遠大な計画だ。
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これをねらった留学である。これも日本企業
の国際化の努力の現れである。∵
 日本企業は明日に生きるためとなると思い
切ったことをやる。社内会議はすべて英語と
いう企業も出てきた。もともと外国語という
のは一種の体育と考えればよい。スポーツだ
からその上達には繰り返しの原理しかない。
毎日しゃべっていれば必ずうまくなる。その
証拠にイギリスに行けば頭の良し悪しとは無
関係に子どもでも皆英語をしゃべる。
 このように考えると三〇年先の日本企業に
はやたらに外国人がいて、社内では英語だけ
でなく各国語が飛びかっているに違いない。
すでにいまでも若者の言葉がわからないとい
うではないか。
 これを日本文化の破壊ということはない。
いまの日本語も、どんどん新語が取り入れら
れているのだから、あまり気にしないほうが
よい。めいめいの生活環境や職業によってそ
の場でしか通用しない言葉を使うというのは
普通のことであって、誰も気にすることはな
い。国際化が進めばそれに見合った言葉が一
般化することは間違いない。
 (「日本・陽は必ず昇る」唐津一 PHP
研究所より)