長文集  4月3週  ★経済の原点である産業構造は(感)  1a-04-3
    毎日1ページ音読しましょう。漢字はふりがなをつけずに読めるようにしておきましょう。  2012/06/15 08:09:22
 経済の原点である産業構造は時代とともに
変化する。日本の場 合、第二次大戦後の混
乱期が終わってどうやら経済が成長に移りは
じめた一九五二年頃の最大の産業は農業であ
って、その規模は十六・二%のシェアを占め
ていた。これに対して、製造業は一四・五%
であった。だからその頃の日本は農業国であ
ったわけである。それ以降日本では急速に製
造業の規模が拡大していって、年度にもよる
が三〇%前後のレベルにまで成長した。一方
、農業は二・二%に減少している。この間各
産業の就業人口の数ももちろん変化した。
 このように日本の経済では製造業が牽引力
になってきたことは確かだが、産業別に見る
と、その中には急速に成長したものもあれば
衰退していったものもある。アルミ精錬は一
時アメリカに次ぐ世界第二の規模であったが
、二度のオイルショックによる電力料金の高
騰によって、自家水力発電によるもの以外は
姿を消した。
 経済の原点である産業構造は時代とともに
当然変化していく。日本の場合、第二次大戦
後、政府はまず経済を建て直すために基幹産
業として石炭、造船、続いて鉄鋼といったも
のを選んだ。そのなかには、実はアルミ精錬
も入っていたのである。
 ところが、時代とともに技術は変わってい
く。たとえば、日本の家電産業というのは世
界のトップを走っているけれど、戦後間もな
くはラジオを主につくっていた。これは戦争
で破壊され尽くした日本の家庭の中で、まず
その頃の最も近代的なメディアはラジオであ
ったからである。しかし、ラジオは普及し終
わる。
 次に出てきたのは白黒テレビである。白黒
テレビがひとわたり行き渡ったところでカラ
ーテレビが出てくる。カラーテレビはかなり
長く続いたが、それでもやがて普及が行き渡
る。その次に引き続いて出てきたのはビデオ
である。そして、その次にビデオカメラ、こ
ういった調子で日本の家電メーカーは主力商
品を次から次へと移してきている。これを大
雑把にいうと、一〇年で新しい商品と入れ代
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わっているということを読み取ることができ
るのである。∵
 このところ、日本のテレビメーカーが海外
に生産拠点を移した。そのためもあって、国
内生産よりも海外の生産のほうが多くなっ 
た。これを産業の空洞化という言い方をする
人がある。しかし、これは私にいわせると、
非常に短絡的な、近視眼的な見方である。こ
のように成熟した技術は、むしろそういった
途上国に持って行くべきである。その地域で
はまだこの種の新しい家電製品、その他が普
及していない。そして、その日本の企業は次
の世代の製品をつくればいいわけである。現
実にそれが続いている。
 それだけに、日本の企業というのは研究開
発投資を必死でやっている。日本の製造業は
過去三〇年の間に売上金額が約三倍になって
いる。ところが、この間に研究開発投資が一
〇倍増えているのである。このような努力を
続けることだけが、日本の製造業を末永く維
持するエネルギーになるのである。
 (「日本・陽は必ず昇る」唐津一 PHP
研究所より)