長文 10.1週
1. 「人魚
姫」に
登場する
魔女や、
海賊映画に出てくる海の
魔物は、なぜかタコの
姿をしています。外国では、「人
喰い○○」といえば、サメではなくタコを
思い浮かべる人もたくさんいます。日本人のように、タコはこっけいでしかもおいしい、と考えるのはどちらかといえば少数
派なのです。
2. 長らく
怪物扱いされてきたタコですが、
最近の
研究によると、この
生き物は、
実はとても
賢いということが分かってきました。
3. タコは、
無脊椎動物の中ではきわめて
高度に
発達した
脳を
持っています。ある科学
者は、
蓋のついたびんに
好物のえさを入れ、タコに
与えてみました。するとどうでしょう。タコは
試行錯誤の
末見事に
蓋を回してえさにありついたのです。また、ある
水族館での話では、
一匹のタコは夜な夜な
排水管を
伝って
隣の
水槽に
忍び込み、魚を食べていたということです。この
動物は、
経験からいろいろなことを
学習していくのです。
4. タコの数ある
特技のうちでも
特に珍しいのは、その
独特の
変身術です。あまり
見事に
変身するので、海に
慣れたダイバーたちでさえ、タコのすぐそばを
泳いでいながらその
存在に
全く気づかないことがあります。このため、タコは、「海のカメレオン」とも
呼ばれています。
5. この
芸当を
可能にするのは、その
特殊な
皮膚の作りです。タコの
皮膚には、
色素を
持つ細胞が二百万
個ほどもあります。一
平方ミリメートルあたり
約二百
個という数です。そして、それぞれの
細胞には赤か黄か黒の
色素が
含まれています。タコは、その
細胞を
取り巻いている
筋肉を
縮めたり
緩めたりして、
無地になったり
模様入りになったりと、またたく
間に
変身します。タコは
皮膚の
質感を
変化させることもできます。岩にへばりつき、
皮膚をそのごつごつした
岩肌に
似せて、
完全に岩になりきるのです。∵
6.
最近発見されたミミックオクトパスというタコは、さらにうわてです。形や
動き方まですっかりまねて、ほかの
生物そのものに
化けてしまうのです。そのレパートリーは
幅広く、ヒラメ、ウミヘビ、エビなど何にでも
変身してしまいます。ヒラメに
化けたタコに、
仲間と
勘違いした
本物のヒラメがついてくることもあります。これでは
天敵もすっかりだまされてしまうでしょう。この
賢い「海のカメレオン」は、まさにアカデミー
賞ものの
名優なのです。
7.「タコさん、人間にも
化けることができるんですか。」
8.「さあ、それはやっタコとないなあ。」
9.「
近所のおじさんが、そうみたいなんですけど。」
10.「わあい、言っちゃおう。」
11.
言葉の森
長文作成委員会(Μ)
長文 10.2週
1. クロソラスズメダイは、イトグサという
藻をえさにしています。スズメダイは
さんご礁にすみますが、
沖縄の
琉球列島のクロソラスズメダイは、この
さんご礁の中にたくさんのイトグサを
育てています。
自分で
自分のえさを
育てているので、「
自給自足」というわけです。
2. では、クロソラスズメダイはどんなふうにイトグサを
育てるのでしょう。
さんご礁の中にはイトグサ
以外にもたくさんの
種類の
藻が
生息しています。クロソラスズメダイは、
自分が
食べるイトグサ
以外の
藻類が
成長し
始めると、口でそれを
抜き取ります。イトグサは、こうしたクロソラスズメダイの
保護なしには、
生存競争にやぶれて、その
場所は、
他の
藻類に
覆われてしまうのです。
3. クロソラスズメダイは、
自分の
育てているイトグサを
食べてしまうニザダイや、
時にはウツボのような
肉食性の
生き物をも
追いはらい、
自分の
藻を
大切に
守ります。ですから、ライバルがいなくなったイトグサはぐんぐん大きくなれるわけです。イトグサは、「クロソラスズメダイさん、ありがとう。ウツボの
思うつぼにならなくてよかったよ。おれいにぼくを
食べてね」といっているようです。
4. クロソラスズメダイは一
匹一
匹がなわばりを
持つ魚ですが、
自分のなわばりの中にあるえさの
藻だけを
管理して、まるで
芝生のようにしげらせています。
5.
似た
例で、
アメリカ大陸に、キノコを
育てるハキリアリがいます。
自分の
巣の中に
葉っぱを
運び込み、それを
噛み砕いた中でキノコを
育てるのです。ハキリアリは、はりきってキノコを
育てるので、キノコはアリの
巣の中で、ありがたいことだと
思っていることでしょう。
6.
言葉の森
長文作成委員会(φ)
長文 10.3週
1.
包丁で
指を切ってしまったり、
転んでひざをすりむいたり、そんな
怪我をした
経験はだれにでもあるでしょう。そんなとき
傷口から
血が出てきます。ひどい
怪我の場合は
血が
流れ出ることもあります。
痛いのはもちろんのこと、
普段はあまり見ることのない赤い
血がにじみ出てくるのですから、しばらくは
大騒ぎしてしまうかもしれません。その
騒ぎがおさまり、心も
平静を
取り戻す頃、
傷口ににじんでいた
血は、
糊のように
固まってきているはずです。やがて少しずつ
乾いて
固くなり、かさぶたになるのです。
2.
血、つまり
血液にはたくさんの
働きがあります。
傷口から出てきた
血液が
固まるのは、
血小板という
物質が
働いてくれるためです。
血液はいくつかの
成分が合わさって形作られていますが、
血液の中で
血小板が
占める割合は
約五パーセントにすぎません。ふだん
静かな
血小板は、
怪我をしたときにだけ、まるで
決勝戦のように大
活躍するのです。
3. では、けがをしたときに
血小板はどのように
働いて
血を止めるのでしょうか。
血管のどこにも
傷がなく、
止血の
必要がないときの
血小板の形は、丸くて
平たく、まるでおはじきのようです。そのおはじきは
血液の
流れとともに、体中をめぐっています。町中を
巡回するおまわりさんといったところでしょうか。∵
4. ところが、
血管に
傷口ができるという
緊急事態が
発生すると、
巡回中の
血小板たちはあっというまに
現場に
集まってきます。そのときは、おはじきだった体を
金平糖のように
変化させます。この
変身は「
血小板の
活性化」と
呼ばれています。
平たかった体はボールのような
球状に
変わり、おまけに何本もの手足が
飛び出してきます。この手足は
偽足と
呼ばれますが、「にせのあし」と書かれたその字のごとく、まるで足のような
働きをします。
緊急時の
血小板は、この
偽足をじょうずに
操って
血管の中をすばやく
移動します。そうして
傷口に
血小板が
集まってきたところが、
糊のようになった
状態なのです。∵
5. ここからかさぶたができるにはもう一つ
別な
物質の力を
借りねばなりません。その
物質とは、やはり
血液中に
存在するフィブリンという
タンパク質の
一種です。このフィブリンが糸のようになり
絡み合ってできたネットが
傷口を
補強します。こうしてかさぶたが
完成するのです。すばらしい
連係プレーと言えそうです。
6. さて、
傷口を
補強してくれるフィブリンですが、このような
糸状のものが
血液の中に
流れていたら、
血液はうまく
流れることができず、つまってしまいます。そこで、フィブリンは
害のない
別な形に
姿を
変えて出番を
待っています。フィブリンのもとになるものは、
血液の中では一つずつばらばらになって
静かに
流れています。
緊急事態が
発生すると、これがいくつもつながって
糸状のフィブリンに
変身するのです。
7.
言葉の森
長文作成委員会(ω)
長文 10.4週
1. カタツムリとナメクジは、どちらも
巻き貝のなかまで、
大昔、
海に
住んでいました。
海に
住んでいたころは、ナメクジにも
殻があったのですが、どういうわけか、ナメクジは
殻を
捨ててしまいました。もっと
身軽になりたいと
思ったのかもしれません。カタツムリは、
海に
住んでいたときのまま、
今でも
殻をつけています。
殻のないナメクジは、
水気のないところではからからになってしまいます。
一方、カタツムリは、
雨が
降るまで、
殻の
入り口に
膜をはって
待つことができます。
2. カタツムリの
殻は、ヤドカリのようにだれかにもらったものではなく、
生まれながらに
身につけているものです。この
殻は、
体からしみ
出した
石灰分で
作られ、
体にくっついているので、カタツムリの
殻と
体とを
引きはなすことはできません。この
殻があるおかげで、カタツムリは、いつでも
敵から
身をかくすことができますが、ナメクジは、カタツムリのように
殻の
中にかくれることができないので、
夜にしか
行動しません。
3. ナメクジに
塩をかけると
小さくなっていきます。これは、
塩をかけられたことによって、ナメクジの
体の
中の
水分が
外に
出ていくためです。
塩だけではなく、
砂糖やこしょうでも
同じです。ナメクジは、とけていなくなってしまったように
見えますが、じっさいには、
水分がなくなったために
小さくなるだけです。もちろん、そのままにしておくと
死んでしまいますが、
水をかけてやると、まるで
魔法をかけられたように、また
元気になります。
4. もともとは
海の
中の
生き物だったカタツムリとナメクジ。
陸に
上がってからは、
殻を
捨ててしまったナメクジの
方が
苦労が
多そうです。
歌にも
歌われて
人気のあるカタツムリに
比べると、ナメクジは
少し分が
悪いようです。ナメクジは、びんぼうくじをひいてしまったと
思っているかもしれません。
5.
言葉の
森長文作成委員会(Λ)
長文 11.1週
1. 【1】
夜空を
明るく照らす丸い月。
昔から、
月にはウサギがいて、おもちをついていると
言われています。
確かに、
月の
模様をよく
見ると、
杵を
持ったウサギがおもちをついているように
見えます。【2】しかし、
月に
住んでいるのはウサギだけではないようです。
北ヨーロッパでは、
月の
模様を、
本を
読むおばあさんや
水を
運ぶ男女に
重ね合わせています。【3】さらに、
南ヨーロッパでは、
大きなはさみを
持ったカニ、
東ヨーロッパでは
横向きの
女性、アラビアではほえているライオン、カナダではバケツを
運ぶ少女など、
同じ模様でも
国によってとらえ
方はさまざまです。
2. 【4】では、どうして
月には
模様があるのでしょうか。それは、
月にはクレーターや
海などがあり、
地球から
見ると、クレーターは
白っぽく、
海は
黒っぽく見えるためです。この
海の
部分がウサギになったり、カニになったり、ライオンになったりするのです。【5】
海と
言っても、
地球の
海のように
水があるわけではなく、
濃い色の
玄武岩でおおわれた
平原となっています。
月の
海は、
月の
地表の十六パーセントを
占め、そのほとんどが
月の
表と
呼ばれる
地球を
向いている
側にあります。【6】ですから、
地球に
住む私たちは、その
模様を
楽しむことができるのです。まるで、
月がこちらを
向いて、
私たちにつきあってくれーたーかのようです。
3. 【7】
月は
地球よりも
小さいために
重力も
小さく、
大気をつなぎとめておくことができません。
地球に
落ちてくる
隕石のほとんどは、
地球の
大気との
摩擦で
燃え尽きてしまいますが、
月には
大気がないので
隕石がそのままぶつかります。
隕石がぶつかった
跡も、
月の
模様となっています。
4. 【8】ガリレオは、
初めて望遠鏡で
月のクレーターを
見たとき、「
青眼をちりばめたクジャクの
尾のようだ」と
言ったそうです。∵【9】
望遠鏡で
見る月には、
肉眼で
見るのとはまた
違った
感動があります。
望遠鏡のなかった
昔の
人たちが
月を
見て
想像をふくらませたように、ときには、
夜空を
見上げて
自由に
空想を
広げてみるのもおもしろいものです。【0】
5.
言葉の
森長文作成委員会(Λ)
長文 11.2週
1. 左
胸の下の方に手を当ててみると、
心臓がドキドキと
規則正しく動いているのがわかります。
心臓は、
全身に
血液を
送り出すポンプの
役割をしています。
心臓は、
動物が生きているかぎり、休みなく
動き続けます。
動物が生きていられるのは、
心臓が休むことなく体のすみずみまで
血液を
送り続けているからなのです。
2.
血液は体中に
酸素や
栄養分を
運びます。
酸素は、
息を
吸うことによって
肺から
血液の中に
取り入れられます。
栄養分は、
食べ物を
摂取することによって
腸から
血液の中に
取り入れられます。
心臓は、昼も夜も休むことなく
働き続けています。もし、
心臓が
休憩したら、
酸素や
栄養分が体に回らなくなってしまいます。いくら
私たちが「
栄養はもうええよう。」と言っても、
心臓はその
動きを止めません。
3.
激しい運動をしたり、
緊張したりすると、
心臓の
鼓動が
速くなります。これは、体や頭が
酸素や
栄養分をたくさん
必要とするため、
血液の
流れを
速くしようと
心臓の
動きが
活発になるからです。
4.
血液の
仕事は、
酸素や
栄養分を
送り届けることだけではありません。
不要になったものを
回収する
働きもしています。
二酸化炭素や
老廃物を
回収してくれるのです。
酸素や
栄養分が通る
血管は
動脈、
二酸化炭素や
老廃物が通る
血管は
静脈といいます。
5.
心臓は、にぎりこぶしくらいの大きさで、こぶしをにぎったり、ゆるめたりするような
動きをくりかえしながら、体中に
血液を
循環させています。
心臓は、手や足の
筋肉とは
違う、
非常に
丈夫な
特別の
筋肉でできています。また、
脳からの
命令で
動いているのではないことも一つの
特徴です。ふつう、体の
筋肉は、
脳の
命令で
動いていますが、
心臓の場合は
脳の
命令とは
関係なく、ひとりでにちぢんだり、ふくらんだりしているのです。∵
6. さて、
心臓のドキドキという音ですが、この音は
心臓の中についている
弁が
閉じるときの音です。ストーブに
石油を入れるポンプを
思い浮かべてみましょう。ポンプで
石油を
吸い込むとき、まず下のふたが
開いて
石油を
吸い込みます。その
石油を
吸い込み終わると、ふたはすぐに
閉じてしまいます。
次に、
石油を
送り出すときには、
別のふたが
開いて
石油が
別の方に
流れていきます。ポンプは、二つのふた、つまり
弁を
開いたり
閉じたりしながら、
石油を
送り出しているのです。
7.
心臓もこの
石油ポンプと同じしくみになっています。
心臓の中にもふたがあり、このふたが
開いたりしまったりしながら、
血液を
送り出しています。
心臓の
弁は、
流れた
血液が
逆周りになって
戻ってこないように、音がするほど強くしめます。この音がドキドキという音になって聞こえるわけです。
8.
哺乳類や
鳥類の
心臓は、田んぼの田の字の形のように四つの
部屋に分かれています。
爬虫類や
両生類の
心臓は三つの
部屋に、
魚類の
心臓は二つの
部屋に分かれています。
石油ポンプにはもちろん一つの
部屋しかありません。
部屋が分かれていると、それぞれの
部屋で
役割を
分担できるので、
心臓の
性能がよくなります。
9. 人間の
心臓は、田の字の
向かって左上から体中の
汚れた
血を
回収し、それを左下に
集めて
肺に
送り込みます。
肺できれいになった
血液は田の字の右上で
集められ、右下から
勢いよく
再び全身に
流れていきます。
10.
言葉の森
長文作成委員会(Λ)
長文 11.3週
1.
高いところから
飛び降りるとき、
地面に
着地する
瞬間に、ひざを
曲げてやわらかく
地面に
着くようにします。もし、ひざをまっすぐに
伸ばしたまま
着地をしたら、ひざを
痛めてしまいます。
同じ高さから
飛び降りているのに、どうして
衝撃が
違うのでしょうか。
2. その
秘密は、力というものの
性質にあります。力は、
重さと
速さをかけたもので、「力」=「
重さ」×「
速さ」ということになります。
例えば、あなたが
走っていって、おすもうさんとぶつかるのと、一年生のけんちゃんとぶつかるのと、どちらが
衝撃が
強いでしょうか。おすもうさんの
方が
重いので、あなたははねとばされてしまうでしょう。ただし、一年生のけんちゃんが
実はゾウの一年生だったとしたら、あなたはけんちゃんにもはねとばされてしまうかもしれません。このように、
重いものは大きな力を
持っているのです。
3. では、
速さはどうでしょう。
野球をしているとき、バットを
思いっきり振ってうまく
当たったのでホームランになったとします。
同じ場面で、バットをスローモーション
撮影のようにゆっくり
振っていたらどうでしょう。どんなにうまく
当たっても、ゴロにしかなりません。
同じ重さでも、スピードを出しているときの
方が力があるのです。
4.
着地するときにひざを
曲げるのは、ちょうどこのスローモーション
撮影をしていることと
同じです。足の
裏が
地面に
着く瞬間が、ほんの
少しゆっくりになるのです。その
差は
例えば、〇・一
秒で
着地するところが〇・二
秒で
着地することになっただけかもしれません。しかし、それでも力は二
分の一に
減ってしまうのです。
5. この
原理はいろいろなところに
応用できます。けん玉をするとき、玉をお
皿に
乗せる瞬間にちょっとひざを
曲げます。すると、玉がお
皿に
着地する
時間がほんの
少しゆっくりになるので、玉はとても入れやすくなります。こんなふうにして、玉がうまく入るようになったらたまりませんね。
6.
言葉の森
長文作成委員会(Σ)
長文 11.4週
1. カエルは
両生類ですから、
陸上の
生活にも水中の
生活にも、どちらにも
都合のよい
体のつくりをしています。
2. まず、
体全体を見てみましょう。先のとがった
頭、
首がなく
頭がそのまま
体につながった
形は、水を
切って
泳ぐのに
大変便利です。
3. うしろ足は、
指と
指のあいだに
薄い膜がある水かきになっていて、水をいきおいよく
蹴ることができます。しかし、水かきが小さく、
泳ぐのがへたなカエルもいます。それは、ヒキガエルで、
卵をうむときのほかには、ほとんど水に入りません。また、アマガエルやモリアオガエルは、
指先に
何にでも
吸いつく
吸盤がついていて、木の
枝や
葉に
登って
暮らします。
4. カエルのうしろ足の
腿は、
丈夫な
筋肉がはりめぐらされていて、水や
地面を
強く蹴ることができます。アメリカのカリフォルニアでは、
毎年世界中からカエルを
集めて、カエルとび
大会がひらかれます。ウシガエルは
三段跳びのチャンピオンで、これまでに五メートルという
記録がのこっています。これは
体の
長さの
約二十五
倍です。
人間は、オリンピックの
選手でもせいぜい
身長の
約十
倍ですから、
大変な
跳躍力です。
5. カエルは
夜行性の
動物です。
昼は
穴の中や
茂みに
隠れていて、
夜になると
活発に
動きまわります。その
暮らしに
合うように、
昼は
瞳を
絞りこんで
光をおさえ、
夜は、
少しの
光でも
物が見えるように
瞳を
全部開きます。
6. 目の
構造も
変わっています。
人間とは
反対に目の下まぶたが
動きます。
陸にいるとき、下まぶたは下がったままですが、水の中に
潜ると、さっと下まぶたが上に
動いて目を
覆ってしまいます。下まぶたが
透明ですから、ちょうど
備えつけの水中メガネのようです。∵
7. カエルには、このほかにも
変わった
種類がいます。
8. ヒックリカエル、デングリガエル、イキカエル、ツッカエル、ソリカエル、キガエル、ハキカエル、トッカエル。それでは、そろそろ、モウカエル。
9.
言葉の森
長文作成委員会(Κ)
長文 12.1週
1. 【1】
西洋には「トマトが赤くなると
医者が青くなる」ということわざがあります。
真っ赤に
実ったトマトを食べると、お
医者さんが
困るほど、だれも
病気にならない、という
意味です。【2】これは少々大げさな言い方だとしても、トマトの赤さのもと、リコピンには
病気を
予防する
働きがあります。また、トマトには、ビタミンCも多くふくまれています。
2. 【3】このことわざとそっくりなもので、日本には「
柿が赤く色づくと
医者の顔が青くなる」という
言葉があります。
柿にはビタミンやミネラルが
豊富に
含まれています。また、
柿の
葉っぱや
渋にも多くの
栄養素が
備わっています。【4】おもしろいのはカキのヘタの
部分で、しゃっくりを止める
働きがあるということです。
3. イギリスには、「一日にひとつのリンゴは
医者を遠ざける」ということわざがあります。【5】リンゴには
病気を
予防したり、
回復に
役立ったりする作用があるからです。「サンマが出ると
医者が
引っ込む」などというのもあります。このように
身近な
食べ物がことわざになっているものは少なくありません。
4.【6】「秋ナスは
嫁に食わすな」ということわざがあります。これはおいしい秋ナスを、お
姑さんがお
嫁さんにわざと食べさせない、と考える人もいます。【7】しかし
実は、秋にとれるナスは体を
冷やすので、これから子どもを生み
育てるお
嫁さんには食べさせすぎないように、という
心遣いがこめられているとも言われています。さて本当はどちらでしょうか。
5. 【8】このほかにも、ヨーロッパでは、「レタスは
恋の
炎をしずめる」という言い方があります。レタスの切り口から出てくる白い
汁には、
精神を
安定させたり、
眠気をさそったりする
働きがあるのを、しゃれた言い回しで
表しているのです。∵
6. 【9】
変わったところでは、「ミョウガを食べると
物忘れをする」というのもあります。これは
次のような話から
伝わったとされています。
昔、
お釈迦様の弟子で
物忘れの
激しい人がいました。【0】その人は自分の名前も
覚えられなかったので、
お釈迦様が
名札を首にかけてあげました。やがて、その人が
亡くなったあと、お
墓のまわりに見知らぬ
植物が生えました。それが「
茗荷」と名づけられた、というお話です。しかし、ミョウガを食べると
物忘れをするということはありません。
逆にミョウガの
香りには
集中力を高める
効果があるそうです。
7. 「
大豆は
畑の肉」「アボカドは森のバター」「カキは海のミルク」などなど、
簡潔なたとえにされているものも数多くあります。どれも
実にうまく
食べ物の
効用を
表しています。
8.
言葉の森
長文
作成委員会 α
長文 12.2週
1. 【1】アメリカのモンタナ
州は、
ジュラ紀や白
亜紀の
恐竜の
化石がたくさん
発見される
場所です。このあたりで、タマゴの
殻の
破片のようなものがたくさん見つかり、これが
大発見につながりました。【2】タマゴの
殻の
周辺をさらに
調査すると、
直径三メートルほどもある、クレーターのような形の
巣が見つかったのです。この
巣の中から、赤ちゃん
恐竜の
化石がたくさん出てきました。【3】これは、この
場所でカモノハシ
竜のタマゴが
孵化したことを
示しています。また
周辺からは、大人のカモノハシ
竜の
化石が見つかりました。
2. 【4】タマゴの
殻が細かく
割れている
理由は、赤ちゃん
恐竜が足で
踏みつけたからでしょう。つまり、タマゴからかえった赤ちゃんは、しばらく
巣の中で生活していたということになります。【5】
巣の中から見つかった赤ちゃんの
骨は、大きさがさまざまで、いちばん小さいものは
全長二十五センチメートル、大きなものは一メートルほどありました。【6】
恐竜の親は、赤ちゃんが生まれてから一メートルの大きさに
成長するまで、エサをあげて
子育てをしていたのでしょう。これは、親鳥が
巣の中のヒナにエサを
運ぶのとよく
似ています。【7】このカモノハシ
竜の
仲間には、「よいお母さん
恐竜」という
意味のマイアサウラという学名がつけられました。
3.
更に、
巣の中をよく
調べてみると、
植物の
破片の
化石が数多く見つかりました。これは、親が子に
運んだエサの
植物とは
違うものです。【8】なぜエサでもない
植物が、たくさん
発見されたのでしょう。
4. 鳥はタマゴを生むと、タマゴの上に
乗って
温めつづけます。タマゴがかえるには、
一定期間決まった
温度を
保つ必要があるからです。
恐竜の場合はどうでしょう。【9】マイアサウラの親の大きさは八メートル近くあり、
体重は何トンもあったと考えられます。これでは、タマゴの上に
乗って
温めるわけにはいきません。そこで、自分が
温める代わりに、タマゴの上を
植物でおおって
温度を
保ったのです。【0】∵こうしておけば、
直射日光で
暑くなりすぎたり、夜間に
冷えすぎることもありません。また、
植物は
発酵によって
熱を出すので、それによってタマゴを少しずつ
温めることができます。
5. このような
巣は、同じ
場所から
複数見つかっています。マイアサウラは
集団で
子育てをしていたのでしょう。生まれたばかりの赤ちゃん
恐竜は弱く、
敵にねらわれやすいのですが、
集団を作って生活をしていれば、いつも大人のマイアサウラが赤ちゃんを
守ることができます。
6.
発見された
化石は、これまでわからなかった
恐竜の
行動を、
私たちに教えてくれるものでした。
化石をくわしく
調べることで、
私たちは
大昔の
恐竜の生活の
仕方まで知ることができたのです。
7.
言葉の森
長文
作成委員会 κ
長文 12.3週
1. 【1】あさは ぼうっとして、あくびが でたり、しせいも わるいのに、ごごは げんきに なる
子が おおぜい います。
2. こうなるのは、あさねぼうの ためです。【2】あさは のうが
目を さまして いないので、きちんとするように めいれいが だせません。それで、しせいも ぐにゃぐにゃに なるのです。
3. 【3】せっかく、せなかを のばす れんしゅうをしても、のうが ねぼけて いたのでは、なんにも なりません。
4. 【4】あさねぼうの
子は、よるに なっても げんきで、おそくまで おきているので、また あさねぼうを することに なります。
5. ぐっすり ねむっても、おきたばかりの ときは、 だれでも のうが ねぼけています。
6. 【5】あたたかい パジャマを ぱっとぬいだり、せのびを したり、
手や
足を うごかしたり、つめたい
水で かおを あらったりしていると、のうが はっきり
目をさましてきます。
7. 【6】がっこうが はじまる、一じかんはん まえに おきて、のうが きちんと
目を さましてから、がっこうへ いきましょう。
8. 【7】あさ はやく おきて、げんきよく せいかつして いれば、あなたの のうは いつも、よく はたらきます。
9. にんげんが、ほかの どうぶつと ちがうのは、二ほんの
足で
立って あるき、
手と ことばが つかえる ことです。【8】それと、それができる、りっぱな のうを もっている ことです。
10. けれども、あるくための ほねや きんにくが よわくなったり、のうを あまり つかわない
子が ふえています。
11. 【9】みなさんの のうや からだは、つかえば つかうほど つよくなり、うまく はたらくように なります。
12. そとで はしりまわって あそんだり、のうを きちんと はたらかせるようにして、げんきな
子に なってください。【0】
13.「せなかをぴんとのばそう!」(
偕成社)
長文 12.4週
1. 【1】
ストラディバリという
人の
作ったバイオリンは、
ストラディバリウスと
呼ばれています。このバイオリンは
今からおよそ三〇〇
年前に
作られました。【2】そのころ
ストラディバリは、一二〇〇
挺のバイオリンを
作ったとされていますが、
今見つかっているのは、そのうちの六〇〇
挺ほどです。【3】もちろん、
今でも
使えるばかりか、
ストラディバリウスは
世界一いい
音を
出すバイオリンだとされています。ですから、
世界中のバイオリン
演奏者のあこがれの
楽器となっています。【4】
ストラディバリウスの
値段は、
数億円もするので、
売る人も、
買って
持ち主となった
人も、なくさないように
厳重に
注意しています。【5】そこで、一
挺ずつ
名前がつけられていて、
鑑定する
人が
見たらすぐにわかるようになっています。
2. なぜ
ストラディバリウスは、そのようにすばらしい
音がするバイオリンになったのでしょうか。【6】
最近の
研究では、そのころは
寒冷な
気候が
続いたため
夏と
冬の
年輪の
差が
少なかったからではないかと
言われています。【7】
木は、
夏には
速く成長するので
密度が
薄くなり、
冬にはゆっくり
成長するので
密度が
濃くなります。この
密度の
差が
年輪となって
現れます。【8】
ストラディバリが
生きていた
時代は
寒い気候が
続いていたので、バイオリンの
材料となる
木の
密度が
今よりもずっと
均一だったということです。【9】しかし、
高価なバイオリンを
分解して
確かめることはできないので、
確かなことはまだわかっていません。【0】
3.
言葉の
森長文作成委員会 λ