長文 12.3週
1.やまんばのにしき3
2. 【1】そこで、いろりのをどんどんもやし、でっかいなべにくまのすまし汁   じるこさえ、もちいれて食っく た。まず、そのうまいこと、ばんばは、腹いっぱいはら    になったと。
3.【2】「やれ、ごちそうだったこと。そんではおら、これでむらへかえらしてもらうから。」
4. ばんばがそういうと、やまんばは、
5.「なに、そんなにいそぐことはねえ。ここにはてつだいもいねし、二十一にちほどてつだっていってくれや。」
6.といった。
7. 【3】しかたなくあきらめて、あかざばんばは、みずくんだり、やまんばのあしもんだり、きょう食わく れるか、あすこそ食わく れるかとおもいながら、はやいもので二十一にちたってしまった。
8. 【4】そこで、ばんばはおそるおそる、
9.「いえでもしんぱいしてるべから、かえりたいども。」
10.というと、
11.「なんとやっかいかけたな。いえのつごうもあるべから、かえってくれ。なんのれいもできんが、にしきを一ぴきくれてやる。【5】これは、なんぼつかっても、つぎのには、またもとどおりになっている、ふしぎなにしきだ。むらひとたちには、なんにもねえどもだれもかぜひとつひかねよに、まめでくらすよに、おれのほうでをつけてやるでえ。」
12.【6】やまんばは、そういうと、がらに、
13.「がら、がら、ばんばをおぶっていってやれ。」
14.といいつけた。
15.「なに、おら、あるいてかえるから。とんでもねえ、おぶさるなんて。」
16. 【7】ばんばは、あわててをふったが、がらはすっとんできて、ばんばを、ひょいとせなかへのせ、
17.「え、ふさいでれ。」
18.といったかとおもうと、みみのあたりにすうすうかぜがふいていく。∵【8】とんと、地面じめんにおろされて、をあけてみれば、そこはなんと、ばんばのいえのまえであった。
19.「がら、がら、よってやすんでいけ。」
20.といったときには、もう、がらのすがたはなかった。
21. 【9】ばんばがいえなかへはいろうとすると、
22. なんまんだあ なんまんだあ
23. なんまんだあ なんまんだあ
24.と、おきょうをあげるこえがする。それにまじって、おうえ、おうえ泣くな こえもして、どうやら、だれかが死んし だようだ。【0】ばんばはたまげて、
25.「だれか死んし だかやえ。」
26.とはいっていった。すると、
27.「ひえ、ゆうれいだ。たましいがかえってきたど。」
28.と、あつまっていたむらじゅうのもんが、えむいたり、ひっくりかえったり、でかさわぎになった。
29.「ゆうれいなものか。おらだ、あかざばんばがいまもどったど。」
30.「ほんとか、ほんとにばんばは、生きい ているだか。」
31. むらしゅうは、泣いな てよろこんだと。
32. そこで、ばんばは、
33.「さあさあ、やまんばのにしきをやるべ。」
34.と、むらじゅうにやまんばのにしきを、きってはわけ、きってはわけ、じぶんの手もとて  には、ほんのすこししかのこさなかったと。しかし、つぎのになってみると、ばんばのにのこったにしきは、もとどおりになっていたそうな。
35. むらひとたちは、みたこともないにしきを、ふくろにしてさげたり、はんてんにしたり、おおよろこびでいえたからにしたと。
36. そして、それからというもの、むらひとたちは、かぜもひかず、みんな、らくにくらしたということだ。
37. とっぴんぱらりのぷう
38. 
39.「日本にっぽんむかし話   ばなし1(松谷まつたにみよ子  こ講談社こうだんしゃあおとり文庫ぶんこ