長文集  12月3週  ★山んばのにしき3(感)(できるだけ自由な題名で)  00u-12-3
    毎日1ページ音読しましょう。漢字はふりがなをつけずに読めるようにしておきましょう。  2013/09/11 17:25:32
山んばのにしき3
 【1】そこで、いろりの火をどんどんもや
し、でっかいなべにくまのすまし汁こさえ、
もちいれて食った。まず、そのうまいこと、
ばんばは、腹いっぱいになったと。
【2】「やれ、ごちそうだったこと。そんで
はおら、これで村へかえらしてもらうから。

 ばんばがそういうと、山んばは、
「なに、そんなにいそぐことはねえ。ここに
はてつだいもいねし、二十一日ほどてつだっ
ていってくれや。」
といった。
 【3】しかたなくあきらめて、あかざばん
ばは、水くんだり、山んばの足もんだり、き
ょう食われるか、あすこそ食われるかとおも
いながら、はやいもので二十一日たってしま
った。
 【4】そこで、ばんばはおそるおそる、
「家でもしんぱいしてるべから、かえりたい
ども。」
というと、
「なんとやっかいかけたな。家のつごうもあ
るべから、かえってくれ。なんの礼もできん
が、にしきを一ぴきくれてやる。【5】これ
は、なんぼつかっても、つぎの日には、また
もとどおりになっている、ふしぎなにしきだ
。村の人たちには、なんにもねえどもだれも
かぜひとつひかねよに、まめでくらすよに、
おれのほうで気をつけてやるでえ。」
【6】山んばは、そういうと、がらに、
「がら、がら、ばんばをおぶっていってやれ
。」
といいつけた。
「なに、おら、あるいてかえるから。とんで
もねえ、おぶさるなんて。」
 【7】ばんばは、あわてて手をふったが、
がらはすっとんでき て、ばんばを、ひょい
とせなかへのせ、
「目え、ふさいでれ。」
といったかとおもうと、耳のあたりにすうす
う風がふいていく。∵【8】とんと、地面に
おろされて、目をあけてみれば、そこはなん
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と、ばんばの家のまえであった。
「がら、がら、よってやすんでいけ。」
といったときには、もう、がらのすがたはな
かった。
 【9】ばんばが家の中へはいろうとすると

 なんまんだあ なんまんだあ
 なんまんだあ なんまんだあ
と、お経(きょう)をあげる声がする。それ
にまじって、おうえ、おうえ泣く声もして、
どうやら、だれかが死んだようだ。【0】ば
んばはたまげて、
「だれか死んだかやえ。」
とはいっていった。すると、
「ひえ、ゆうれいだ。たましいがかえってき
たど。」
と、あつまっていた村じゅうのもんが、目え
むいたり、ひっくりかえったり、でかさわぎ
になった。
「ゆうれいなものか。おらだ、あかざばんば
がいまもどったど。」
「ほんとか、ほんとにばんばは、生きている
だか。」
 村の衆は、泣いてよろこんだと。
 そこで、ばんばは、
「さあさあ、山んばのにしきをやるべ。」
と、村じゅうに山んばのにしきを、きっては
わけ、きってはわけ、じぶんの手もとには、
ほんのすこししかのこさなかったと。しか 
し、つぎの日になってみると、ばんばの手に
のこったにしきは、もとどおりになっていた
そうな。
 村の人たちは、みたこともないにしきを、
ふくろにしてさげた り、はんてんにしたり
、おおよろこびで家の宝にしたと。
 そして、それからというもの、村の人たち
は、かぜもひかず、みんな、らくにくらした
ということだ。
 とっぴんぱらりのぷう
 
「日本のむかし話1(松谷みよ子)講談社青
い鳥文庫」