長文 12.2週
1.
夜の
道を
歩いていると、
何かが
黙ってついてきます。あなたが
止まると、それも
止まります。あなたが
歩きはじめると、またどこまでもついてきます。
2. もちろん、キツネや
お化けなどではありません。
夜空に
明るく輝くもの、それはお
月さまです。
3.
月がついてくるのは、
電車に
乗っていても
同じです。
電車の
窓から
見ると、
家や
電信柱は、どんどん
後ろへ
飛び去っていきます。
遠くに
見える山も、
近くの
家々ほどではありませんが、
少しずつ
後ろの
方へ
動いていくように
見えます。しかし、
空に
浮かぶ月は
山を
越え、
町を
越え、
電車の
中のあなたについてくるように
見えます。
4.
家、
電信柱、
山、
月。これらを
比べて
違うのは、
電車からの
距離です。つまり、
遠くのものほど、
動かないように
見えるのです。
5.
月は、わたしたちの
地球を三十
個ぐらい
並べたほど
先にある
空のかなたに
浮かんでいます。ですから、
地球の
上を
少々移動したくらいでは、
月の
位置は
変わらないように
見えるのです。
6. もちろん、
月よりもっと
遠くの
太陽でも、
同じことが
言えます。あなたがどんなに
動いても
太陽はついてきます。しかし、
太陽はまぶしすぎて、あまり
見上げることはありません。やはり、
夜、
明るい月が
一緒についてくるところにこそ、
不思議さがあるのでしょう。
7.
地球は
月の四
倍の
大きさです。したがって、もし、
月の
上を
歩きながら
地球を
見ると、
月よりも四
倍大きい、
青く美しい地球がついてきます。
月と
地球のツキあいは、
遠くても
深いものなのです。
8.「ねえ、どうしてついてくるの?」
9.「だって、ツキだから。」
10.「では、もし
太陽だったら?」
11.「やっぱり、
ついて行きタイヨウ。」
12.「
甘えん坊なんだね。」∵
13.
言葉の
森長文作成委員会(α)