00ウツギ の山 12 月 2 週 (5)
○地球の友達、月   池新  
 夜の道を歩いていると、何かが黙ってついてきます。あなたが止まると、それも止まります。あなたが歩きはじめると、またどこまでもついてきます。
 もちろん、キツネやお化けなどではありません。夜空に明るく輝くもの、それはお月さまです。
 月がついてくるのは、電車に乗っていても同じです。電車の窓から見ると、家や電信柱は、どんどん後ろへ飛び去っていきます。遠くに見える山も、近くの家々ほどではありませんが、少しずつ後ろの方へ動いていくように見えます。しかし、空に浮かぶ月は山を越え、町を越え、電車の中のあなたについてくるように見えます。
 家、電信柱、山、月。これらを比べて違うのは、電車からの距離です。つまり、遠くのものほど、動かないように見えるのです。
 月は、わたしたちの地球を三十個ぐらい並べたほど先にある空のかなたに浮かんでいます。ですから、地球の上を少々移動したくらいでは、月の位置は変わらないように見えるのです。
 もちろん、月よりもっと遠くの太陽でも、同じことが言えます。あなたがどんなに動いても太陽はついてきます。しかし、太陽はまぶしすぎて、あまり見上げることはありません。やはり、夜、明るい月が一緒についてくるところにこそ、不思議さがあるのでしょう。
 地球は月の四倍の大きさです。したがって、もし、月の上を歩きながら地球を見ると、月よりも四倍大きい、青く美しい地球がついてきます。月と地球のツキあいは、遠くても深いものなのです。

「ねえ、どうしてついてくるの?」
「だって、ツキだから。」
「では、もし太陽だったら?」
「やっぱり、ついて行きタイヨウ。」
「甘えん坊なんだね。」∵

 言葉の森長文(ちょうぶん)作成委員会(α)