長文集  11月4週  ○清作は一歳半の時に  00u-11-4
    毎日1ページ音読しましょう。漢字はふりがなをつけずに読めるようにしておきましょう。  2014/09/04 15:06:34
 清作は一歳半の時に、いろりに落ちて、左
手に大やけどを負いました。悲鳴を聞いて、
外で野良仕事をしていた母シカが驚いてかけ
つけた時には、清作の手は、やけどで開くこ
とができなくなっていました。一八七七年、
福島県の猪苗代湖のそばにある小さな村での
できごとです。
 当時の医療では、やけどでくっついた指を
もとの通りに戻す手術は不可能でした。何軒
も医者をたずね、遠い町の医者に、
「残念だが、この子の手はなおらん」 
と言われた時、シカは声をあげて泣きました
。 
 まだ幼い友達は、清作の手を見てからかい
ました。清作はものをつかむことも、自由に
動かすこともできない左手をくやしがって、
一人泣くこともありました。しかし、学校に
あがってからは、たいへん熱心に勉強し、だ
れにも負けない成績をおさめたのです。
 父親が大酒(おおざけ)飲みで働かないた
め、たいへん貧しかった清作のうちでは、ど
んなに優秀でも上の学校へ進学させる余裕が
ありませんでした。子供の清作にとっては、
母のシカしか頼る人がいなかったのです。し
かし、ちょうど清作のいる小学校に巡回に来
ていた小林先生が、清作の勉強に対する熱意
を知り、清作の進学を助けてくれたのです。
 また、先生はアメリカ帰りの高い技術を持
つ医師に紹介状を書いてくれました。大変お
金のかかる手術が必要でしたが、先生や学校
の友達がお金を出し合ってくれて、清作は手
術を受けることができました。ついに、指が
一本一本離れ、ものをにぎれるようになった
のです。 
 清作は、直してくれた医師や恩人の小林先
生らに感謝しながら、心に誓ったことがあり
ました。 
 「一生治らないと思っていた左手が、医学
の力で治った。私も将来医者になって、自分
のように苦しむ人々を助けたい。それが∵私
の恩返しだ」 
 この清作少年こそが、のちの野口英世です
。その献身的な研究ぶりは、まさに寝る間も
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惜しむほどだったそうです。留学先のアメリ
カでは、「日本人はいつ眠るのだ」と他国の
学者を驚かせるほどの猛勉強をし、その生涯
を医学の研究にささげたのです。

 言葉の森長文(ちょうぶん)作成委員会(
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