長文 10.1週
1. 【1】コンピュータは、あることを
覚えさせれば
一度で
間違いなく
記憶します。しかし、
生き物はそうではありません。
2. 【2】
記憶の
実験で、ネズミを、ブザーが
鳴ったときにレバーを
押すと
餌をもらえるような
仕組みの
箱に
入れておきます。【3】ネズミは、ブザーとレバーと
餌の
関係に
気がつくまで、
何十
回も
何百回も
試行錯誤を
繰り返します。そして、やがて、ブザーが
鳴ったときにレバーを
押せばよいのだということを
記憶します。【4】
正しいやり方を
覚えるまでに、
間違った
やり方を
何回も
繰り返して
失敗することが
必要なのです。
3.
生き物のこの
記憶の
仕方は、
実は生きるために
役立っています。【5】もし、ブザーとレバーの
関係を
記憶した
人間が、ブザーのかわりにサイレンが
鳴り、レバーのかわりにボタンが
置いてあるような
場所に
置かれたとすると、
人間はブザーとレバーの
関係から
類推して、サイレンとボタンの
関係にやがてすぐに
気がつくでしょう。【6】しかし、
機械は、いつまでたってもブザーとレバーの
関係から
新しい考えに
移ることができません。
4. 【7】
生き物は、
高等になるほど
曖昧な
記憶の
仕方ができるようになります。
私たちは、ある
人が
別の
服を
着て
現れても、それが
同じ人だということがわかります。【8】もし
記憶が、
機械のように
正確なものであったなら、
違う服を
着ている
人は
違う人だと
思ってしまうでしょう。【9】そのような
記憶では、
生き物は
変化の
激しい世界の
中で
生き続けることができなかったはずです。
数多くの
失敗を通して覚えるところに、
生き物の
記憶の
秘密があるのです。【0】
5.
言葉の
森長文作成委員会 Σ