【1】「カー! カー! カー !」 さむい、さむい、正月の朝( あさ)。 ひとりのおぼうさんが、から すの鳴きまねをしながら京都の 町を歩きまわっています。 【2】「なんや、へんなぼうさ んやなあ。」 「やや! このぼんさん、しゃ れこうべもってるえ!」 子どもたちがさわいでもへい っちゃら。 「カー! カー! なむあみだ ぶつう……。」 【3】おぼうさんは、一けん の大きな家(いえ)の前でとま ると、もっていたしゃれこうべ をふりふりおきょうをとなえだ したのです。 門があいて、主人が出てきま した。 「帰りや、このくそぼんず! めでたい正月にえんぎでもない わ!」 【4】すると、おぼうさんは こういったのです。 「まあ、よくごらん。しゃれこ うべは、目が出っぱなし。こん なにめでたいものもない。それ |
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に、人はみな、いつかこうなる のだ。」 【5】主人は、あわててなか にひっこむと、 「いや、負けましたわ、なんま んだあ。」 と、おぼうさんがかけているふ くろのなかにひとつかみのお米 (こめ)をいれてくれました。 【6】つぎの家でも、そのつ ぎの家でも、おぼうさんは、同 じようにしゃれこうべを見せ、 おきょうをあげて、お米(こめ )をもらいました。 おぼうさんのふくろは、お米 (こめ)でいっぱいになりまし た。【7】おぼうさんは、それ をもってまずしい人々のところ へいきました。そして、 「さあさあ、みんなでおかゆを たいて、いただこう。」 といったのです。∵ 【8】おぼうさんの名まえは 、「一休」。 「ねえ。どうして『一休』って いうの。」 「わしはな、一休みしながら生 きるのがすきなんじゃ。だから 『一休』さ。のんびり生きるの は、いいことだよ。」 といったそうです。 【9】それはいまから六百年 ほど昔。室町時代のことでした 。【0】 (岡田好恵) 「心をそだてるはじめての伝記 101人」(講談社) |