長文集  9月3週  ★一休(感)(できるだけ自由な題名で)  00i-09-3
    毎日1ページ音読しましょう。漢字はふりがなをつけずに読めるようにしておきましょう。  2015/06/13 10:49:50
【1】「カー! カー! カー
!」
 さむい、さむい、正月の朝(
あさ)。
 ひとりのおぼうさんが、から
すの鳴きまねをしながら京都の
町を歩きまわっています。
【2】「なんや、へんなぼうさ
んやなあ。」
「やや! このぼんさん、しゃ
れこうべもってるえ!」
 子どもたちがさわいでもへい
っちゃら。
「カー! カー! なむあみだ
ぶつう……。」
 【3】おぼうさんは、一けん
の大きな家(いえ)の前でとま
ると、もっていたしゃれこうべ
をふりふりおきょうをとなえだ
したのです。
 門があいて、主人が出てきま
した。
「帰りや、このくそぼんず! 
めでたい正月にえんぎでもない
わ!」
 【4】すると、おぼうさんは
こういったのです。
「まあ、よくごらん。しゃれこ
うべは、目が出っぱなし。こん
なにめでたいものもない。それ
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に、人はみな、いつかこうなる
のだ。」
 【5】主人は、あわててなか
にひっこむと、
「いや、負けましたわ、なんま
んだあ。」
と、おぼうさんがかけているふ
くろのなかにひとつかみのお米
(こめ)をいれてくれました。
 【6】つぎの家でも、そのつ
ぎの家でも、おぼうさんは、同
じようにしゃれこうべを見せ、
おきょうをあげて、お米(こめ
)をもらいました。
 おぼうさんのふくろは、お米
(こめ)でいっぱいになりまし
た。【7】おぼうさんは、それ
をもってまずしい人々のところ
へいきました。そして、
「さあさあ、みんなでおかゆを
たいて、いただこう。」
といったのです。∵
 【8】おぼうさんの名まえは
、「一休」。
「ねえ。どうして『一休』って
いうの。」
「わしはな、一休みしながら生
きるのがすきなんじゃ。だから
『一休』さ。のんびり生きるの
は、いいことだよ。」
といったそうです。
 【9】それはいまから六百年
ほど昔。室町時代のことでした
。【0】

(岡田好恵)
「心をそだてるはじめての伝記
101人」(講談社)