00エニシダ の山 2 月 3 週
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★じゆうなだいめい
○バレンタインデー、もうすぐ春が


○わらをたばねたたわしでは(感)
 【1】わらをたばねたたわしでは、なかなかたるのすみっこがうまくあらえません。ほそいぼうのさきでほじくっては、またわらでこすって、水をながすのです。手はまっかにはれあがって、かじかむし、なかなかうまくいきません。
 【2】(なにか、もうすこしいいものは、ないかな。)
 正左衛門(しょうざえもん)は、たるあらいをするたびに、かんがえました。あるとき、あらなわを、なん本もみじかくきりそろえて、たばねてみました。しかし、あまりうまくいきませんでした。【3】わらくずが、やけにこまかくたくさんでます。
 「たばねただけではだめだ。なにかでしっかりしばって、くずれないようにしなければ。」
 そして、かんがえたのは、垣根の竹をしばってある、シュロなわでした。【4】正左衛門(しょうざえもん)は、たばねたわらを、シュロなわで、ぐるぐるまきに、かたくしばりつけました。あらなわのたばは、くずれなくなりました。
 (そうだ、シュロは、こんなにつよいのだ。【5】なにも、たわしは、わらでなければならないことは、ないはずだ。シュロをたばねてみてはどうだろう。そうすれば、わらくずもつかないじゃないか。)
 正左衛門(しょうざえもん)は、さっそく、シュロばかりのたわしを、つくってみました。【6】二つ三つつくって、なかまの小僧さんにも、つかってもらいました。
 「こりゃ、なかなかいいたわしだ。わらくずがくっつかなくて、らくちんだよ。だが、どうもすこしこしがよわいな。たるのつぎめや、すみっこがうまくいかないや。」
 【7】ともだちがいいました。そこでこんどは、シュロを針金でしばって、シュロのさきをブラシのようにみじかくしました。この針金でしばるしばり方をくふうするには、ずいぶん時間がかかりました。【8】そして、さいごにしあげたのは、二本の針金のあいだに、みじかいシュロの毛をならべ、針金をぐるぐると、ねじったものでした。すると、まるでシュロの毛虫のようなものが、できました。
 「なんだいそれは。なにをつくってるんだい。」
 【9】なかまが見てわらいました。すると正左衛門(しょうざえもん)は、その毛虫の∵両はしをもって、二つにおりまげてつなぎました。
 「なーるほど。」
 みんな感心しました。
 【0】みごとにできました。わらくずはでないし、たるのすみずみまでブラシがきいて、たるあらいが、とてもらくになりました。正左衛門(しょうざえもん)は、そのかたちがカメににているので、かめのこだわしと名まえをつけて売りだしました。かめのこだわしは、日本だけでなく、アメリカ、中国やインドにもどんどん売れて、正左衛門(しょうざえもん)は大金持ちになりました。

 (今西祐行())
 「子どもに聞かせるえらい人の話」(実業之日本社)