1少子という言葉が出てくるのは、一九九二年の『平成四年版国民生活白書』(経済企画庁編)であり、「少子社会の到来、その影響と対応」というタイトルがつけられている。以降、高齢化と対になる形で、「子ども数や出生率の継続的な減少傾向」という意味で、少子化という言葉が使われるようになった。2なお、本書でも、少子化を「生まれてくる子ども数が継続的に減少する事態」という意味で使うことにする。
十五年経った現在の時点でこの白書を読み返してみると、現在言われている少子化の問題点の多くがすでに記述されていることに驚きを禁じ得ない。3当時はバブル経済の末期であり、日本社会の将来見通しに関しては、まだ楽観的なものが多かった。その中で、このまま少子化が進行すれば、経済成長の鈍化から現役世代の負担の増大まで、様々な社会問題が将来起こるであろうことを、きちんと指摘しているのだ。
4その上、女性労働力の活用や子どもをもつ女性が働きやすい環境を整えるなど、現在言われている少子化対策の多くがそこに記されている。
(中略)
現実には、事態はむしろ悪化していったのである。5バブル経済ははじけ、平成不況に加えて、経済のグローバル化、IT化が進展した。一九九〇年代後半には、雇用の規制緩和が進み、金融危機が起こり、そのしわよせが、団塊ジュニア以下の若年層、つまり、結婚、出産年齢層に押しつけられた。6経済の構造変動そのものは、政府の直接的責任ではないにしろ、大量のフリーターや派遣社員など非正規雇用が増え、正社員も収入が上がらず、結果的に若者の経済状況が悪化するのを放置した。
7子どもをもつ女性が働きやすい環境が整う前に、若者がまともな収入を稼いで生活できる仕事自体が失われてしまったのだ。
(中略)
私は本書の中で、日本社会の少子化の主因を、(1)「若年男性の収入の不安定化」と(2)「パラサイト・シングル現象」の合わ
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