1――高齢化社会には暗いイメージがつきまとっていますが。
まず、高齢化現象というのは日本社会が成し遂げた素晴らしい大成果だということを強調したい。2寿命が世界一、乳幼児死亡率が非常に低い、お年寄りがたくさんいて飢えもせずに生活できるということは文句なしに日本の経済、社会が成し遂げた大成果です。3海外で生活した人ならばみなさん同意されると思いますが、どんな外国にいっても手放しで自慢できるのが日本の平均寿命が世界で一番だということ。日本製の自動車が世界で一番売れているといったことを自慢しても、それがどうしたと反感を買いかねない。4しかし平均寿命が世界で一番長いというと無条件でそれはすごいと言ってもらえます。
詳しく言うと、人口の高齢化には平均寿命が延びたことと、出生率が低下したという二つの要因がありますが、この二つはともに経済成長の成果です。5現在でも、発展途上国では人口爆発が問題になっているように、子供をたくさんつくって労働力のあてにするという経済構造が戦前までの日本にもあった。乳児死亡率の高かった昔は子供をたくさん産んだという背景もあります。6しかし、日本も豊かになるにつれ、人々は子供の数を少なくし一人ひとりの教育におカネをかけ、質の高い子供を育てようとするようになった。そういう意味で、出生率の低下は経済成長の結果といえます。
7いうまでもなく、寿命が大きく延びたことは生活水準の向上を物語っています。一般的な健康水準が上がったのはもちろん、高度な医療に資源を注ぎ込むことができるようになった。これは、経済成長があったからにほかなりません。8このように高齢化そのものは日本が世界に無条件で誇れる成果だということを忘れてはいけない。
もっとも、高齢化が進むにつれ経済、社会面でいろいろな問題は起きるでしょう。9高齢化社会が無条件ではうまくいかないこともまた事実です。重要なのは、高齢化に合ったように社会・経済の仕組みを素早くつくりかえていくことができるかどうかです。
|