一番目の長文は暗唱用の長文で、二番目の長文は課題の長文です。
1普段は人気のない夜の公園に、明るいちょうちんがいくつもともっている。思い思いのゆかたを着た子供たちがお喋りをしながら夜店を回る。地域のお祭りには、どこも同じような懐かしい光景が広がる。2しかし、このようなお祭りのにぎやかさも、翌日になると再びもとの静かな住宅街の中に消えてしまう。孤独な老人、家庭にひきこもる子供たち、夜休むためだけに帰ってくる勤め人の親たちが、もっと日常的に地域に出て仲よく談笑できる社会は来るのだろうか。3今の日本では、子供が成長しても同じ地域に住むという定住化傾向が強まっている。しかし、地域社会の機能はまだ不十分だ。
その原因は第一に、これまでの私たちの生活基盤が地域や家族という地縁血縁共同体ではなく、学校や会社という機能利益共同体にあったためである。4明治の開国以来、日本は工業生産の労働力を農村から調達してきた。この百年間、多くの日本人は新しい職場を求めて住み慣れた地域を離れ全国の都市に広がっていった。新興住宅地と呼ばれる地域では、昔からそこに住んでいる住民はむしろ少数派で、全国各地から集まった新しい住民が地域の多数派を形成している。5ここで必要なのは、意識改革だ。過去の地縁に頼るのではなく、未来の地縁を自分たちの手で作っていくという意識が求められている。
地域社会が十分には機能していない第二の原因は、権限と予算の不足である。6かつて日本が欧米の植民地主義に対抗するために形成した中央集権国家は、現在では非効率が目立つようになっている。昔、日本がいくつもの藩に分かれていた時代には、その藩を象徴するような強力なリーダーが登場することがあった。武田信玄や加藤清正は、地域の振興に大きな業績を残した。
7話を広げて考えると、地球が今のように多様な生命体を宿す惑星になったのは、さまざまな環境にそれぞれの個性で適応する生物がいたからであって、決して最も進化した生物である人間が地球を支配するようになったからではない。
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